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今年は梅雨明けが早く、気温が高い日が続いています。食物繊維を積極的に摂取して腸内環境を整え、「腸活」で猛暑を乗り切りましょう。
食物繊維とは、人間の消化酵素では消化することができない、食品中の「難消化性成分の総体」を指します。
人間が食べたものは口から胃などを通り、消化酵素によって細かく分解され、消化された後、小腸で体内に吸収されます。しかし、食物繊維は小腸で吸収されず、そのまま大腸へ送られ、最終的に便とともに体外へ排出されます。
以前は、食物繊維は体内に吸収されないまま排出されてしまうだけのものなので、食品成分の中では不要な成分と考えられていました。しかし、近年、研究が進むと、食物繊維はおなかの中で人の健康にとって有効な働きをすることがわかってきました。
食物繊維は消化酵素によって細かくなりません。そのため、食物繊維を多く含むものを食べると、咀嚼に時間がかかるようになります。
また、食物繊維はおなかの中で「保水性」や「ゲル化能」といった働きをします。保水性は、おなかの中で水分を吸収して膨らむという効果、ゲル化能は、粘り気が強くなって他の食物成分を包み込んで糖が一気に吸収されることがなくなるという効果です。
これらの効果によって、カロリーが低い食事で満腹感が得られたり、糖がゆっくり吸収されるようになるので、血糖値の急激な上昇が抑えられるというわけです。
体の中のコレステロールは、一部は、脂肪酸を乳化する胆汁酸となって、小腸や大腸の中に排出されます。その一部は便とともに体外に排出されますが、残りは再び体内に吸収されます。このように、コレステロールは、1日に6~12回、腸と肝臓を循環しています。
食物繊維には「吸着能」という、他の物質を吸いつける働きがありますが、腸内では、コレステロールから合成される胆汁酸をくっつけることができます。こうして食物繊維にくっついた胆汁酸は、便となって体外に排出されるのです。
胆汁酸が体の外に出ていく量が多くなると、腸から体内へ再吸収される胆汁酸の量が減り、結果として、血中のコレステロールの上昇が抑制されることになります。
さらに、脂肪に関する働きはこれだけではありません。人の腸内には常に腸内細菌が存在し、人と共存しています。人が作る消化酵素では食物繊維は消化できませんが、この腸内細菌の酵素の働きによって、食物繊維が分解されることがわかってきました。つまり、食物繊維が腸内細菌の「エサ」になるのです。こうして生成するのが、酢酸、プロピオン酸、酪酸といった短鎖脂肪酸ですが、このうちのプロピオン酸が、コレステロールの合成を抑制する可能性があると考えられています。
人の腸内にはたくさんの種類の腸内細菌が多数存在します。腸内細菌は人に健康をもたらすものと健康に害を与えるものが混在していて、何らかの理由でそのバランスが崩れると、様々なトラブルが起こります。
ヨーグルトや乳酸菌飲料には健康をもたらす菌が含まれていいます。私たちがそれを食べることによって腸内環境を整える助けとなり、これらの微生物をプロバイオティクスといいます。
それに対し、腸内細菌にとって栄養となるものがプレバイオティクスで、ここ20年で急速に研究が進んでいます。食物繊維の一部は腸内細菌によって分解されて各種の脂肪酸になりますが、この脂肪酸こそが腸内細菌にとっての栄養、つまり「エサ」となり、腸内の環境を整えるもととなるのです。
〈参考:大塚製薬「食物繊維の歴史と定義」「食物繊維の分類と特性」〉
〈参考:日経電子版「腸内細菌が喜ぶ食事 カギは食物繊維」〉
〈参考:ヤクルト中央研究所「プレバイオティクス」〉
腸は第二の脳とも言われるほど、私たちにとって重要な器官です。最近は様々な研究が進み、腸内フローラについての報告も多く見られるようになりました。腸内の環境を整えるために有用な乳酸菌。そして、腸内細菌のエサとなる食物繊維。これらを積極的に摂取しておなかの中の環境を整えつつ、今年も暑い夏を乗り切りましょう。