~コロナ感染理由の拒否も



2021年5月17日

 公益財団法人 日本盲導犬協会



【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202105144900-O9-66K59ywO

障害者差別解消法施行(2016年)から5年がたった今、視覚障害者に対する社会の理解は進んだのか?その実態を把握するために、公益財団法人日本盲導犬協会(井上幸彦理事長)は、盲導犬ユーザーから相談が寄せられた盲導犬同伴による受け入れ拒否への対応事例を毎年集計、公開しています。2020年度の集計では、コロナ禍で外出機会が減る中、解決が難しく協会が対応した事例が34件ありました。さらに盲導犬ユーザーへの聞き取り調査からは、コロナ感染を理由とする拒否が発生していることもわかってきました。



こうした状況を多くの方へ伝えることにより、誰もが暮らしやすい社会へ向け、盲導犬や視覚障害に対するより一層の理解と法の周知を徹底したいと考えます。



以上、ぜひ報道いただけますようよろしくお願いいたします。



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障害者差別解消法施行から5年

盲導犬ユーザー受け入れ拒否の実態報告

~コロナ感染理由の拒否も



盲導犬同伴での受け入れ拒否が無くならない実態について、当協会が盲導犬ユーザーから相談を受けて問題解決へむけ対応した【1.盲導犬ユーザーの受け入れ拒否対応事例】と、盲導犬ユーザーを対象に行った【2.コロナ禍の盲導犬ユーザー外出時や社会参加での「困りごと」聞き取り調査結果】を以下のとおりまとめました。



1.盲導犬ユーザーの受け入れ拒否対応事例

盲導犬同伴で受け入れ拒否に遭い、ユーザー自身の説明では理解が得られなかった場合、ユーザーの要請に応じて協会が問題解決へむけ対応する「アドボカシー活動」を2005年2月から展開しています。2020年度はコロナ禍で外出を控える人もいた中、34件の対応依頼が協会に寄せられました。その集計結果と特徴的だった事例を抜粋し、現状と傾向を報告します。

 

【受け入れ拒否対応事例データ】

集計対象:受け入れ拒否に遭ったユーザーから要請され、問題解決にむけ協会が対応した事例34件

集計期間:2020年4月1日~2021年3月31日



<拒否対応概要と拒否理由から見える課題>

・2020年度に対応した34件のうち、受け入れ拒否が起きた場所としては、飲食店が16件(47%)で最多、次に医療機関の8件(24%)、小売店の3件(9%)が続きました。この3年間の対応件数を合計した数字でも、飲食店47%、医療機関17%、小売店7%の順で変わりません。

※プレスリリース添付ファイル:

資料②【「盲導犬受け入れ拒否」の対応数推移】をご参照ください。



・2020年度飲食店で起きた拒否のうち、複数店舗を経営するチェーン店と個人店舗と比較したところ同数となり、店の業態によって拒否の割合に変化はみられませんでした。チェーン店では、多数いる従業員すべてに教育を行き届かせることが難しく、拒否が発生していました。個人店舗では、責任者が受け入れの義務自体を知らないことも多くありました。

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※プレスリリース添付ファイル:

資料②【盲導犬受け入れ拒否のあった場所・業種(2020年度)】をご参照ください。



・受け入れ拒否の原因は大きく3つありました

事業者が「受け入れの義務を従業員に徹底できていなかった」など教育不足が17件(50%)、事業者が「受け入れ義務を知らなかった」が12件(35%)、事業者が「受け入れについて誤解をしていた」が4件(12%)です。

このデータからも、障害者差別解消法や身体障害者補助犬法の周知が進んでいないことが明らかです。たとえ企業が法律を理解していても、従業員への教育が不足し現場へ浸透していないことがわかります。同じ店でも、対応者によって受け入れの可否が変わるケースもありました。

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※プレスリリース添付ファイル:

資料②【受け入れ拒否の原因】をご参照ください。



・受け入れに対する具体的な懸念の声としては、シートを汚すのではなど犬の衛生面への懸念が6件(18%)、アレルギーの客がいるかもしれないという懸念が6件(18%)、犬が嚙みついたり床を傷つけたりするのではなどの犬行動面への懸念が4件(12%)でした。他、設備が整っていない、人手不足などです。

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※プレスリリース添付ファイル:

資料②【事業者の懸念点(複数選択あり)】をご参照ください。



2016年に施行された障害者差別解消法では、誰もが等しく店やサービスを利用できるよう、事業者側は求めに応じて配慮しなければならない、としています。盲導犬同伴を理由に視覚障害者の入店を拒むことは「障害を理由とした差別」にあたりますが、差別解消法の周知は未だ進んでいないことが数字からも明らかです。

障害のあるなしにかかわらず、誰もが自由に社会参加できる共生社会実現へ向け、障害者差別解消法および身体障害者補助犬法の周知と、事業者および従業員への教育が急務であると考えます。



【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202105144900-O14-txXZs88v



<受け入れ拒否対応・事例>

事業者で規定された受け入れのルールが従業員へ周知徹底されていないことによって起こった飲食店での2例と、医療機関、小売店の事例を挙げます。



■事例①:「本社の指示で入れない」と言われた

ユーザーがカフェの予約のため問い合わせたところ、店員より「本社の指示で盲導犬は入店できない」と言われた。協会から連絡をして責任者に確認すると、本社では補助犬の受け入れはルール化されており、該当店舗でも「盲導犬はこれまで受け入れていた」。店長は店員の拒否について把握しておらず「独断で断ってしまったのではないか」とのことだった。再度店員へ法の周知をお願いし、ユーザーには「いつでも来店してほしい」とする店舗側からのメッセージを伝えた。



■事例②:店長によって認識の違いがあった

過去に利用経験のある店舗にて、ユーザーの家族が先に店舗に入り盲導犬同伴であることを伝えたところ、拒否。説明を試みるが、当時とは店長が変わり「だめです」と断られた。「盲導犬はペットではなく、受け入れる義務がある」ことを伝えたが、強く拒否されたので、諦めて食事をせずに帰った。その後店長は自ら本社へ確認し、誤った対応であったことを知った。本社では受け入れに関する規定は存在するものの、これまで店舗へ指導したことはなく、店長によって認識に違いが生じていた。本社から全店へ受け入れの周知を依頼した。



■事例③:救急搬送時に盲導犬を理由に受け入れ拒否

ユーザー自身の体調不良により救急搬送。搬送先の候補であった2か所の病院で盲導犬を理由に断られたことを救急隊員から知らされた。その後、1か所の病院からは「当日はスタッフが不適切な対応をしてしまったが、受け入れている」「受け入れる決まりにはなっていたが、明確なルール(犬をどこに待機させるかなど)が無かった」と説明があった。盲導犬の受け入れについて再度周知し、受け入れ方が不明瞭だった部分については病院内で検討を進めている。



■事例④:コンビニエンスストアで外国人店員による受け入れ拒否

同チェーン店2店舗にて立て続けに拒否。対応スタッフが2店舗とも外国人だったこともあり、ユーザーが「盲導犬は入れるはずだから調べてほしい」と話すも伝わらず、「犬はだめ」と断られた。協会から連絡をしたところ、店舗責任者は盲導犬の受け入れ義務を認識しており、改めて従業員の教育をするとの回答。しかし、本社には対応したスタッフの母国語を話せる人がいなかったため、同国出身で日本語が流暢な別のスタッフを介して通訳、説明することになった。



 

2.コロナ禍の盲導犬ユーザー 外出時や社会参加での「困りごと」聞き取り調査結果



【 調査データ 】

調査対象:日本盲導犬協会所属のユーザー(盲導犬使用者)230人 

     回答数227人(男性104人 女性123人)

調査対象期間:2020年1月1日~12月31日

調査方法:職員による電話とメールを使っての聞き取り



<聞き取り調査の概要>

①外出時の不安・困りごとで最も多かったのは「ソーシャルディスタンスが分かりづらい」

設問は選択肢8つの複数回答でしたが、抜きんでて多かったのが「ソーシャルディスタンスが分かりづらい」で41%。「周囲に手引きなどのサポートを頼みづらい」(22%)、「商品などを触るため周囲の目が気になる」(21%)など、周りに気兼ねしながら外出するユーザーの姿が浮かんできました。

自由回答では「消毒液の置き場所が分からない」「スーパーのレジに並ぶのに距離感や進み具合が分からなくて困った」といった意見が多数でした。



②コロナ感染を理由にサポートや受け入れを断られた

不安・困りごとの選択肢8つの中で、「犬の感染を理由に拒否に遭うのでは」は12%でしたが、実際はどうだったのでしょうか。「コロナ感染を理由に店や施設でサポートを断られたり、入店を拒否されたりしたことがあるか」と質問したところ、14人(6%)が「ある」と回答。コメント欄を見ると、「コロナなので犬から人にうつるので駄目」や「デパートの地下売り場で買い物をしようと、いつも通りの誘導を依頼したら、『感染症対策のためにできない』と受付で断られた」という事例もありました。

「コロナ禍でサポートを人に頼みづらい」、そのため「家族にお願いしている」「サポートが必要な場所には行かないようにしている」という声も寄せられました。盲導犬と単身で自由に外出できるはずが、出先で人のサポートを得られるか心配で断念せざるを得ない。以前にも増して、コロナ禍で視覚障害の方が不自由を強いられている現状が浮かび上がってきました。



③受け入れ拒否は暫定的に減少

盲導犬同伴を理由にした「受け入れ拒否」については、93人(41%)が「ある」と回答。ここ数年は60%前後で推移してきましたが、今回は大きく減っています。コロナによる外出自粛要請でユーザーの外出頻度が減ったのが要因と推察されます。

「コロナ禍なので断られそうなところに行かない」「病院への付きそいでは犬を置いていくことにした」など、受け入れ拒否を避けるための行動を余儀なくされていたことも伺えました。



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【社会理解へ向けた活動】

この調査結果を受けて、日本盲導犬協会では、誰もが自由に社会参加できる共生社会の実現には、事業者及びその従業員への教育が急務であると考え、「オンライン盲導犬ユーザー受け入れ・接客セミナー」を4月から定期開催しています。  

<飲食店向け>

https://www.moudouken.net/news/article/page_584.php

4月19日に開催した第1回では17施設43名の参加があり、盲導犬ユーザーの誘導方法や新型コロナウイルス感染防止の観点から具体的な質問が寄せられました。

<宿泊事業者向け>

https://www.moudouken.net/news/article/page_291.php

<医療機関向け>

https://www.moudouken.net/news/article/page_940.php

<商業施設向け>

https://www.moudouken.net/news/article/page_140.php

【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202105144900-O6-13H89Zz2



★「盲導犬受け入れ拒否対応事例集」をホームページでも公開しています。https://www.moudouken.net/special/case-study/



★協会公式YouTubeチャンネルにて、盲導犬ユーザーによる入店拒否の経験談や盲導犬との生活について語っています。



【動画:https://www.youtube.com/watch?v=pZswG2gHlUM



情報提供元: PRワイヤー
記事名:「 障害者差別解消法施行から5年 盲導犬ユーザー受け入れ拒否の実態報告