【阪神】糸原健斗の「声の力」に密着「声は準備」失敗は声で防げる
<密着>
阪神沖縄・具志川キャンプでは糸原健斗内野手(32)の声が一際目立つ。日刊スポーツ阪神担当は今回の春季キャンプで「密着」と題し、ナインの1日を取り上げる。第1回では山崎健太記者が「虎の事起こし職人」こと糸原の「声の力」に迫った。
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グラウンドに入ると、糸原の声質が変わった。全体アップなどを終えた午前11時28分、シートノックが始まった。この日、具志川球場の最高気温は22度。沖縄らしい日差しが照りつける中、一塁守備に入った背番号33の声が一際目立った。「1発目大事よ!」。「慌てるなよ!」。糸原の一言一言でグラウンドが引き締まる感覚があった。
「声は準備。いざとなった時に声が出ないと困る。そのために日頃から当たり前のように声を出しておくことが大事」。前日11日のシートノックでは三塁守備に入ると時折、白線から2歩下がり、グラウンド全体を見渡しながら声を出す。その姿はグラウンド上の監督のようだった。
ドラフト5位佐野大陽内野手(22=日本海L・富山)は糸原の「声の力」がプロ入りして驚いたことの1つだという。「質の高い声というか。野球に対して本当に大事な声を出されている。糸原さんから学ぶことは多いです」と目を輝かせた。
佐野は前日11日のバント処理練習中に「遠慮しないでもっとボールを呼べ」と助言も受けたという。糸原は「プロ野球だから声を出さなくてもいいわけじゃないし、より一層声が重要になる。先輩としてそこは伝えていく必要がある」と胸を張った。
23年シーズンから主に左の代打の切り札として「いぶし銀」の活躍を見せてきた。「1球の失敗でチームが負けることがある。声が『その1球の失敗』を防ぐことにもつながる」。勝負どころでの仕事を期待されてきたからこそ、1球に対する思いは人一倍強い。
帰り際には「声出すのなんて当たり前だから」とサラリ。今季も糸原の「声」が貴重な戦力となりそうだ。【山崎健太】