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“雪育”とは、ひと言でいうと「スノーリゾートにおける活動が子供の様々な成長を促進する」という考え方。児童心理を専門領域とする、東京成徳大学応用心理学部 石崎一記教授によれば、「スノーリゾートでの非日常体験が子供に及ぼす影響はとても大きい」そうです。
石崎教授いわく。たとえば、スキー・スノーボードの滑走シーンを思い浮かべてください。そこには、「止まる」「曲がる」「スピードをあげる」といったように、常に自分の意志によって、次の行動を決める必要があり、また、「止まれない」「曲がれない」「スピードを抑えられない」といった、できないことに対する試行錯誤も連続します。
自分で考え、工夫して乗り越えようとする「自己決定」と、課題をクリアしたときの、自分はできるという「有能感」。これらは、子供の「自律性の発達」に高い影響力を及ぼします。スキーやスノーボードは、自己決定し、有能感を感じることができるシチュエーションがとても多いスポーツ。他の自然体験と比較しても同等か、それ以上の効果が期待できるそうです。
たしかに、板の履き方や基本姿勢など、最初に教わらないとできないことも多い反面、実際に滑るときは、そのすべての判断が自分にゆだねられるわけです。自分の制御できるスピードは? 転んでいる人がいる! どうする? などなど、その時々の状況判断、自己決定が必須となります。
そんな課題をクリアしつつ、思い通りの1本を滑ることができたときの達成感、つまり有能感を感じられるチャンスが多いのも、このスポーツ特有のものかもしれませんね。さらに、自分の成長が実感しやすいため積極的になる傾向も。スキー・スノーボードは、意欲を持って物事に取り組む姿勢を身に付けることにも有用なのです。
前述の石崎教授によれば、スノーリゾートいう共有空間の中で親子が触れ合うことは、「子供との遊び方や接し方がわからない」という悩みを抱える親御さんが多い昨今では、大きな意義があるそうです。
スキー・スノーボード、雪遊びなど、親子で同じ体験をすることで、子供は親とのつながりを感じることができ、共通の話題も生まれます。それによって、自然と会話も弾み、豊かな親子関係を築くことにつながるというんですね。
スキーはアクセスの問題もあり、基本的に子供だけで楽しむことはできません。一般的に、家族旅行は子供が大きくなるにしたがって回数が減る傾向にありますが、子供が中学生になってからもファミリースキー旅行は続けている、というご家族は増加傾向にあると感じます。
これも、スキー・スノーボードという、子供だけでは楽しめない家族共通の趣味があるがゆえ。そう、ファミリースキーは、いつまでも仲のいい家族でいるための最適な手段でもあるのです。
スキースクールや子供だけで参加できるキッズキャンプのようなツアーでお友達と触れ合い、そして、切磋琢磨することも、とても重要だと感じます。幼稚園・保育園には徒競走をやっても順位をつけないところが増えているとよく耳にしますが、キッズ向けのスキーやスノーボードの大会参加者は増加傾向にあります。
もちろん、負けて泣く子もいますが、そんな子に限って、次回の大会にも参加してくれたりするものです。ここで、順位をつける、つけないを論じるつもりはありませんが、勝つ喜び、負けるくやしさを伝えることも、子供の心の成長のためには、とても重要なんだと実感しています。
スノーリゾートはここ数年で大きな進化を遂げています。幼児から遊べる“雪の遊園地”的な多くのアトラクション、技術習得、切磋琢磨できるスクールや大会、家族の旅を演出してくれるリゾートホテルなどなど。
このコンテンツの多さが、そのままスノーリゾートの可能性、ひいては“雪育”の可能性を示していると考えています。