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野村マイクロ・サイエンス<6254>は、超純水装置を中核とする水処理ソリューションのリーディングカンパニーである。1969年の設立以来、半導体産業を中心に超純水の製造・供給・分析技術を提供しており、アジアや米国を中心にグローバルな事業展開を進めている。超純水とは、不純物を極限まで除去した極めて高純度の水であり、微細加工を必要とする先端産業において不可欠な存在である。同社は、設計・調達・施工からメンテナンスなどのアフターサービスまで一貫した体制を構築しており、高度な技術と永年培ってきた信頼性を背景に顧客基盤を拡大。近年では、AIやIoTの普及、脱炭素社会への対応を背景とした半導体投資の拡大を追い風に、受注拡大が続いている。また、製薬分野にも注力しており、注射用水製造装置など製薬用水市場にも対応。近年は、2021年3月期の連結売上高30,361百万円から2025年3月期は96,359百万円と3倍以上の伸びを示しており、飛躍的に成長している。
【2025年3月期決算概要】
2025年3月期の連結業績は、売上高96,359百万円(前期比32.0%増)、営業利益15,372百万円(同44.4%増)、経常利益13,399百万円(同23.9%増)、親会社株主に帰属する当期純利益10,199百万円(同27.8%増)と、いずれも過去最高を更新した。主力の水処理装置事業では、米国や日本を中心に大型案件の工事が順調に進み、売上高78,767百万円(同36.7%増)を計上。メンテナンス及び消耗品も半導体関連企業を中心に受注が進み15,537百万円(同19.9%増)となった。一方、その他事業は2,055百万円(同16.5%減)と減収。報告セグメント別では、米国が52,371百万円(同55.4%増)と突出した伸びを示したほか、日本が26,523百万円(同51.2%増)、中国が9,949百万円(同39.1%増)も大きく寄与した。一方、韓国および台湾では大型案件の一巡により減収となった。また、インドのTATAグループや韓国の新規顧客からの受注により、受注高は94,531百万円(同32.7%増)と過去最高を記録し、今後の成長への布石が打たれている。
2026年3月期は、前期に米国の大型水処理装置案件を計上したことの反動に加え、大型案件の受注時期が下期に集中する見通しであることなどから、売上高は60,000百万円(同37.7%減)、営業利益は6,200百万円(同59.7%減)、経常利益は5,184百万円(同61.3%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は3,837百万円(同62.4%減)を見込んでいる。大幅な減収減益を見込む形ではあるが、受注高は117,229百万円(前期比24.0%増)と拡大基調を維持している。半導体関連市場の投資意欲は引き続き旺盛であり、各国において大型水処理装置の受注が見込まれていることから、同社の成長トレンドは継続していると見てよいだろう。
【株主還元】
株主還元については、「配当性向30%を目標に、バランスの取れたキャッシュアロケーションを実践する」方針を掲げている。2025年3月期の年間配当金は80円、総額は3,025百万円、配当性向は29.7%となった。一方、2026年3月期は70円(中間20円、期末50円)と、今期減益見通しの一方、受注高予想から、2027年3月期以降の業績回復をにらみ、配当性向でいうと69.1%を予想している。このように、同社は今後も収益力の維持・向上を前提としつつ、安定的かつ継続的な株主還元を実現していく構えである。
【成長戦略】
同社は、2023年11月に発表した中期経営計画「TTT-26(Together Toward Transformation-26)」において、2027年3月期に売上高1,010億円、営業利益146億円、ROE25%以上、ROIC22%以上を目標としている。主軸となる半導体産業では、AI・データセンター・自動運転等による需要拡大を背景に、設備投資が加速しており、同社は超純水システムの高機能化・省エネ化を通じて競争優位性を確立する。また、製薬市場では、バイオ医薬品やワクチン製造への対応を強化し、膜式注射用水製造装置の提案を進める。加えて、エンジニアリングプロセスの改革にも注力するとともに研究開発面では、より一層の純度アップ、分析感度アップを加速させるほか、環境貢献もアップさせ、環境配慮型製品の導入を進める。財務面では資本コストを意識しつつ、ROE向上につながる施策を実行していく方針である。これらにより、持続的な企業価値向上と社会的価値創出を両立することを目指している。引き続き注目していきたい。
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