■決算概要

1. 2018年1月期第1四半期決算の概要
エニグモ<3665>の2018年1月期第1四半期の業績は、売上高が前年同期比11.1%増の1,066百万円、営業利益が同4.8%減の407百万円、経常利益が同5.4%減の404百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益が同2.7%減の252百万円と増収減益となったが、おおむね想定内の進捗である。総取扱高も前年同期比19.3%増の8,801百万円に拡大した。

主力の「BUYMA」(ソーシャルコマース事業)において、引き続き、会員数及びアクティブ会員数の伸びが業績拡大に寄与した。会員数は422万人(前年同期比30.9%増)、アクティブ会員数も91万人(同30.8%増)に拡大するとともに、ARPUについても、購入点数の増加等により好調に推移している。2016年1月期に実施したマスキャンペーン(TVCM等)以降、業績の伸びをけん引してきた「会員獲得施策」や「アクティブ率向上施策」に加えて、今期は「ARPU維持施策」に注力しており、会員数の伸びにやや鈍化傾向がみられるものの、ARPUが好調に推移しているところは内部施策の成果として評価できる。また、2016年7月から本格的なマーケティングを開始した「GLOBAL BUYMA」についても、まだ業績貢献の段階ではないものの、香港を中心に順調に立ち上がってきたようだ※1。ただ、メディア事業については、一時的な外部要因※2の影響により低調に推移した。

※1 重要なKPIであるコンバージョン(流入数に対する購入件数の比率)は国内と同水準になっているもよう。現地に根差したマーケティングが奏功している。
※2 2016年末に発生した他社キュレーションメディアサービスにおける問題に起因する関連市場での広告出稿数の一時的な減少。


一方、損益面では,インフラ強化に向けたエンジニア増員等による人件費のほか、メディア事業の落ち込み(44百万円の減益要因)やエニグモコリアの連結化(20百万円の減益要因)※が利益を圧迫したことで営業減益となった。

※前1四半期末を基準に連結化。したがって、当第1四半期のみ連結効果が発生する。


以上から、第1四半期の業績を総括すると、1)高い水準での業績の伸びを持続していることに加えて、2)今期の重点施策であるARPUが購入点数の増加等により好調に推移していること、3)「GLOBAL BUYMA」が香港を中心に順調に立ち上がってきたことがプラス要因となった一方、4)マスキャンペーン効果により大きく伸びた前期と比べると、会員数の伸び(新規会員獲得ペース)にやや鈍化傾向がみられること、5)メディア事業が一時的な外部要因により落ち込んだことがマイナス要因として挙げられる。もっとも、4)はおおむね想定の範囲内であること、5)も回復に向かっていること※から、第1四半期は順調に滑り出したと言って良いだろう。

※なお、メディア事業においては、2017年6月12日にファッション誌「4MEEE magazine」を創刊。Webとは違う表現で「4MEEE」の世界観を伝えることで、メディアとしての価値訴求やブランド力の向上にも取り組んでいる。


2. 四半期業績の推移
四半期業績推移で見ても、売上高は年末商戦による寄与があった2017年1月期第4四半期と比べるとマイナスとなっているが、前年同期比ではプラスであり、通常運行レベルでの業績の伸びは維持しているという見方ができる。営業利益率も、前述のとおり、特殊要因による影響を受けたものの、高い水準で推移している。

一方、会員数及びアクティブ会員数も順調に伸びているが、ただ、伸び率(前年同期末比)で見ると、マスキャンペーン効果を活かした2017年1月期と比べてやや鈍化傾向がみられる。

したがって、速度を落とさずに、もう一段上のステージへ向かうためには、規模や方法はともかくとして、何らかのカンフル剤は必要になるものと考えられる。また、前回のマスキャンペーンを業績拡大へ結び付けてきた経験則(認知拡大→新規会員の獲得→アクティブ率の向上等)を生かすことにより、投資回収の早期化(一時的な業績の落ち込みを最小限に抑えること)が可能となったことを勘案すれば、実施に向けたハードルは依然よりも低いと言える。もちろん、成長スピードの優先度やコスト効果、投資タイミング、予算へのインパクトなど、経営判断によるものであるが、マスキャンペーンの実施等を含め、今後の動きが注目される。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)



<NB>

情報提供元: FISCO
記事名:「 エニグモ Research Memo(3):会員数及びアクティブ会員数、ARPUがそれぞれ順調に拡大