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地震・雷・火事・親父と言われるように、雷は怖いものの代名詞といえます。普段の生活でも遠慮したいところですが、夏山で遭遇する雷はもっと厄介なものとなります。
雷に遭遇しないためには、天気予報を確認するとともに、自分がこれから向かう山の周辺のレーダ画像を見る習慣をつけましょう。午前中は天気が良くても、昼過ぎから赤や黄色で表される強雨域が予想されているなら、注意しなければなりません。特に、計画しているルートが稜線であれば勇気をもって計画を修正することも考えましょう。計画を続行するのであれば、山の大原則「早く出発して、昼ごろには安全地帯に到着する」をいつも以上に心がけてください。
そして予期せず雷に遭遇したときの対応です。様々な「山の天気」に関する本で雷への対応が記載されていますが、昔はよく言われたいたことが、現在では間違った認識であったりします。このため、最新の研究成果に基づいた情報を学んでおくことが重要です。ここでは、いざという時に覚えていて欲しいポイントを3つ紹介します。
① 身に付けている金属を外す間に、少しでも低い場所へ避難する。
② 傘をさす、樹木に近づく(4m以内)ことは、極めて危険である。
③ 慌てず、落ち着いて行動すること。
また、やり過ごすときには図のような姿勢が基本となります。このとき地面に伏せたり、手を突いたりしないことが大切です。雷が落ちた地面の近くには誘導電流が流れるため、そこから身体に感電させないようにしなければなりません。
夏山で雷とともに気をつけたいのが急激な増水による事故です。毎年のように、増水した沢を渡ろうとして流されたという悲しいニュースを耳にします。夏山の登山道では沢を細い木道や石伝いに横切る場所が良く出てきます。普段は簡単に渡れるような場所での遭難がなぜおきやすいのでしょうか?考えられる原因をいくつか示します。
① 自分のいる場所が晴れているからという油断
沢を横切るような場所は見渡しの良い場所とは限りません。山腹では、頭上の空しか確認できないところも数多くあります。夏山では標高が高いところでの局地的な豪雨が原因で、下流の沢が急激に増水することがあります。沢を横切る際には常に上流の状況に注意しておくことが大切です。
② 水流に対する油断
膝がつかる程度であれば大丈夫と勘違いする人がいますが、山の沢は流れの無いプールとは全く状況が異なります。足をすくおうとする力は「深さ×流速×流速」で求まります。つまり、深さと流速の二乗に比例するわけです。また、沢の中の岩は不安定で滑りやすいものも数多くあります。そして冷たい水温は心の焦りにつながり、バランスを崩す原因にもなります。ちなみに、流速1m/sでも深さが50cmを超えると歩行が困難といわれています。足元が不安定な山地渓流であれば、さらに厳しい条件であることが推測できるでしょう。
③ 引き返す勇気・待つ余裕のなさ
川幅50mの川を横断する勇気がある登山者はほとんどいないでしょう。けれども夏山で通過する渓流は多くの場合、数mの距離。「ここさえ通過すればそこに道が続いている」と誰しもが思うはずです。「ここさえ渡れば山頂まであと少しだから引き返したくない。」とか、「ここを渡ればもうすぐ下山口。予定通りのバスに乗れそうだ。」という気持ちが、無謀な行動につながり、危険にさらされることとなります。台風などのように長時間大雨が続いている状況は別として、夏の夕立などによる沢の増水は比較的短時間で引くこともあります。ほんのわずかな距離に命をかけるよりも「近くの山小屋まで戻る」、「コースを変更する」、「しばらく待つ」といった余裕のある行動を心がけてください。
※この記事は、平成29年6月に成山堂書店から発刊された「60歳からの夏山の天気」(一般財団法人日本気象協会)をtenki.jpサプリ用に編集して掲載しております。