国内景気の回復に伴い、先月後半にかけて米国債券市場では消費者物価の大幅な上昇に対する警戒感が高まっていた。インフレ進行のリスクを回避するためのインフレ連動債(TIPS)に対する需要も一時期堅調だった。TIPSの残高が増加し、市場流動性が高まったことも関係あるとみられているが、直近で発表されたインフレ関連の経済指標は予想を上回ったことや、バイデン政権による巨額の財政出動が投資家のインフレ期待を高めたこともTIPSの需要増加につながっていたようだ。

ただ、米連邦準備制度理事会(FRB)は「インフレ加速(インフレ率の上昇)は一時的な現象」との立場を変えていないため、量的緩和策の縮小についての議論をすみやかに開始することはないとみられている。TIPSの需要は大きく落ち込んでいないが、インフレ進行に対する過剰な警戒感は低下した。FRBは中長期的な観点で物価動向を観察しており、ある市場参加者は「数カ月程度の物価上昇はノイズと捉えており、金融政策の変更を促す要因にはならない」と指摘している。また、市場参加者の間からは「バイデン政権は大規模な増税を実施する可能性があることは、量的緩和策の早期縮小を妨げる要因になる」との声も聞かれている。5月の雇用統計は事前予想をやや下回る内容だったことから、金融緩和策の縮小に関する議論が開始されるのは「早くても10-12月期になる」との見方も出ている。

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情報提供元: FISCO
記事名:「 NYの視点:金融緩和策縮小に関する議論開始はいつ?