ギプスを巻いて観戦に訪れた関大・河野(2024年5月撮影)

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中日ドラフト1位の金丸夢斗投手(22)の関大の同期で幻のU18候補右腕・河野勇真投手(22)は、兵庫県警野球部に内定した。プロ入りした同期の姿を励みに、自身は手術の経験を糧に社会人野球の門をたたく。

同期でありながら友人の間柄で、徳島北時代はエースナンバーを背負った。直球と縦の変化球を軸に2年春秋には、四国大会で明徳義塾(高知)と激突。対戦した馬淵史郎監督(69)からは落ちる球を評価され、2020年春に予定されていたU18候補の合宿参加の声がかかった。しかし、新型コロナ流行により、合宿の中止が決まった。

関大入学後、3年春にリーグ戦デビューし、140キロを超えるボールを投げていたが、肘に違和感を覚えた。痛み止めを飲みながら連投もこなしていたが、4年を迎える前、これまで自慢だったスライダーの曲がりや制球に難を示して、手術を決断。「自分のピッチングができなくなっていたので」。同時期に、兵庫県警察の硬式野球部、県警桃太郎が興味を示した。

2011年(平23)創部し、同県警の警察官でチームは形成。三田市内のグラウンドを練習拠点とする。母も公務員だったことから、河野自身も卒業後に同チームへ進むことを視野に入れた。「そういうチーム相手に投げられたら面白いかな」と関西の強豪社会人チームとの対戦も目標に挙げる。

5月上旬に手術と検査後、右肘の靱帯(じんたい)は部分断裂し、骨の変形も判明。トミー・ジョン手術と右肘のクリーニング手術を行った。手術後はギプスを巻いた姿で、金丸率いる大学の公式戦の応援へ。「今と(入学時は)そんな印象変わらないんですけど。野球をしている時とプライベートで、いい意味で差がありますよね。マウンドに立っていたら、『かっこいい』し、尊敬できる。そこを離れたら、子どもっぽいし、少年みたいですね(笑い)」。

2人にとって印象的な試合がある。これまで、金丸は「人生1番の投球」に挙げる3年秋の立命大との3回戦だ。金丸は熱中症気味でも延長のマウンドに立った。「技術面もそうなんすけど、マウンドで『絶対自分がこの試合を投げ切る』って。『他の人に譲らないんだ』と、エースのプライドがかっこいいです」。上位争いでの延長戦を制し、勝ち点を収めると整列後、河野は号泣していた金丸をぎゅっと受け止めた。

術後のケアもあり、4年秋もスタンドへ。9月中旬に1次試験、10月中旬に面接や体力テストをなどの2次試験を通過。12月に吉報が届いた。

金丸のキャンプインの1日、県警の練習に初参加した。現在は40メートルほどのキャッチボールを再開。家族の「公務員は、責任感とやりがいのある仕事やと思うよ」との言葉に背中を押されて進む、警察官への道。「野球と仕事の両立をしながら、レベルアップできるように頑張ります。夢斗も頑張るので、自分も負けないぐらい頑張ります!」。

春から半年間は警察学校で学び、その間野球部の練習は毎週土曜日に予定している。4年間青春をともにしたドラ1の盟友の姿を励みに、自らも再び白球を握る。【中島麗】

◆河野勇真(かわの・ゆうま)2002年(平14)9月28日生まれ、徳島県板野郡出身。徳島藍住リトルシニアを経て、徳島北では2年春秋に四国大会出場。2年春は同校初優勝を飾る。甲子園出場はなし。関大では3年春からリーグ戦に登板し、通算11試合0勝1敗、13回1/3、防御率2・03。175センチ、83キロ。左投げ左打ち。

情報提供元: 日刊スポーツ
記事名:「 金丸夢斗の関大同期・幻のU18候補右腕はトミー・ジョン手術を乗り越え兵庫県警野球部に内定