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すっかり季節の風物詩となった流鏑馬神事ですが、その始まりは『吾妻鏡』によると、文治3年(1187年)8月15日(旧暦)に放生会と流鏑馬儀式を行った記録が残っています。そのシンプルな儀式が現在では3日間に渡る、一年の中で最も重要な儀式となっています。14日の早朝、由比ヶ浜で浜降り式(はまおりしき)で禊ぎの後、宵宮祭へとそなえます。15日は例大祭と神幸祭が執り行われ、16日に流鏑馬神事、放生会へと繋がります。流鏑馬は、最初の三騎が神事として執行の後、平騎射十数番が多くの観光客が見守る中で、東から西へ約254メートルのまっすぐな道を駆けぬけて、3つの的を横目に矢を放ちます。あまりの人出により観る場所によっては、射手の姿が見えないこともありますが、馬の駆ける音と弓矢を放つシュッという音が人波の奥から聞こえ、臨場感あふれる神事です。射手は、弓馬術礼法小笠原教場宗家一門の奉仕により受け継がれています。
勇壮で臨場感あふれる流鏑馬のあとは、鈴虫の放生祭です。「例大祭で神前にお供えした鈴虫を神域の自然の中に放す行事…」(鶴岡八幡宮公式サイトより)
例大祭の3日間、神前で声を奏でていた鈴虫たち、静御前の舞で知られる舞殿にて放生の儀式が執り行われ、雅楽の調べと巫女による神楽舞を奉納した後、神域である境内の林に鈴虫を放ち、放生祭は終わります。元来、源頼朝が流鏑馬と放生会(祭)だけで始めた儀式でした。それが、ここまで大きな祭へと変わったこともさることながら、当初の二つの儀式はしっかり残っていることに意味があるのでしょう。武士だからこそ命の尊さを肌で感じ、その時代にできることを行い、いつしか時代を超え、形を変えても想いは残っている。頼朝の意思が800年の時を超えて繋がっている証がこの放生祭なのでは…そんな風に思う秋の日です。
※放生会は、京都の岩清水八幡や博多の筥崎宮で、鎌倉より早く始まり今も大きな祭として執り行われています。
鎌倉には「花の寺」と呼ばれる寺がいくつかあります。秋の花を一つのお寺で…となると、四季を問わず季節の花が咲いている、瑞泉寺と長谷寺の二つの寺がおすすめです。それぞれ鶴岡八幡宮を挟んで山側に瑞泉寺、海側に長谷寺となります。コースとしては海と山のどちらが好きか、で選んでいただくとその道すがらにも季節を感じる場所が見つけられます。海が好きな方は江ノ電を楽しみ向かうもよし。鎌倉駅の御成通りから長谷へ向えば、鎌倉文学館に咲く色鮮やかな薔薇と出会えるでしょう。長谷寺には海を一望できる展望台もあります。山が好きな方は、八幡宮から瑞泉寺へ向かう途中、ほんの数分の場所に別名「萩寺」と呼ばれる宝戒寺で乱れ咲く紅白の萩を楽しんではいかがでしょう。瑞泉寺には、高浜虚子や久保田万太郎の句碑もあり、文学に縁のある寺です。いつも何かしらの花が咲いていることも俳人に好まれた理由かもしれません。
例大祭のフィナーレになった流鏑馬と放生祭、そして季節の花の見どころについてお話ししてきました。この週末、天気が心配ですが、どうぞお好みの秋を探して楽しんでくださいね。
参考・出典、引用
・鎌倉市 かまくら観光
・鶴岡八幡宮ホームページ