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中国大陸は簡体字(簡化字と呼ばれます)を、台湾は旧字(繁体字と呼ばれます)を使っている、というのが大方の理解でしょう。それはそれで正しいのですが、その使い分けの背景には複雑な経緯があります。
漢字はたった26文字のアルファベットと違って、一つ一つの語に対応した何千という漢字をそれぞれ覚えなければなりません。画数も多いですね。
これは初等教育にとって効率的でない、と考える立場があります。中国20世紀初頭まで存在した「清王朝」の末期、アメリカをはじめとする近代的な西欧文明に対して、中国が後れを取ってしまったのは、学ぶのに手間と時間がかかる「漢字」に原因があると中国の知識人は考えました。
そこで、漢字の「改良」が戦前から研究され始めたのですが、戦後になって毛沢東の指示のもと「漢字簡化法案」が公布されたのが、現在の「簡体字」の元になっています(1956年~)。点画を簡略化したり、一部分で代表させたりしています。また発音が同じ文字で代用したり、古代からの草書などの字体を参考にしているものもあります。
分かりにくいものがあることも事実です。たとえば終⇔终 などはわかりやすいでしょうが、書⇔书などはかなり分かりにくいですね。
中国大陸の簡体字、台湾の繁体字の使い分けは、当時の政治情勢が影響しています。1950~1960年代に台湾の国民党と中国の共産党は対立していましたから、共産党との対抗上、台湾(中華民国)は中国大陸の「簡体字」を採用するわけにはいかなかったのです。台湾には「自分たちこそが中国の伝統的な漢字を使っている」という意識があるようです。
同じ民族なのに、使う文字が異なっているという事態の背景には、おおまかに言って、こうした理由があります。
主に東アジアの漢字を使う地域を「漢字文化圏」と呼ぶことがあります。
ただ、韓国は独自の文字「ハングル」を作りましたし、ベトナムももとは漢字を使っていましたが、現在はアルファベットです。また日本のように「かな」を創り出した日本のような例もあるように、漢字文化圏と言ってもその内実はなかなか複雑です。
とくに観光地などの「漢字」が、どんなふうに使われているかをくわしく観察すると世界が見えてくるかもしれません。