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明治4年、北海道開拓使が欧米から札幌に、「イエロー・グローブ・ダンバース」という玉ねぎの種子を輸入したのが、日本の食用玉ねぎのはじまりといわれています。
玉ねぎは寒さに強いので北海道向きの野菜です。さらに札幌周辺は土地が肥沃なうえ、風が強くて乾燥しやすいので、札幌は玉ねぎの栽培に向いている環境でした。ここから北海道の玉ねぎ栽培が拡大し、急速に作付け量が増えました。
明治のはじめに札幌ではじまった玉ねぎですが、今では日本で収穫される玉ねぎの6割が北海道で生産されています。北海道はまさに玉ねぎ王国。毎年たくさんの玉ねぎが北海道から全国に送り出されています。
明治4年に伝わった玉ねぎの種は、当時、札幌農学校(現・北海道大学)で教鞭をとっていたブルックス博士によって持ち込まれたものでした。博士はこれに品種改良を重ねながら、学校周辺で栽培を指導していました。そして明治13年、札幌村(現在の札幌市東区)の農家の1haの畑で玉ねぎの栽培が成功。これが「札幌黄」の誕生です。
「札幌黄」は春蒔きの玉ねぎで、急速に栽培が広がり、戦前はロシアなどにも輸出するほど生産が拡大しました。
戦前までは輸出するほど栽培されていた札幌黄ですが、多様性がある遺伝子のため、形が不ぞろいになりがちです。現在流通している野菜は、形や色が重視されることが多く、形がそろわないことは“欠点”となってしまいます。また、札幌黄は品種的に病気に弱く、日持ちがしません。このため、全国の市場にはなかなか出回りません。
しかし、いつも食べている玉ねぎとはまったく違って、メニューの主役になれそうなほどに味が濃いのが特徴です。また、肉厚で実が柔らかく、加熱すると特に甘味が強くなるので、煮込み料理に最適です。この味には根強いファンが多く、札幌黄を積極的に使うレストランも増えています。
平成19年には札幌黄は、伝統的な食文化を守る「スローフード 協会国際本部(イタリア)」から、食の世界遺産といわれる「味の箱舟」に認定されました。この制度は、世界の各地方から“絶滅”する可能性がある希少な食材を認定して、地域に存在する伝統的で固有の在来品種を守ろうというもので、北海道では札幌黄のほかに、八列とうもろこしや日本短角牛などがあります。
平成24年、札幌黄を作る農家や加工販売する事業者、札幌黄を提供する飲食店、研究者や行政などによって、札幌黄を応援する組織「札幌黄ふぁんくらぶ」が立ち上がりました。
ふぁんくらぶでは毎年、札幌黄のオーナーを募集しています(募集期間は7月31日まで)。一口4000円でオーナーになることができ、収穫された札幌黄は10月下旬以降、1箱(10kg相当)を送ってもらうことができます。
また、オーナーになると、札幌黄の苗植えや収穫を体験できるほか、カレー作り収穫祭やカレーパーティーに参加することができます。詳しくは、「札幌黄ふぁんくらぶ」の公式ホームページをご覧ください。
〈参考:北海道新聞2018年5月9日号13面「オーナー制度 山海の幸人気」〉
〈参考:札幌市東区役所「東区特産のたまねぎ札幌黄」〉
〈参考:札幌黄ふぁんくらぶ〉
札幌黄は味が濃厚で甘みがあり、在来種だけあって野性味あふれる味がします。一口食べただけで、一般的な玉ねぎとはまったく違うことがわかるほど、味に差があります。煮込めば煮込むほど美味しくなる札幌黄。チャンスがあったら、ぜひ食べてみてください。