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驚くべきことに、ボクシングの歴史は紀元前までさかのぼります。諸説ありますが、紀元前4000年~3000年の間には、古代エジプトでボクシングが行われていたともいわれています。さらに、紀元前600年頃の古代オリンピックでもボクシングは競技として採用されていました。しかし、あまりに残虐なルールのため、禁止となってしまったようなのです。
古代から時を経て、16世紀前半にボクシングは再び競技として行われるようになりました。近代ボクシングの原点はイギリス。近代ボクシングの始祖といわれているジェームズ・フィッグ氏がジムの設立や、選手育成などボクシングの基礎をつくりました。
しかし、当初はルールが明確ではなく、何でもありの危険な試合が横行していました。ボクシングが復活してから、グローブの着用や投げ技の禁止など、今のようなルールで試合が行われるようになるまで、200年以上もかかったといいます。さまざまな困難があったものの、それだけ根強い人気のスポーツだったということがわかります。
日本にも、フィッグ氏のようなボクシングの始祖といわれる人物がいました。それは、日本で初めてプロボクサーとなった渡辺勇次郎氏です。渡辺氏の経歴といったら、なんともアクティブなもの。1906年に、旧制真岡中を中退した氏は貿易商を志して渡米。この時代に渡米するだけでも大変なことですが、さらに驚くのはこの後の出来事でした。
渡米後、アメリカ人とケンカになった渡辺氏は、そのケンカに負けてしまったのです。詳しくはわかりませんが「KOされてしまった」ということでしょうか。このことから、本格的にボクシングを始めようと決意したのです。しかし、日本人がアメリカでボクシングをやることは並大抵のことではありませんでした。差別を受ける中、たくさんのジムをかけずり回って、ようやく練習をさせてくれるジムを見つけたのです。さらに驚くべきは、その後プロボクサーとしてタイトルを獲得するまでに成長してしまうのです。
渡辺氏は1921年に帰国後、日本初の本格的ジム「日本拳闘倶楽部」を設立。その後、日本にも少しずつボクシング人気が広がっていったのです。
そして、日本のボクシングは新たな時代を迎えることとなります。
1952年5月19日、白井義男選手が日本人として初めてボクシングの世界チャンピオンになったのです。当時のフライ級王者はダド・マリノというアメリカ人選手。ボクシングの本場アメリカの選手に日本人選手が勝つことは、たいへんな快挙として、日本のボクシング界に大きな功績を残しました。
この白井選手がチャンピオンになった記念すべき日が「ボクシングの日」となり、今でも5月19日にはボクシング関係者が集まり、ファン感謝イベントなどが開催されています。
―― 日本にボクシングが広まったのは偉大な挑戦者がいたから……。5月19日は、そうしたパイオニアへの敬意を表する記念日ともいえるでしょう。