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ひと言でいうならば、天然の植物を染料として糸や布を染めることを「草木染め」といいます。
植物であれば花・葉・茎・枝・根・樹皮に関わらず染料になりえます。四季ごとに色とりどりの植物を目にすることができる日本では、染料は豊富と言ってよく、さまざまな色が作り出せるのも染色文化が発達したゆえんでしょう。
今の時期なら、山茶花(サザンカ)の花がピンク、琵琶(ビワ)の葉が赤の染料となります。また、玉ねぎの皮、苺のヘタや紅茶、コーヒーなどでもシックな色合いの染め物が出来上がります。
春には蒲公英(タンポポ)の花の黄色、桜の花のピンク、蓬(ヨモギ)の緑などがおススメですし、夏は向日葵(ヒマワリ)の花の黄色や茄子(ナス)の皮の青紫、朝顔の花のピンクもよいですね。秋にはセイタカアワダチソウの花の黄色、臭木(クサギ)の実の青、葡萄(ブドウ)の実の皮で紫色に美しく染められますよ。
草木染めのために準備する道具も身近なものばかり。
ステンレス鍋(ホーロー鍋でもOK)、ザル、菜箸、ボール、はかり、計量カップ、ゴム手袋があればよいので、思い立ったらすぐに始められるのも草木染めの魅力です。
初めての方はまず布を染めてみましょう。
≪下準備≫
天然素材の布を煮洗いして汚れや薬品を落としておきます。さらに綿や麻など植物性繊維のものであれば、豆乳に浸して繊維にたんぱくをしっかり付着させてからギュッと絞ります。※動物性繊維の素材(ウール、絹など)はそのままでも染まります。
媒染剤も準備します。媒染剤とは、繊維と色素を結びつける働きをする金属系物質のことで、漬物の発色をよくするために家庭でも使われる「焼きみょうばん」ならスーパーで手に入ります。焼みょうばん5gあたり、ぬるま湯1リットルを合わせ、布がしっかり浸るくらいの媒染液を作ります。
≪染料と染液を準備≫
染料の材料を用意します。摘んだばかりの植物なら、染めたい布と同量~3倍程度の重さが必要です。材料の量が多ければ多いほど濃い色に、また少なければ薄い色に染め上がります。大きな材料はあらかじめ細かく刻んでおきましょう。
ステンレス鍋(ホーロー鍋でもOK)に、染めたい布の20倍の重さの水と染料を入れ、火にかけます。沸騰しないようじっくり煮出していきます。
十分に色が出たら、ザルで漉して染液を作ります。
≪染め≫
染液をステンレス鍋に移し下処理した布を入れて火にかけます。30分程度煮ながら、ムラなく染まるよう菜箸で布を動かします。
布に十分色がついたことを確認したら、取り出して媒染液に30分程度つけます。その間、ゴム手袋をして布をしっかり揉むと、より色が安定します。
媒染が終わったら水洗いをし、陰干しで乾かします。より濃い色に染めたい場合は、水洗い後再び染液で染め、媒染液につけるという工程を繰り返します。最後に水洗いし、陰干ししましょう。
染液につける前に、布を折りたたんで紐で縛ったり、ビーズをくるんで輪ゴムで縛ったりすると、染め上がりに模様ができます。布の部分ごとに染液につける回数を変えてグラデーションを作る、わざと色ムラをつくるなども、手づくりならではの味が出ると思います。
染め上がった布は、手ぬぐいやストール、バンダナ、風呂敷、巾着袋、エコバッグなどにしてはいかがでしょう?
大きな布を染めてテーブルクロスやワンピース、チュニックも素敵ですね。
草木染めは、同じ植物でも含まれる色素が均一ではないため、まったく同じ色を作りだすことはできません。さらに染液の濃度や染めの回数、媒染の仕方によって違う染め上がりとなるので、最終的な仕上がりは「できてからのお楽しみ」なのです。
色落ちや変色しやすいのも特徴ですが、それも含めて魅力です。自分で染めたとなれば尚のこと、アイテムへの愛着が増すのではないでしょうか?
―― ぜひ、季節の植物を使った「草木染め」で自分だけの色を纏って、四季の移ろいを感じてみてくださいね!