【阪神】青柳晃洋、米挑戦きっかけは東京五輪「国際大会向き」変則投法期待も2試合で自責点5
阪神青柳晃洋投手(30)が今オフ、ポスティングシステムを利用して大リーグに挑戦することが5日、決まった。本人が数年前からメジャー希望を伝え、球団も容認する方針を明かした。今後、球団を通じてMLBに申請手続きを行い、獲得交渉を希望する球団が現れるの待つ。阪神からポスティングによるメジャー挑戦は06年井川慶と22年藤浪晋太郎以来3人目。2度の最多勝を含め、通算61勝を積み重ねた変則右腕が、大きな挑戦に出る。
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2軍の鳴尾浜球場で、青柳は前を向いてメジャー挑戦の意思を表明した。
「自分のわがままというか、気持ちを通してくれて、本当に感謝しかないです。体が元気なうちに挑戦したい気持ちが強かった」
きっかけは21年8月の東京五輪。大ブレークしたシーズンの途中、下手投げに近い変則投法が「国際大会向き」と期待された。だが中継ぎ2試合で自責点5。「全く通用せず、悔しかった。その後、ある程度活躍させてもらったくらいから、(米国を)経験してみたいとずっと思っていた」。球団にも当時から渡米意思があるとを伝えていた。
家族の理解を得て、単身渡米する予定だ。決断に至るまで相談したのは夫人だけという。代理人は米国の大手「WME」社と契約済み。担当者は今年5回ほど来日し、同じく契約する中日小笠原と同様に、密なサポートに入っていた。
球団は難しい判断を迫られていたが、最終的には青柳の熱意に折れた。V奪回へ来季も当然、必要戦力。ただ、夢を頭ごなしに否定はしたくない。阪神のポスティング申請は06年オフの井川、22年オフの藤浪に続く3人目。嶌村球団本部長は「選手の気持ちはくみながら、は前提にあるけど、チームは選手の集合体。総合的に判断しなければいけない。数年前からの話があって今、ここで決断したということ」と簡単な判断ではなかったと明かした。
今年何度も視察したメジャー関係者によると、評価は分かれ、チームによっては先発争いに加われるかどうか、という見立てだという。本人はマイナー契約も覚悟。契約内容によっては阪神に入る譲渡金も少なくなる。だが、同本部長は「そういう問題ではない」と、金額の大小は、容認の判断とは無関係と強調。一方で、粟井球団社長は「もともと戦力ですので」と、不運にもポスティングが不成立だった場合は、来季戦力として歓迎する意向を示した。
ドラフト5位からはい上がった苦労人は「僕みたいに大した選手じゃなくても活躍できたら、他の選手の希望にもなるかな」とも言った。ポスティングが不成立の例も少なくはない。道は厳しいが、下した決断に後悔はない。
◆青柳晃洋(あおやぎ・こうよう)1993年(平5)12月11日、神奈川県生まれ。川崎工科-帝京大を経て15年ドラフト5位で阪神入団。21、22年に最多勝、勝率1位、22年は最優秀防御率にも輝いた。23、24年に2年連続開幕投手。21年東京五輪で金メダル。183センチ、83キロ。右投げ右打ち。今季推定年俸2億1000万円。
◆ポスティングシステム 海外FA権取得前に大リーグへ移籍できる制度。申請期間は今月1日に始まり、12月15日まで。交渉期間は45日間。日本球団への譲渡金は、選手契約の総額に応じて支払われる。