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モーグル(フリースタイルスキー)の発祥はアメリカ。当時のモーグル競技はとてもシンプルなものでした。多くの人が滑った後に、大小様々な形の溝のようなものができる、それがコブ、バンプスです。複雑な形状のコブをスピードを出して滑り、エアという名のジャンプをする。その華麗なスタイルで、多くの若者達に人気を集めました。
オリンピックの舞台に初登場したのは、公開種目として採用された1988年カルガリー五輪。その後、1992年アルベールビル五輪では正式種目に採用。そして、日本全国の人にモーグルが知られるきっかけとなったのが、1998年長野五輪。そう、里谷多英選手が金メダルを獲得した、日本で開催された2度目の冬季オリンピックです。
里谷選手は2002年ソルトレイク五輪でも銅メダルを獲得するなど、2010年バンクーバー五輪まで5大会連続出場を果たします。同じく五輪5大会出場といえば、長野五輪の際、日本IBMのコマーシャルで「モーグルって知ってます?」のフレーズとそのかわいらしいビジュアルで人気を集めた上村愛子選手。その後、ソチ五輪まで5大会連続入賞、さらには日本人初のワールドカップ年間総合優勝を果たすなど、輝かしい成績を収めました。
彼女たちをはじめとする日本人選手の活躍で、モーグルの人気は一気に高まり、コブを滑り華麗なエアを飛ぶことは、スキ―の花形へとなっていくのです。
平昌五輪では若手の男子選手も選出され、日本モーグル男子チームに勢いを感じます。世界選手権王者の堀島行真選手、昨年のW杯で4位入賞を果たした原 大智選手はともに20歳! そして、怪我からの完全復活を果たした世界トップクラスの実力を持つ遠藤 尚選手、同じく怪我から復活、世界選手権で2度の表彰台をゲットしている西 伸幸選手。
若手とベテランの融合でチーム全体を底上げし、プッシュし、必ずやメダルを獲得してくれることでしょう。ここでは、それぞれの選手をご紹介します。
【堀島行真(Ikuma Horishima】
昨年の世界選手権ではモーグル、デュアルモーグルの2種目で完全優勝。ルーキーオブザイヤーにも選出されるなど、日本選手団の中でも、もっともメダル獲得が期待されている選手のひとり。オリンピック直前のカナダで開催されたW杯でも優勝するなど、勢いにも乗っています。
堀島選手の中学校時代、私がモーグル・ハーフパイプを教えたこともありましたが、ハーフパイプでいきなり縦回転の技を成功させるなど、とにかく身体能力が高い選手でした。「僕はモーグルで金メダルを獲るんだ!」。まだ、幼さが残る中学3年生でしたが、キラキラした瞳でメダルを狙うことを自信をもって語ってくれたこと、今でも覚えています。
【遠藤 尚(Sho ENDO)】
3季前、一度はその時点でのワールドカップ総合トップの証、イエロービブを着用するも、その直後に腰椎圧迫骨折の大怪我を負い、戦線離脱。今シーズンは年初の大会で2季ぶり、自身最高に並ぶ2位に。福島県猪苗代の出身で、小学校の頃から学校が終わるとウォータージャンプへ自転車で通っていた彼も、いまや3度目の五輪。最後の五輪と公言する彼の活躍にご期待ください!
【西 伸幸(Nobuyuki Nishi)】
2009年、2011年と2度、世界選手権の表彰台に。五輪ではバンクーバー、ソチで決勝進出など、日本選手の中ではもっとも経験値が高く、チームでも兄貴分的存在。強みはスピードと強靱なメンタル面。最後のオリンピックをどのように滑るかが楽しみな選手です。
【原 大智(Daichi Hara)】
3歳から両親の影響でスキーを始め、小学6年の時に本格的にモーグル競技を開始。そして、16歳の時にはモーグル強豪国のカナダに留学という異色の選手。昨年のW杯で見事4位入賞を果たしたアップカマーで、初出場の夢舞台で活躍が期待されます。
ここに紹介した選手は、誰もがメダル獲得の可能性を持っています。とはいえ、彼らにはその緊張感に押しつぶされることなく、自分の滑りをしてほしいものです。「がんばる」という気持ちだけではなく、オリンピックを「どのように楽しむ」かも重要。そうすれば、オリンピックに標準を合わせてきた世界の競合たちにもひるむことなく、勝る滑りができるはず。新生日本チームの活躍を期待しています。
◎畑中みゆき プロフィール
1975年12月18日生まれ。宮城県塩竃市出身。競技歴は19歳から。4年後にはナショナルチーム入りを果たし、6年後にはソルトレイク五輪に出場(2006年トリノ五輪出場)。現在は「畑中みゆきスキースクール」を主宰し、夏期は山梨県のカムイみさかで、冬季は長野県や群馬県のスキー場で、子供から大人まで、基礎スキーからモーグルまで幅広く教えている。