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中流家庭ではありながら、裕福な幼少時代を過ごした一葉女史。祖父の代から読書や学問を好む家族環境で、彼女も例外なく読書家であり学問でも成績優秀でありました。しかし、一葉女史17歳の頃、父親が他界し戸主として母や妹を養う立場となり、もの書きだけでは生計が成り立たず、20歳の頃龍泉寺町で日用雑貨のお店を営むこととなります。しかし、お店も繁盛せず一年足らずで閉店し転居、そこから執筆活動に専念するようになります。その後、結核で他界するまでの14ヶ月で、いくつもの名作を残しています。後に、一葉女史の作品を研究する者の間から、その期間を「奇跡の14ヶ月」と呼ばれるようになりました。特に「たけくらべ」は当時では新しいとされた時間軸の長い物語。そこに出てくる少年少女が大人になってゆく過程を丁寧に描き話題を呼びました。彼女の作品は森鴎外ら複数の作家から高い評価を得られましたが、そうはいっても明治時代。そこに至るまでも、それ以降も、極貧生活や女性ならではの目に見えない心労があったのではないでしょうか。その証拠に、交流のあった渋谷三郎の影響もあって、作品を絶賛される数年前に男女同権について言及しています。現代の女性の活躍の礎は、一葉女史のような存在があったからこそだと、この命日に想いを寄せずにいられません。
さて、一葉女史の命日である11月23日には、ゆかりのある東京都文京区の法真寺では文京一葉忌が行われました。また、東京都台東区にある一葉記念館では、リニューアルオープン10周年で特別展「にごりえ〜樋口一葉が描いた光と翳〜」が、平成29年1月29日まで開催されています。小説作品はもちろんですが、ここでしか見られない展示物に出会って、樋口一葉女史の新たな魅力に触れてみてはいかがでしょうか。