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歌舞伎は常に新たな模索を続けて今日まで来ました。その中で変わらないものもあります。継承されてきたさまざまな型はもちろん、女方という役どころは江戸時代から変わらぬ歌舞伎の花と言えるでしょう。それぞれの時代に花と呼ばれる女方は存在し、時代が求める美を体現して来ました。江戸時代後期から明治にかけて描かれた浮世絵などにその美は残されています。今月、歌舞伎座の夜の部では、仁左衛門・玉三郎と、海老蔵・菊之助のそれぞれが日替わりで「仮名手本忠臣蔵 七段目」で出演中です。円熟の芸と花形の芸が日替わりで観られるなんて、歌舞伎ファンにとっては堪らないですね!
三島由紀夫は若き日の玉三郎を『…傾城もできる「ぼんじゃり」とした風情があり…中略…そして何よりも大切なのは、その古風な、気品のある美貌なのである。」と、絶賛しました。「ぼんじゃり」とは、気品と色香を兼ね備えた魅力を表す、女方にとっての褒め言葉です。傾城役は単に艶やかなだけでなく、気品が求められる役です。お姫様役よりも難しいと言われています。まだ10代だった玉三郎の初々しい美の中に、大きな役ができる萌芽を見つけたことがわかる言葉です。玉三郎も、若手女形たちに同じようなまなざしを向けて、舞台を共にしているのかもしれません。
両性具有という言葉があります。現代における女方の魅力は「男でもなく女でもなく、男でありながら女らしさを漂わせる存在」なのかもしれません。ご紹介した二月の上演は25日までと残り少ないですが、三月以降も歌舞伎座をはじめ、多くの劇場で女方がその花を咲かせます。ここ数年は若手女形(わかておやま)の成長も著しく、新たな「美」を発見できること請け合いです。「百聞は一見に如かず」あなたの目で、その魅力を確かめてみてください。
※上演情報は下記リンク参照