「精巧な物を作れる巧みな技術があることが伝わってほしい……」と切なる思いをSNSに投稿したのは、島根県でハンコの製造販売をしている永江印祥堂の公式アカウント。

 投稿された写真には、1円玉よりも小さい丸の中に108もの文字が彫り込まれた「寿限無のハンコ」が写っています。凄すぎる……。職人の技術にただただ感嘆。

 寿限無とは、落語の有名な前座噺の題目。子どもが生まれた父親が、お寺の住職に名前の相談をしたところ、提案してもらった縁起の良い言葉をすべて採用してしまい、非常に長い名前になってしまったという話です。

 その名前は「寿限無 寿限無 五劫のすりきれ 海砂利水魚の水行末 雲来末 風来末 食う寝るところに 住むところ やぶらこうじの ぶらこうじ パイポ パイポ パイポの シューリンガン シューリンガンの グーリンダイ グーリンダイの ポンポコピーのポンポコナの 長久命の長助」。

 子ども時代に、早口言葉として楽しんだ方も多いのではないでしょうか。

■ 「寿限無のハンコ」を作ったのは2022年10月

 永江印祥堂が「寿限無のハンコ」を作ったのは2022年10月。きっかけは2022年10月12日の投稿。印章業界を少しでも盛り上げようと、「すごいの彫れた」と87文字が彫られたハンコの写真を投稿したこと。

 ちなみに「こんにちは。島根県にある小さなハンコ屋が1.2センチの印鑑の中で限界の文字数に挑戦しています。今回は87文字に挑戦。しっかり読めていますね!これが職人の技術なんです!すごいでしょ。」と彫られています。

 その際、投稿を見た人から「もっと多い文字が彫れますか?」「寿限無は彫れますか?」などの声をもらい、「寿限無のハンコ」にチャレンジすることを決意。2022年10月24日に「ご注文の品です」と投稿しました。

 「寿限無のハンコ」には、コメント欄でも多くの人がその職人の技術を称賛。しかし、ごく一部の人から「寿限無のハンコはいらないw」などと心無いコメントが送られて来たため、冒頭の言葉に至ったわけです。

■ 職人の技術とこだわりを結集させて完成

 ハンコを作るにはいくつか工程があり、「寿限無のハンコ」には20年以上の経験を持つ職人数名が参加。それぞれの技術を結集して作られました。

 完成までにかかった時間は、通常の印章の10倍。読みやすく、且つ彫刻しやすいように、「文字の配列」や「角数が多い文字」、「濁点のある文字の微妙な大きさと形」にこだわって編集したそう。

 さらに捺印する際、綺麗に押せることにもこだわり彫刻。最後は綺麗に彫られているか、美しく捺印ができるかなどをチェックして手作業で仕上げたそうです。

 なお、職人の技術やこだわりがたくさんつまった「寿限無のハンコ」は購入可能。永江印祥堂の公式オンラインショップや通販サイト「BASE」で販売されています。価格は12mmが税込1万9800円、15mmが税込2万2000円、18mmが税込2万4200円です。

<記事化協力>
「永江印祥堂」公式Twitter(@nagaeinsyoudou

(佐藤圭亮)

情報提供元: おたくま経済新聞
記事名:「 島根のハンコ屋が文字数の限界突破 108文字の「寿限無のハンコ」に感嘆