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行者にんにくは涼しい気候を好むので、近畿から北海道までに広く自生しますが、東北から南側では標高の高い山にしか分布しません。一方、気温が低い北海道では高い山でなくても平地で普通に見られ、春になると山菜取りで手軽に収穫できます。
昔、山で行者が食べていたにんにく、ということで、この名がついたと言われています。ユリ科ネギ属の多年草で、玉ネギやニラ、ニンニクの仲間であることからもわかるように、ネギ類独特の強烈な臭いがしますが、それゆえに、体が元気になる成分を豊富に含んでいます。
北海道では4月中旬ころから出回り、5月中旬に最盛期を向かえ、6月のはじめまで出回ります。
北海道では、雪が解ける頃の短い期間にだけ生育し、水がきれいな湿地帯などに群生します。葉は緑色、根元は白く、葉と根元の間が赤い色をしているのが特徴。成長がとても遅く、種を蒔いてから2年後に、ようやく芽を出します。3年めになって1枚の葉がヒョロヒョロと伸び、食べられるようになるまでに最低5年、上質のものだと8年もかかります。
ここ数年は、行者にんにくが健康にいいと評判になり、ちょっとしたブームになっています。そのせいか、翌年以降のことを考えずに、根こそぎ採っていく人が増え、現在では天然ものの数が激減しているそうです。行者にんにくは成長に5年以上もかかるので、成長を待たずに根こそぎ採られてしまうと、数が減ってしまうのも当然です。
そこで、最近では行者にんにく栽培の技術が進歩し、ハウスものの流通が拡大しています。山菜なのにハウス栽培? と、ちょっと違和感を感じますが、日本全国、需要が多いため、東北や長野県で多く栽培され、1月になるとハウスものの収穫がはじまります。
北海道では行者にんにくをさっと熱湯でくぐらせてから、醤油に漬けて保存するのが一般的です。上手に保存すると1年ほど持ちます。醤油漬けの葉をみじん切りにしてチャーハンにすると、このうえもなく美味。また、香りがついた醤油はニンニク醤油のように、いろいろな料理に応用できます。
行者にんにくの強い臭いは、ビタミンB1と結びつくと臭いが抑えられ、疲労回復成分を作りだすといわれています。ビタミンB1といえば豚肉。ゆえに、行者にんにくと豚肉の組み合わせは最強といえるでしょう。
また、北海道では春になると、ジンギスカンに行者にんにくを加えるのが一般的です。味的にも、ラム肉と行者にんにくのコンビは“なまら旨い”組み合わせなので、肉以外の具材を行者にんにくオンリーにする人も多いと聞きます。なんとも北海道らしい春のメニューです。
〈参考:旬の食材百科「行者にんにく」〉
〈参考:北海道ファンマガジン「行者大蒜」〉
早いもので3月ももう終わりです。雪解けがはじまり、北海道でもようやく春の兆しが見られてきました。雪が解けると、そろそろ行者にんにくが出回る頃です。北海道では、あの強烈な臭いの山菜を口にした時、体が冬から春モードに切り替わり、ようやく春を感じるようになります。最近は栽培ものも出回っているので、ぜひ味わってみてください。