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実はこれは漢字の音と意味を利用した漢字遊びが縁起物になっているもの。
中国語で「福」を逆さまにすると、「倒福 dao fu」となります。この「倒dao」と同じ音を持っているのが、「到dao」。つまり、「やってくる」を意味しています。
「倒福」は「到福」と同じ発音であることから、逆さまになった「福」は「福がやってくる」と同じ意味になる、というしゃれになっているのです。中国の人はこんな遊びが大好きです。
小腹が空いて、中華料理店に立ち寄った際に、逆さまの「福」を見かけたら、「福よ、やってこい」と念じてみるとよいかもしれませんね。
このほかにも、中華料理屋で「寿」「喜」などの文字を文様化したものもよく見かけます。ラーメンどんぶりの縁にも「喜」が組み合わされた「双喜紋」が描かれています。
さらに、紙切りで表現した飾りものや家具などの装飾になっていることも多いですね。これは文字の意味そのものですから、ストレートでわかりやすいのですが、そうした文様と組み合わされてコウモリが描かれているのはちょっと不思議ですね。
コウモリというと、日本人にとっては、なにか不気味な生き物、というイメージがあるのに、なぜ縁起物になっているんでしょう? 実はこれも漢字に関係があります。
コウモリを漢字で書くと「蝙蝠」。この発音は「bian fu」。これと同じ発音なのが、「遍福」です。
つまりコウモリは「福が遍(あまね)く広くいきわたる」という言葉と同じ音を持っているのです。このようにしてコウモリのイラストが吉祥の文様になるというわけです。
「招財進寶(宝)」(どんどん儲かる)をひとつの文字のように組み合わせて文様にしている例などもあります。
画像を見るとわかる通り、「招」のへんが「財」のつくりになっていて、漢字の一部を共有するように図案化されています。これを「合字」といいますが、「進」の「しんにゅう」がまるで波の間を進む船のようで、全体が宝船のように描かれています。
こんなふうに漢字はそのかたちと意味と音と重ねるようにして、遊ぶことができるのです。それが幸福を願う記号になっているわけですね。
──言葉には、その言葉を口にすると、そのことが現実のものとなる、という「言霊(ことだま)」という考えがありますが、漢字には、その意味が現実のものとなる「文字霊」への期待があるのかもしれません。