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7月初旬に発生した西日本豪雨では、河川の氾濫が相次ぎ西日本各地で大きな被害が出ました。
いつ発生するか分からない災害に普段から備えるのは中々難しいものですが、ARによって実際の洪水を疑似的に再現することで、防災意識を向上する取り組みが登場しました。
愛知工科大学工学部の板宮朋基(いたみや ともき)教授は、実際の洪水の様子をARで再現したアプリの動画をYouTubeおよびTwitterにて投稿しています。
板宮教授はVR/ARを活用した防災教育や、医療分野に関するアプリ開発などを行っていますが、今回公開した動画はネット上でも大きな反響を呼んでいます。
自分の目の前の空間に #ハザードマップ や警報の情報を重ねて表示させてみると、誰でも危機感を抱いて直ちに避難するようになるのでは。この先起こる現実をはっきりと可視化しないと、人は動かないのでは。#防災#DisasterScope#拡張現実#ARpic.twitter.com/ODuXJuVIxr
—Tomoki Itamiya 板宮 朋基 (@t_itamiya) July 13, 2018
動画では、部屋の中に濁流が押し寄せて、水深が0.5メートルから1メートル、やがて2メートルへと達していく様子が確認できます。
家の中に濁流が流れ込み、木材や破片などが転がりながら押し寄せて、身長の低い子供が濁流にのみ込まれ、あっという間に水位が自分の身長よりも高い位置にまで上昇する様子を体験できます。
板宮教授が投稿したツイートは既に1万回以上リツイートされており、Twitter上で大きな反響を得ています。
なるほど、ARってこういう使い方もあるのね。確かに数字だけだと想像しにくいからな。 https://t.co/3oDYILzsBp
—J!LL (@bio_jill) July 15, 2018
これ凄いな。1メートルって聞いてもピンと来ないけど分かりやすいな
—あちぴん (@ankokokoko) July 15, 2018
これイイですね、アプリがあったら欲しいです!
ハザードマップで調べてはいるけど、可視化した方がわかりやすいですねぇ、これ凄い!
—八雲 (@fudaki) July 15, 2018
水位1メートルの洪水、と聞いただけではいまいちピンと来ませんが、AR技術を利用して、実際の水位や洪水の様子をより視覚化したことによって、どれだけ危険なことなのか、体験的に知ることができます。
このARアプリ「DisasterScope」はスマートフォンで体験することが可能で、紙製のゴーグルにデバイスを差し込むだけで手軽に使用することができます。
小中高校などでの避難訓練や、自治体主催の防災イベントなどで活用することが可能で、多人数で同時に体験することも可能です。
また、この「DisasterScope」はすでに実用化も進んでおり、東京都三鷹市の小学校をはじめとして、避難訓練のツールとして使用されているようです。
ありがとうございます。これはスマホのアプリでして、東京都三鷹市の小学校では避難訓練で実用しています。 pic.twitter.com/qSB8KYRbBH
—Tomoki Itamiya 板宮 朋基 (@t_itamiya) July 14, 2018
この「バーチャル避難訓練」を通して、ARによる実寸大の体験と、ゴーグルを用いた没入型教育を繰り返し行うことで、必要な防災対策や、災害時の避難行動がより身に付きやすくなると、板宮教授はメリットを挙げています。
「DisasterScope」はスマホで手軽に使用できるので、自宅や学校、職場などで毎日使用できるなど、使いやすさもメリットとして挙げることができます。
ARによって疑似的に体験を繰り返すことで、「経験」として学習することが可能になり、その結果、いざ災害が起きた際に反射的に身体が動くようになります。
こうして、率先的に避難できる人が増えることで、地域防災力の向上につながると、板宮教授は語っています。
「可視化」→「体験化」→「経験化」です.#バーチャル避難訓練#AR
—Tomoki Itamiya 板宮 朋基 (@t_itamiya) July 15, 2018
また、災害が起きてから実際に避難行動に移るまでに、混乱やパニックなどによって時間がかかってしまうという問題もありますが、ARによって自分の目の前にハザードマップや警報の情報が重ねて表示されることで、危機感を抱いて直ちに避難できるようになるのでは、とも語っています。
「DisasterScope」は、グーグルのARプラットフォーム「Tango」に対応したスマートフォンで使用可能で、上記の避難訓練ではTango搭載の「ASUS ZenfoneAR」を使用しています。
Tangoは高精度な空間認識機能を備えており、ハイクオリティなAR機能を使用することができますが、対応しているスマートフォンが限られているという点があります。
そのため、今後はより普及率の高いグーグルのARプラットフォーム「ARCore」にも対応していく予定とのこと。「Tango」に比べると精度は劣りますが、ARCoreは一般的なAndroid端末でも使用できるため、より高い普及率が見込めます。
「DisasterScope」は洪水の他にも火災時の状況をARで再現することもできます。
実際の火災時に建物の中が煙で充満している状況をリアルに再現しており、立ち上がると煙が濃くなり、しゃがむと薄くなることを実感できます。
アプリ #DisasterScope は,浸水以外に #火災 による #煙 の疑似体験もできます.#スマホ の高さを感知して,天井の方は煙が濃くて床の方は薄い状況を再現できます.煙を吸わないようにしゃがんで逃げる必要性を実感できます.#AR#避難訓練pic.twitter.com/Cr3ZXQAFj1
—Tomoki Itamiya 板宮 朋基 (@t_itamiya) July 15, 2018
このように、VRやARを用いることによって災害や火事、事故などを疑似的に体験することができるので、対処スキルや、防災意識の向上に役立てることができます。
VRやARでは、まるで実際に起こっているかのように臨場感のある体験を作り出すことができるので、知識のみの学習でなく、体験を通して学ぶことができます。
このようなVR/ARが持つ特質は、ゲームやエンタメだけでなく、事故防止や防災意識の向上などにおいても大きなメリットを発揮しそうです。
「DisasterScope」のようにスマホで手軽に体験できるアプリであれば導入もしやすく、かつ使いやすいので、学校や職場での避難訓練やイベント時での活用などにおいてニーズがあります。
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