■成長戦略

サン電子<6736>の中期的な成長戦略は、情報通信関連分野のグローバル展開によって、成長を加速することである。特に、モバイルデータソリューション事業のリーディングカンパニーとして世界市場の開拓を進めるとともに、新たな成長分野であるM2M事業、AR事業、クラウド事業等の強化を図るため、M&A を含めて先進的な技術への積極投資を行っていく方針としている。

注力分野に対する成長への取り組みは以下のとおりである。

(1)モバイルデータソリューション事業

MLC向けは、クラウド型のデータ移行サービスが台頭するなかで、これまでのデータ移行に対する需要が減退しているものの、故障診断機能(Diagnostics)の導入を主要キャリア向けに推進している。今後は、中古買取りなどを含めた機能充実やCellomatとの連携により利便性を高めるとともに、国内新規顧客開拓(MVNOなど)により、成長を加速させる方針である。

フォレンジック向けは、世界的な需要の拡大に対応することで再び成長軌道に乗せる計画である。特に、独自技術をさらに強化するとともに、インターポールとのパートナー契約締結をはじめとしたトレーニングプログラムの充実や、新製品・新サービスの開発(UFEDしかできない機能の強化)などにより事業拡大を目指す。

(2)その他事業(M2M、ゲームコンテンツ、新規等)

M2M事業については、BacsoftのIoTプラットフォームとの連携によるワンストップサービスの提供のほか、高い品質や提案力により差別化を図ることで、国内での本格導入を推進している。特に、国内においては裾野拡大に対応することにより持続的な成長を目指す方針である。また、Bacsoftにおいても世界展開に向けて販売チャネル及びマーケティング強化を図っている。

AR事業については、Infinity ARの開発プラットフォーム及びLumusの高性能のディスプレイユニットとの連携により、3社の強みを生かした企業向け現実拡張システム「AceReal」(メガネ型のウェアラブルコンピュータとAR技術を組み合わせたトータルソリューションシステム)の提供に向けて準備を進めている。ハード性能の高さや独自のAR技術、優れたガイダンス性に特長があり、製造業、メンテナンス業、医療、教育などにおけるフィールド作業の効率化やアミューズメント施設のアトラクションでの利用などを予定している。さらには、AR技術を軸として、M2M(メンテナンス業務支援)やエンターテインメント(デジタル情報の現実への展開)など各事業とのシナジー追求により、新たな価値の創出にも取り組む。前述のとおり、この下期での実証実験開始により試作売上高を見込んでいるが、2018年3月期以降の本格的な業績貢献を目指しているようだ。

また、VR分野においても、2016年10月に発売開始した「PlayStation ®VR」向けコンテンツの開発を進めており、2018年3月期でのタイトル発売(オンライン対戦型ゲーム)を予定している。今後は、ゲームコンテンツ事業についても次世代技術を活かす機会が拡大するものと考えられる。

弊社では、モバイルデータソリューション事業が成長軌道に戻ってきたことから、圧倒的な技術力や機能性を生かして、世界規模で拡大している需要(安全・安心に対する社会的要請)をいかに取り込んでいくのか、その道筋はもちろんのこと、M2M事業 及びAR事業 など新たな成長分野における収益源の育成や収益モデルの転換(ストックビジネスへのシフト)に注目している。特に、導入実績が増えてきたM2M事業の成長スピードやプラットフォーム化への進展のほか、これからの分野であるAR事業についても、スマートフォンの次はウェアラブルと言われているなかで、その重要なカギを握る技術であることから、将来的なポテンシャルは非常に大きいものと期待している。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)



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情報提供元: FISCO
記事名:「 サン電子 Research Memo(9):企業向け現実拡張システム「AceReal」の提供に向け準備を進める