確定申告のシーズンが近づいてきました。
確定申告書の提出期限は対象年の翌年2月16日から3月15日までとなっていますが、所得税の還付を受けるための確定申告書については対象年の翌年1月1日以降に提出することができます。
医療費控除により所得税の還付を受けるためにも確定申告は必要です。
今回は医療費控除の対象となる費用のうち、判断に迷いがちな医療費に焦点を当てて解説します。
1. 医療費控除の概要と控除を受けるための手続き
(1) 医療費控除の概要
医療費控除は所得控除の1つで、納税者本人あるいは生計を一にする配偶者やその他の親族のために支払った医療費がある場合、納税者の所得や医療費の金額に応じて所得控除を受けることができるというものです。
医療費控除の対象となる金額は次の式により計算し、最高金額は200万円となります。
実際に支払った医療費の合計額-(A)の金額-(B)の金額
(A)医療保険や入院保険などの保険金、高額療養費などで医療費の支払が補填された金額
(B)10万円 or 総所得金額の5%の金額(総所得金額が200万円未満の場合)
平成28年分の確定申告については前年度からの制度的な変更はありませんが、平成29年以降はセルフメディケーション税制の導入による変更がありますのでご注意ください。
(2) 医療費控除を受けるための手続き
確定申告をすることが必須となります。確定申告書に医療費に関する所定の事項を記載し、医療費の領収書等を添付した上で税務署に提出します。
医療費の領収書等については申告書を提出する際に提示するという方法も認められています。
なおe-TAXによる申告をする場合は、所定の明細書の作成・添付をすることで領収書等の提出は省略することができます。
2. 医療費控除の対象となる医療費とは
医療費控除のための確定申告をする上で一番悩ましいのは、どこまでが医療費控除の対象になるかということです。詳しく説明していきます。
(1) 原則として治療の為の費用のみが対象
基本的には病気や怪我の治療の為の対価が控除の対象となります。病院やクリニックに支払った医療費の他、整骨院や鍼灸院での治療費も対象となります。
その他、ドラッグストアで購入した風邪薬なども治療の為に購入したものであれば対象となります。なお、メガネやコンタクトレンズなどの購入費用は治療の対価とは認められません。
(2) 健康保険の対象であるかどうかは関係ない
治療の為の費用であれば、健康保険の対象であるかどうかは関係ありません。先進医療など、現行の健康保険制度の対象外である医療費についても医療費控除の対象となる場合があります。
特に歯科医に支払う医療費については健康保険の対象外となる場合も多いのですが、例えば歯の矯正でも治療目的のものであれば医療費控除の対象となります。
なお美容目的での歯の矯正などについては医療費控除の対象とはなりません。
(3) 出産のための費用等
出産のための費用、例えば妊娠と診断されてからの定期検診や検査のための費用、出産時の入院のために要する費用などが対象となります。
助産院で検診や出産をする場合も対象となります。
なお、健康保険組合から給付される出産育児一時金については医療費から差し引かなければなりません。
(4) 病院やクリニックに支払う費用で対象外となるもの
病院などに支払う費用で対象外となるものの具体例を紹介します。
(A)人間ドック、健康診断(診断時に病気が見つかり、治療に入った場合などは対象)
(B)予防接種
(C)入院時の寝巻や洗面具など、身の回り品の購入
(D)医師や看護師に対する謝礼(診療の対価ではないもの)
(E)本人や家族だけでの都合による個室や特別室での入院による差額ベッド代*
*病院の指示等による個室等の入院の場合、制度的には差額ベッド代は発生しないはずですが、実情として差額ベッド代が請求されることが多いようです。
(F)特別料理の代金など、通常入院するために必要ではない費用
(5) 通院するための交通費
通院するための公共交通機関の利用料金も医療費控除の対象となります。
電車やバスを利用した場合で領収書の発行がない場合は、日付や利用区間、金額などを記載した書類を作成しておくなどの必要があります。
家計簿の写しも領収書の代わりとして証明資料になります。
タクシー代については、公共交通機関の利用が困難である場合のみ医療費控除の対象となります。自家用車で通院した場合のガソリン代や駐車料については対象外となります。
まとめ
今回紹介したもの以外では、介護費用についても医療費控除の対象となる場合があります。
介護費用については要件が細かく定められている場合が多いので税務署や税理士に確認を取ることをおすすめします。
医療費控除は所得税だけでなく住民税の節税にもなるため、対象となる人は忘れないで確定申告するようにして下さい。(執筆者:高垣 英紀)
情報提供元: マネーの達人