2021年4月5日の読売新聞は「日本とドイツ両政府は、初めてとなる外務・防衛閣僚級会合(2プラス2)(日本政府はこれまで、米国、英国、豪州、ロシア、フランス、インドネシア、インドの7カ国と会合実施)を4月中旬にテレビ会議方式により開催すると、複数の政府関係者が明らかにした」と報じた。中国の海洋進出を念頭に「自由で開かれたインド太平洋」に向けた連携や、安全保障分野での各種協力について議論する模様だ。ドイツは昨年9月に新たな外交戦略「インド太平洋ガイドライン」を策定し、年内にフリゲート艦のインド太平洋への派遣を決定した。日独両政府は、外務・防衛閣僚級会合に先立ち、2021年3月22日、茂木敏充外務大臣とイナ・レーペル駐日ドイツ大使が、相互に提供を受けた情報を国内法に従い保護・管理する「情報保護協定」に署名している。この協定締結により、テロやサイバー領域での日独のより緊密な協力が可能となる。

一方、2021年3月30日に外務省は「茂木外務大臣及び岸信夫防衛大臣は、東京でルトノ・マルスディ・インドネシア共和国外務大臣及びプラボウォ・スピアント同国防大臣との間で、第2回日インドネシア外務・防衛大臣会合を実施した」と発表した。会合では「防衛装備品・技術移転協定」が署名され、即日発効された。中国の強引な海洋進出に深刻な懸念を表明し、東シナ海及び南シナ海での一方的な現状変更の試みに対し、法の支配に基づく自由で開かれた海洋秩序の重要性と国連海洋法条約など国際法の尊重について一致した。

さらに、2021年3月16日には、アントニー・ブリンケン米国務長官及びロイド・オースティン国防長官がバイデン政権の主要閣僚初の外国訪問先として日本を訪問し、茂木外務大臣及び岸防衛大臣と日米安全保障協議委員会(日米「2+2」)を開催した。4閣僚は、日米同盟がインド太平洋地域の平和、安全及び繁栄の礎であり続けることを確認し、日米両国の強固な結束を示した。そして中国による海警法に関する深刻な懸念の表明、尖閣諸島に対する日米安保条約第5条適用の再確認及び日本の同諸島に対する施政を損なおうとする一方的な行動に反対することを確認した。また、南シナ海における中国による不法な海洋権益の主張及び活動への強い反対を表明した。中国は「日米2プラス2」の成果文書に強烈な不満を示し、「日本は米国の戦略的属国に成り下がった」と日本を非難している。

2021年2月3日にも4回目となる「日英2プラス2」がテレビ会議方式実施され、(1)日英を取り巻く安全保障環境の変化への対応、(2)地域の安全保障の維持及びルールに基づく国際秩序の維持、(3)経済的、軍事的手段による地域の他者に対する威圧の試みに反対するコミットメントの確認などを行っている。

このように、本年2月以降英国、米国、インドネシアそして今回ドイツとの間で2国間協議を実施し計画しているが、強固な2国間関係が進展することは、我が国の安全保障にとって大きな利益をもたらすことは間違いないであろう。特に日米同盟は、現状の日本の安全保障には不可欠な2国間関係であると言えよう。しかしながら、価値観を共有する戦略的パートナーとして、多くの国々と各種の防衛協力を推進することは、東シナ海、南シナ海で一方的な力を背景とした現状変更を試みようとする中国への強いけん制になるのではないだろうか。


サンタフェ総研上席研究員 將司 覚
防衛大学校卒業後、海上自衛官として勤務。P-3C操縦士、飛行隊長、航空隊司令歴任、国連PKO訓練参加、カンボジアPKO参加、ソマリア沖・アデン湾における海賊対処行動教訓収集参加。米国海軍勲功章受賞。2011年退官後、大手自動車メーカー海外危機管理支援業務従事。2020年から現職。

写真:代表撮影/ロイター/アフロ

<RS>
情報提供元: FISCO
記事名:「 進展する2国間協議【フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議】