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さくらんぼって、まんまるではなくて真ん中に縦の筋が入っていますよね…これは「縫合線(ほうごうせん)」といって、葉と葉が結合した跡。なんとさくらんぼの実は、葉っぱがクルンと丸まってできていたのですね! 若い実を染色すると、葉と同じようにちゃんと気孔があらわれるそうです。
そしてサクランボの葉っぱの軸の付け根には、よく見るとイボのような突起がふたつ!? じつはここから甘い蜜を出していて、アリなどをおびきよせるのにも役立っているようです。この「蜜腺(みつせん)」はソメイヨシノなどのサクラにもあるので、見つけたら試しになめてみてくださいね。
西欧では、さくらんぼは古代の遺跡からタネが出土しているほど古くから食べられていました。紀元前300年頃のギリシャではすでに栽培されていたのだとか。黒海周辺から、人や鳥の移動にともなってタネが運ばれ、ヨーロッパ各地に広まったと考えられています。
フレッシュな日本のさくらんぼが食べられるのは、初夏だけ! 4月から5月にかけて花が咲き、たった50日くらいで収穫でき、季節を駆け抜けるように去ってゆきます。
ふたつ繋がっている仲良しの実は、同じ花芽から出たきょうだい。さくらんぼは花が咲き終わるとき、ちっちゃな実が5~6個ついていますが、受精していない実は途中でしぼんで落ちてしまい、たいてい1~3個の実になるようです。また、ひとつの軸にさくらんぼが2個ついている双子果も。これは、花の雌しべが「まちがって」2本できてしまったもの、なのだそうです。
リンゴなどと一緒に、明治時代のはじめに日本に入ってきたというさくらんぼ。でもなぜか、さくらんぼだけが特別に高級くだものの扱いになっているような? それはいったいどうしてなのでしょうか。
雨の多い日本では、さくらんぼを育てるのは至難の技だったようです。春先の霜にあたると、さくらんぼは花が咲いても実がならないことがあり、雨に濡れれば、次の日には実がナイフで切れ目を入れたように割れてしまいます。美味しくてかわいいけれど、あまりにデリケート…。
いま、たいていのさくらんぼの木は、大きなビニールテントの下で大切に保護されています(なので、さくらんぼ狩りは雨でも楽しめます!)。風雨や害虫や病気からガードしてもらい、花の咲く頃には霜で冷えないように木のまわりで火を焚いたりして温めてもらい、さらには受粉も。さくらんぼは、他の品種の花粉がつかないと実がならないという特性があるのです。そこで農家の人は複数の品種を育て、ミツバチを借りてきたりマメコバチを飼ったりして受粉をサポート。でも寒くてハチが飛ばないような場合は、人が毛バタキで花の間を撫でてまわり手助けします。こうして手間ひまかけて育てられた箱入り娘は、化粧箱に軸が全く見えないように美しく並べられてお嫁入り(出荷)となります。ちなみに、現在さくらんぼ全体の約4分の3を占める人気の品種は「佐藤錦」です。
子ども時代のモノクロの記憶に、ただ一点染まっている赤いチェリー。黒澤映画のなかで椿の花が、そこだけ赤く見えたように。それはいつも、ハレの時間でした。軸まで着色され、食べることに軽い背徳感すらおぼえる、圧倒的な赤。
そのチェリーを使って、昭和の一時期にデートや飲み会で流行した「軸結び」をご存じでしょうか。軸ごと口に入れて、舌を使って軸を結ぶ。これができる人はキスが上手だという噂があり、できない者にとってはちょっと羨ましい特技でした。成功するコツはあったのでしょうか?
複数のさくらんぼから選べるなら、両端の「ひっかかり」部分がなるべく大きくて、細く長い軸ほど簡単なのだそうです。たいていの場合、軸の三分の一くらいの位置で折り曲げて輪っかをつくり、前歯の裏側にあてて固定させながら、「結ぶ」というよりは長い方を舌で「押し込む」イメージで通している人が多いようです。舌を盛んに動かすので、フェイスラインをスッキリさせるのにも効果的! 愉快な表情をさらす危険も伴いますが、それがたまらなくセクシーという声も。
さくらんぼの技といえば、「タネ飛ばし」もありますね。遠くに飛ばすコツは「口の中で果肉をよく取り除き、舌を丸めて一気にタネを飛ばすこと」なのだとか。さくらんぼ生産量日本一を誇る山形県では、さくらんぼのタネ飛ばし大会が毎年行われています。なんと20メートル以上飛ばす人も!
せっかくですから、旬のさくらんぼでいろいろこっそり練習して、イザというとき披露してみてはいかがでしょう(タネ飛ばしは、練習場所を選びそうですが)。この時季しか味わえないさくらんぼの甘酸っぱさ、今年もたっぷり楽しんでくださいね。
<参考文献・サイト>
『さくらんぼの絵本』西村幸一・野口協一(農文協)
『山形県ホームページ』