*13:08JST Iスペース Research Memo(8):割安なEV/EBITDA倍率も再評価される可能性 ■同業他社比較

アフィリエイト運営会社の大手はインタースペース<2122>のほかファンコミュニケーションズ、アドウェイズ、バリューコマース、リンクシェア・ジャパン(株)(楽天グループ<4755>の子会社)、レントラックスの5社が挙げられる。売上高の規模はその他の事業も展開しているため各社ばらつきがあるものの、同社も含めた6社合計のアフィリエイトサービスにおける業界シェアは約6割、うち同社は1割弱のシェアと見られる。

同業他社の特徴について見ると、ファンコミュニケーションズは2023年3月時点で「A8.net」のパートナーサイト数が約325万サイト、稼働広告主ID数が3,341件と、パートナーサイト数では業界最大規模となっている。中小企業向け広告ビジネスを長く提供しており、EC分野の比率が比較的高いことが特徴だ。業績面では、ここ数年はスマートフォン向け広告サービス「nend」の事業縮小やコロナ禍の影響もあり減収減益基調が続いていたが、2022年12月期に営業利益で増益に転じ、2023年12月期も前期比5.5%増と2期連続の増益を見込んでいる。

アドウェイズは、アドプラットフォーム事業(アドネットワーク広告配信サービス、アフィリエイト広告サービス)とエージェンシー事業(国内外における広告代理店)を展開している。モバイル向け比率が7割弱(対国内広告売上高)と高く、ゲームや電子コミック系に強みを持つ。特に、ここ数年は機械学習によるスマートフォン向けアドネットワーク広告配信サービス「UNICORN」の売上が拡大しているほか、損失が続いていた海外事業も2021年12月期に黒字化するなど業績は順調に成長している、2023年12月期も「UNICORN」やアフィリエイト広告サービスがゲーム、金融カテゴリー向けに伸張し、1ケタ台の増収増益となる見通し。

バリューコマースは、マーケティングソリューションズ事業(アフィリエイトサービス)とECソリューションズ事業を展開している。マーケティングソリューションズ事業の業種別売上構成比は金融分野が3割と最も高く、そのほかは幅広い業種をバランスよく手掛けているのが特徴だ。パートナーサイト数は2023年3月末で78万サイト、広告主数(ID数)は773件となっている。2023年12月期第1四半期のマーケティングソリューション事業の業績は2ケタ減収減益となった。金融分野の広告主の出稿方針変更と広告予算の抑制により大幅に減少したことが主因だ。この影響が通年で響くことから、2023年12月期業績も唯一、2ケタ台の減収減益見通しとなっている。

レントラックスは、成果報酬型広告サービス事業と中古建設機械マーケットプレイス関連事業を主に展開している。成果報酬型広告サービス事業の業種別売上構成比は、金融が23/4Q、不動産が23/4Qと2つの業種で過半を占めているのが特徴だ。2023年3月期はカードローンなどの金融業界及び自動車買取業界を中心に伸長し、同事業の業績は2ケタ増収増益となった。2024年3月期も基調に変化はなく2ケタ増収増益を計画している。営業利益は2020年3月期の179百万円から2024年3月期は1,310百万円と4年間で7倍超に急成長することになり、成長率で見ると競合のなかではトップクラスとなっている。

株価指標について見ると、同社の株価(2023年5月18日終値)は2023年9月期の予想PERで8.5倍、EV/EBITDAで0.6倍と大手5社のなかでもっとも低い評価となっている。EV/EBITDAとは企業を買収する場合に、買収コスト(時価総額+有利子負債−現金及び預金・有価証券)を期間収益(営業利益+償却費)の何年分で回収できるかを簡易的に指標化したものとなり、倍率が低いほど買収コストを短期間で回収できることを意味している(=時価総額が過小に評価)。これらの株価指標が低いということは、株式市場での成長期待が低いことの裏返しでもあるとも言える。

とはいえ、同社においては2023年9月期の営業利益が6期ぶりに過去最高を更新する見通しであり、当時の株価水準が2,000円台で推移していたことを考えれば過小評価の感が否めない。弊社では、インターネット広告事業における海外事業の収益化やマーケティングテクノロジーサービス事業の展開、メディア運営事業における「ママスタ」に続く収益柱となるメディアや課金型収益モデルの育成など、中期的に収益成長が加速するシナリオを描ける蓋然性が高まってくれば、株式市場での評価も変わってくるものと考えている。2023年9月期はこうした成長基盤を構築するための投資期間となり、弊社では特に新たに事業取得したマーケティングテクノロジーサービス事業の動向に注目している。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

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情報提供元: FISCO
記事名:「 Iスペース Research Memo(8):割安なEV/EBITDA倍率も再評価される可能性