国民年金の保険料が支払えない(支払いたくないというのもありますが)場合に、未納にせず手続きしておきたいのが免除申請ですが、全く払わなくていい全額免除から減額になる一部免除まであります。
両者に所得基準があるのですが、この所得基準が異なるのです。
所得基準には確定申告状況が反映されますが、特に一部免除では申告の仕方に相当依存します。
全額免除と一部免除の所得基準の違い
両者に共通しているのは、複数の人がいる世帯では、本人だけでなく配偶者や世帯主についても審査対象となり、全員が要件にあてはまらないと免除されないということです。
また1~6月の保険料は前々年の所得(平成29年であれば平成27年分の所得)、7~12月の保険料は前年の所得(平成29年であれば平成28年分の所得)が基準となります。
全額免除の要件には様々なものがありますが、本人・配偶者・世帯主の所得基準としては下記の通りです。
合計所得金額 ≦ 22万円 + 35万円×(扶養親族等の数+1)
ただし、審査の対象者が障害者・寡婦の条件に当てはまるのであれば125万円以下(住民税非課税の要件と同じです)
一部免除ですが、これには「4分の3免除」、「半額免除」、「4分の1免除」の3種類あります。
平成29年度価額は月額1万6,490円ですので、平成29年度は免除により月額が下記のように減少します。
4分の3免除 :4,120円
半額免除 :8,250円
4分の1免除 :1万2,370円
各免除の基準は以下の通りです。
免除割合が少なくなるほど、基準が40万円ずつ増えて緩くなるイメージです。
4分の3免除
総所得金額等 ≦ 78万円 + 扶養控除等の額 + 社会保険料控除額等
半額免除
総所得金額等 ≦ 118万円 + 扶養控除等の額 + 社会保険料控除額等
4分の1免除
総所得金額等 ≦ 158万円 + 扶養控除等の額 + 社会保険料控除額等
(合計所得金額と総所得金額等については「確定申告によって自分の受ける社会保障はどう変わってくるのか(2)~基準となる所得~」参照)
扶養控除等の額は、通常は38万円ですが、老人扶養親族は48万円、特定扶養親族(免除申請においては16歳以上23歳未満)は63万円です。
これは所得税の控除額と同じで、扶養に入れた人数分だけ加えます。
社会保険料控除額等の内容
これは社会保険料控除だけでもなければ、所得控除にあたるものが全て認められるわけではありません。認められる所得控除は下記の通りです。
・ 雑損控除
・ 医療費控除
・ 小規模企業共済等掛金控除
・ 社会保険料控除
・ 障害者控除
・ 寡婦(夫)控除
・ 勤労学生控除
・ 配偶者特別控除
保険会社の支払に対する生命保険料控除・地震保険料控除や、ふるさと納税などの寄付金控除は一部免除においても考慮されません。
特に一部免除は確定申告がポイントになる
全額免除においても、上場株の申告のように申告不要制度の活用により所得を押し上げないようにし、扶養親族等の申告をきちんとしておくことは、審査において考慮されます。
一部免除はそれにも増して、過去3年分の上場株式等繰越損失の申告や、扶養以外の所得控除申告なども重要になります。
医療費や(天引き・口座引き落としでない)社会保険料は、本人分だけでなく同一生計親族分も控除対象になります(参照 【年末調整・確定申告】親族名義の保険料等を支払っても「控除対象」になる ただし落とし穴にはまらないための注意点も…)。
本人の所得が低くても、世帯主・配偶者の所得が高くなりそうな場合は、世帯主・配偶者が負担すると所得基準の判定では有利になります。
なおマイナンバーカードを活用して参照できる「マイナポータル」では、国民年金保険料の免除申請ができるようなことも予定されています。(マイナポータルは平成29年1月16日より密かに運用開始されましたが、本格運用は7月からですので、現在どのような情報まで閲覧できるのかまでは詳細がわかりません。)
注意:もらえる年金の減額
最後に注意です。
老後にもらえる老齢基礎年金の計算では、納付月数をかけ算しますが、免除を受けた期間に関しては、納付月数が(平成21年4月分以降)下記のような扱いになります。
【通常の納付を納付月数×1とした場合】
・ 全額免除 → 納付月数×8分の4
・ 4分の3免除 → 納付月数×8分の5
・ 半額免除 → 納付月数×8分の6
・ 4分の1免除 → 納付月数×8分の7
例えば24か月分の4分の3免除期間は、老齢基礎年金の計算上、15か月分の納付扱いになるということです。(執筆者:石谷 彰彦)
情報提供元: マネーの達人