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じゅんさいは淡水の池や沼に自生するスイレン科の水草で、世界中に生えていますが、これを食べるのは日本や中国の限られた地域だけ。水の底から茎が伸び、夏になるとハスのように水面に葉を広げ、沼の水面が葉で覆われるようになります。
春になると水面の下の茎のところどころから枝が分かれ、二股になった部分に、ヌルヌルしたゼリー状のものに覆われた新芽が出てきます。このつぼみのような若い芽を一つひとつ手で摘み取って食べるのですが、生のじゅんさいを食べることができるのは、5月~8月上旬のわずかな期間。まさに、今が旬のはじまりです。
日本で食べられているじゅんさいの約80%が中国産です。残りの20%のうち、18%が秋田県の三種町産、2%がその他の地域で収穫されます。
三種町でのじゅんさいの摘み取りはすべて手作業です。小舟に乗って、水面の葉をかき分け、水中の茎についている新芽をさがし、一粒一粒ていねいに摘み取ります。
ひと昔前までは自生していたじゅんさいですが、現在では栽培専用の沼を開墾し、育てています。
ヌルヌルであればあるほど高級とされるじゅんさいですが、そもそも、なぜ新芽はヌメリに覆われているのでしょう。それは、新しい芽が外敵に食べられたり病原菌におかされたりしないように、ヌメリによって保護されているからなのです。
このヌメリが、独特のプリプリした食感と、ツルッとしたのどごしを生み、料亭では涼しげな夏の味覚として古くから食べられています。じゅんさいそのものには特徴的な味がなく淡泊ですが、独特の風味と食感が珍重されている、というわけです。
家でじゅんさい料理をする時、下ごしらえで茹でる際にはなるべく手早く済ませ、せっかくのヌメリがなくならないようにしましょう。
じゅんさいは主に北日本で食べられるため、西日本では見たことがない人も多いかもしれません。美味しいというよりは、ツルリとした独特の歯ごたえを楽しむ食材といっていいでしょう。5月になると、秋田県の三種町や北海道南西部にあるじゅんさい沼などでは収穫が始まります。摘みたてのじゅんさいを味わうために、一度足を運んでみてはいかがでしょうか。