家を売って分ける遺言。売却益の所得税は誰が申告する?
家を売って分ける遺言。売却益の所得税は誰が申告する?

実家を売って、そのお金を兄弟で分けてほしいと、親から遺言の相談を受けることがあります。そんなとき、誰が家を売り、売れた益の税金を誰が納めるのかが気になります。遺言執行者が指定され、遺言に従って家を売る場合、譲渡所得を誰が申告するかは遺言の内容や財産の帰属によって異なります。その関係を、国税庁の質疑応答事例と民法の条文から解説します。

売って分ける遺言で、家を売る役目は遺言執行者に

家や土地をそのまま分けにくいとき、財産を売ってお金に換え、そのお金を分けるよう遺言で決めておく方法があります。清算型遺贈と呼ばれることがあります。ただし、遺言の内容や財産の帰属によって課税関係は異なります。

遺言執行者が指定されている場合、遺言の内容に従って売る手続きを担います。民法は遺言執行者に、遺言の内容を実現するため遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を与えています(第1012条)。遺言執行者がいる場合、相続人は相続財産の処分など遺言の執行を妨げる行為をすることができません。

そのうえで、遺言執行者が権限内で遺言執行者であることを示してした行為は、相続人に対して直接に効力を生じます(第1015条)。家を売るのは遺言執行者でも、その売却の効果は相続人に及ぶという関係です。

国税庁の事例では、法定相続分に応じて相続人それぞれが申告

では、家が売れて益が出たら、誰が申告するのでしょうか。国税庁の特定公益信託を設定する事例についての質疑応答は、遺産の換価処分は遺言執行者の職務として行われ、その行為は相続人に直接効力を生じることから、換価処分に係る譲渡所得は法定相続分に応じて各相続人が申告する必要があるとしています。

注意したいのは、法定相続分という申告の基準は、ここで紹介した事例について示されている点です。事例では相続人が受け取る額が遺言で決められていましたが、それでも基準は法定相続分とされています。なお、この回答は令和7年8月1日現在の法令・通達等に基づく、照会の事実関係を前提とした一般的なものです。具体的な取引では異なる課税関係が生じうると、国税庁は注記しています。また、2026年4月1日に公益信託制度が改正されているため、当該事例の公益信託に関する制度説明を現行制度の説明としてそのまま扱うことはできません。譲渡所得の取扱いについても個別に確認が必要です。

土地や建物を売った譲渡所得は、給与所得などと合計せずに分けて計算する分離課税です。課税対象となる譲渡所得は、原則として売却代金などの収入金額から取得費や譲渡費用、適用できる特別控除を差し引いて計算します。譲渡所得の申告は、原則として売った年の翌年の2月16日から3月15日の間に行うと国税庁は案内しています(期限日が休日に当たる場合は翌開庁日)。

家を売って分ける遺言。売却益の所得税は誰が申告する?

家の名義の手続きと、遺言を書く前に確かめたいこと

家を売るには不動産の名義(登記)の手続きも絡むため、必要な登記や手続きの順序は法務局や司法書士に個別に確かめておくと安心です。

遺言を書く前に親子で確かめたいのは3つです。売ってほしい財産と売ったお金の分け方を書き出すこと、遺言執行者を誰にするか決めること、そして譲渡所得の申告を誰が行うかについて、税理士などに確認して家族に伝えておくことです。国税庁の事例では申告の基準は法定相続分とされているため、誰が相続人になるのかを先に確かめておくと説明もしやすくなります。

売る人と申告する人が分かれることを知っておく

紹介した国税庁の事例では、財産を売るのは遺言執行者、譲渡所得を申告するのは各相続人と、役目が分かれます。ただし、遺言の内容や財産の帰属によって課税関係が異なることがあります。遺言を書く段階で財産の書き出しと遺言執行者の指定を済ませ、誰が申告するか税理士などにも確認したうえで家族に伝えておくと安心です。

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情報提供元: マネーの達人
記事名:「 家を売って分ける遺言。売却益の所得税は誰が申告する? 」