イベントや展示、装飾などで使われた花の中には、短期間で役目を終え、そのまま廃棄されるものも少なくない。こうした「フラワーロス」は、花き業界における課題の一つとなっている。


その一方で、廃棄予定の植物を別の素材として再利用しようとする動きも出ている。


アトリエ朱雀を主宰する大川春雪氏は、植物を炭化させ、作品として再構成する「炭をいける®」という表現に取り組んでいる。いけばなの経験を背景に生まれたというこの手法は、廃棄される植物をアートへ転換する試みの一つだ。


資源循環とアートは、どこまで両立できるのか。大川氏に活動の背景を聞いた。



なぜ植物を「炭」にするのか


大川氏はいけばな(草月流)をルーツに持ち、幼少期から祖母が花をいける姿を見て育ったという。


創作の転換点になったのが、オーストラリアに自生する植物「バンクシア」との出会いだった。


一部のバンクシアには、山火事などの熱をきっかけに種子を放出する性質を持つものがある。大川氏は、火を経た植物の姿から着想を得て、植物を炭化させる表現を始めたと話す。


一般的ないけばなでは、生きた植物の形や時間による変化も作品の一部となる。一方、植物を炭化すると、色や質感は大きく変わり、通常とは異なる素材として扱うことができる。


さらに、使用後の花材などを活用できれば、廃棄予定だった植物に別の用途を与えることにもなる。


ただし、こうした取り組みがフラワーロス全体の削減につながる規模になるかは別の問題だ。アートとして活用できる量には限りがあり、廃棄問題を解決する手段というよりも、素材の再利用方法を考える一例として捉える必要がある。



「捨てられる素材」を作品にする意味




大川氏の作品には、植物以外の素材も使われている。


その一つが真綿だ。大川氏によれば、自身の家系がかつて製糸業を営んでいたこともあり、絹や繭は身近な素材だったという。


「炭をいける®天衣無縫シリーズ」では、用途が限られる繭から引いた真綿と、炭化させた植物を組み合わせている。


ここでも共通するのは、これまで別々に扱われてきた素材を組み合わせ、作品として再構成する考え方だ。


近年は、廃材や不要品を新たな製品や作品へ転換するアップサイクルの考え方も広がっている。アートの世界でも、素材が持つ背景そのものを作品の一部として扱う例は珍しくない。


一方で、素材が「廃棄予定だった」というだけで作品の価値が決まるわけではない。最終的には表現そのものがどのように評価されるかが、アートとして継続するうえでは重要になる。



海外展示で問われる「環境」と「アート」の関係


大川氏は2024年、「WORLD ART DUBAI」や台北で行われた「Japan Art Week in Breeze」など、海外の展示会にも出展したという。


環境問題やサステナビリティへの関心は世界的に高まっており、廃棄物や再生素材を取り入れた作品も国際的なアートシーンで見られるようになっている。


ただし、環境性を打ち出す作品には別の問いも生まれる。


作品制作や輸送、展示そのものにもエネルギーや資材が必要になるため、「廃材を使っている=環境負荷が低い」と単純に評価することはできない。


また、アート活動を継続するには、作品販売や展示機会などを通じて経済的な基盤をつくる必要もある。


環境への配慮と、アーティストとして活動を続けるための事業性。その両方をどう成立させるかは、サステナビリティをテーマにするアート全般に共通する課題だ。



フラワーロスを「見える化」する役割


廃棄される植物を炭化して作品にするだけで、花き業界全体の廃棄量を大きく減らせるわけではない。


それでも、普段なら捨てられてしまう植物が作品として展示されることで、「花は使い終わった後どうなるのか」という問題を考えるきっかけにはなり得る。


フラワーロスへの対応には、生産量や流通の見直し、需要予測、再販売、堆肥化など、さまざまな方法が考えられる。アートによる再利用も、その選択肢の一つだ。


大川氏の「炭をいける®」は、いけばなの技法と廃棄予定の植物という異なる要素を組み合わせた表現である。


それが資源循環の実践としてどこまで広がるのか。それとも、廃棄問題を社会に伝える表現として定着していくのか。今後は作品そのものの評価とともに、その役割も問われていくことになりそうだ。




【取材協力】
アトリエ朱雀
主宰 大川春雪
https://okawa-shunsetsu.com/


情報提供元: TREND NEWS CASTER
記事名:「 廃棄される花を「アート」に変えられるか フラワーロスと資源循環の新たな試み