「大谷翔平のトミー・ジョン手術は防げた」驚愕の予防法について柔道整復師の角田紀臣先生に聞く
ドジャース大谷翔平投手は打者で活躍しながらも、投手復帰が遅れています。当初は5月ごろの復帰予定でしたが、その後スケジュールが先延ばしに。デーブ・ロバーツ監督は「誰もタイムラインを設けていない。まだ遠い先の話だ」と語り、早期復帰を白紙としました。今年2月にフリーアナウンサー田中大貴氏のYouTube「アスリートチャンネル」に出演し「大谷のトミー・ジョン手術は防げた」と驚愕(きょうがく)の予防法について語り、大きな話題となった柔道整復師の角田紀臣先生に会って話を聞きました。
角田先生のプロフィルを簡単に紹介すると、MLBレイズのアスレチックトレーナー兼鍼灸(しんきゅう)師の福田紳一郎氏らを弟子にし、世界初の関節ケア専門資格「Japan joints adjuster」を取得し活躍中。今年2月には一般社団法人・予防医科学推進協会を設立し、理事長に就任しました。
角田先生は科学的トレーニングの普及により、筋力の筋出力が向上すると、関節の負担も上がり、その時アスリートが関節のけがに悩むと言います。それを未然に防ぐためのケア方法を伝授し、弟子プロジェクトを拡大。その第1号がレイズの福田先生とのことです。
実は23年に渡米した時、福田先生とお会いしました。福田先生は本職の鍼灸師にとどまらず整体の実学も教え、関節ケアなどさまざまなことができる、まさにオールマイティーな逸材。いまや、米球界でも一目置かれる存在となっています。
福田先生から一昨年連絡があり、角田先生は予防ケアのエッセンスを教えたそうです。すると、20年以降レイズでトミー・ジョン手術を受けた投手が10人もいたのに、昨年同手術を受けた投手は1人もいなかったと聞いて、強い衝撃を受けました。ちなみに、昨年ドジャースは7人もいたと聞いて、なおさら驚きました。
そこで大谷について手術の予防や投手復帰のカギを聞きました。その前に言うべきは、同手術を2回以上受けて元通りになる確率は約50%だそうです。当初5月ごろの復帰予定と言われていた時期を遅らせているのは、なかなか調子が上がらないことも一因にあると言えます。
それでも、大谷にとって最大の持ち味である投打二刀流復帰のためには、メジャーの公式球は重く滑りやすいので指関節、手首、肘などの関節ケアを充実させる。また、下半身と腰、肩甲骨の関節の使い方を修正して投球フォームを変える。手首と肘の外回転であるスイーパーをなるべく少なくする、とのことです。
確かに、今年は自主トレから新しい投球フォームに取り組み、従来のセットポジションからけがのリスクが少ないノーワインドアップに変更。また、本人は「負担が大きいスイーパー系などは制限付き」と話しており、投球スタイルの変更も余儀なくされそうです。
また、トミー・ジョン手術の解決すべき課題として、ピッチングにおける生体力学・運動学・スポーツ科学的な観点では、肘の内側の癒着やミスアライメント(関節などが適切な位置からずれていること)があると内側の靱帯(じんたい)に牽引(けんいん)力が働くため、これらを予防する環境が求められると言います。
角田先生は予防科学の観点から国民の健康寿命とアスリート寿命を包括的に延伸し、国民の健康を支え、スポーツの振興を図り、2040年の社会保障問題解決を目指していると言います。そのため、世界で日本のアスリートにもっと活躍して欲しい、という信念のもと活動しています。プロアマ問わず野球肘やトミー・ジョン手術で悩む人々が減るきっかけになれば大変うれしく思う、と言っています。そのためにも大谷投手には焦らずじっくり治してもらい、投打二刀流の完全復活を心から願うばかりです。
【大リーグ研究家・福島良一】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「福島良一の大リーグIt's showtime!」)