長距離とマラソンで五輪に計４度出場するなど女子の陸上界を長年けん引し、今月限りで現役引退する福士加代子選手（３９）＝ワコール＝が３０日、大阪市のヤンマースタジアム長居をゴールとする大阪ハーフマラソン（２１．０９７５キロ）に出場した。福士選手は持ち前の笑顔で、「ラストラン」を元気に走り切った。 １時間１６分４秒で３０位。途中で腰を押さえて立ち止まる場面もあったが、力を振り絞って完走。「最後は笑顔で」と懸命にゴールすると、ファンが大きな拍手でたたえた。 同時開催の大阪国際女子マラソンには、過去に６度出場して２度優勝。五輪切符を手繰り寄せた快走あり、大失速と転倒、途中棄権などの苦い経験あり。「ハーフはマラソンコースの後半と一緒。『ああ、ここで転んだ』とか『ここからきつい』といろんな感情が沸いた」。舞台への思いをかみしめながら走った。 実業団での２２年間は栄光と挫折の繰り返し。それでも「走るのが楽しかった」と言い切る。青森県の母校、五所川原工高時代に指導した安田信昭さんは、教え子をこう評したことがある。「彼女には『負けたことに負けるな』と言った。それをずっと守り続け、負けることで頑張り続けた」 レース後の引退セレモニーでは、五輪金メダリストの高橋尚子さんと野口みずきさんら、そうそうたる面々から花束を贈られ、ご満悦。かつてライバルとしてしのぎを削り、大の仲良しでもある渋井陽子さんは「最後に泣こうと思ったけど、あまりの失速ぶりに笑ってしまった」。福士選手も周囲も、笑顔に包まれた。 ◇福士加代子の略歴 福士 加代子（ふくし・かよこ） 青森・五所川原工高から００年にワコール入社。長距離種目で世界選手権に０３年から４大会、五輪には０４年アテネから３大会連続出場。初マラソンは０８年の大阪国際。１１年に再挑戦し、１３年の世界選手権（モスクワ）で銅メダルを獲得した。１６年リオデジャネイロ五輪でもマラソン代表になり、日本勢最高の１４位。自己ベストは５０００メートルが前日本記録の１４分５３秒２２、１万メートルは日本歴代４位の３０分５１秒８１、マラソンは２時間２２分１７秒。３９歳。青森県出身。 （了） 【時事通信社】 〔写真説明〕大阪ハーフマラソンに出場し、笑顔でゴールに向かう福士加代子＝３０日、大阪・ヤンマースタジアム長居 〔写真説明〕引退セレモニーで、渋井陽子さん（右）、小崎まりさん（左）と笑顔で撮影に応じる福士加代子＝３０日、大阪・ヤンマースタジアム長居