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新型コロナウイルスにより、とりわけ大きな影響を受けた業界のひとつが「飲食業」。緊急事態宣言では、時短営業要請や酒類提供の自粛などで、多大なマイナスの影響を受けました。
それは宣言が解除され、徐々にかつての「日常」に戻りつつある昨今においても、引き続き危機に瀕しています。現状について投稿したレストランオーナーの投稿に、注目が集まっています。
「もし無くなって欲しくないレストランがあったら今行ってあげてください。
今の飲食業界とくにレストラン業態は未曾有の危機に瀕しています理由は様々ですが
・コロナの蔓延
・連日の猛暑
・緊急事態宣言が出ていない
が、あります」
投稿したのは、イタリアワインのアライさん(以下、アライさん)。東京都府中市と吉祥寺にて、イタリア料理店を経営している人物です。
現在32歳のアライさんは、飲食業に携わって今年(2022年)で14年目。東京都内のレストランで12年働いたのち、2020年に府中にイタリア料理店をオープンしました。
一方でそれは、コロナ禍真っ只中で独立をしたという意味でもありました。オープン準備は新型コロナウイルス感染症が騒がれる時期より前、2019年11月に開始されました。お店が決まり、人もあつめて、着々と準備をすすめていく中で、最初の緊急事態宣言が発令。
先の1号店の開業日は1回目の緊急事態宣言が解除された日である5月25日。開業1年で4割、3年で7割が閉店に追い込まれるという飲食業において、とびきりの逆風を受けての船出でした。
何とか荒波も越え、2号店もオープン。開業3年目を迎え、一定の見通しが立ったのかと思いきや、決してそんなことはないという意味を込めたのが今回の投稿でした。リプライ(返信)では、「コロナの蔓延」「猛暑」「緊急事態宣言は出ていない」という3つの観点から、理由について述べられています。
「まずはコロナ、6波以前は『感染しないための自粛』『緊急事態宣言による禁酒』のため足が遠く、キャンセルするが主な理由でしたが今は自分や連れが『感染者もしくは濃厚接触者』になることによってキャンセルするという事例が圧倒的に多いです。爆発的に感染者数が増えてることを実感します」
直近では「オミクロン株」の変異型が猛威を振るうコロナ禍が、経営に大きな影響を与えているといいます。感染者が爆発的に増加すると、それに合わせて“自粛”を選択する方が多いようです。
ちなみに今回、飲食店の中でも「レストラン」に関して発信されていますが、その定義づけはというと、「ある程度の金額をお客様にいただき、ゆっくりと食事をしてもらうために従業員を雇い、仕入れた食材を時間をかけて仕込みをしているお店」とのこと。
「連日の猛暑、外出すると命の危機になりそうな状態では誰もランチは食べに来ません。当たり前ですね……。コロナも猛暑も個人経営レストランのお客様の主な年齢層を狙い撃ちするようにレストランに行けない理由になっています、特に地域の常連様が多いタイプのお店は本当にしんどいと思います」
6月の時点で猛暑日を記録するなど、例年以上の盛夏となっている2022年ですが、その影響で外出を控える方が増えているようです。
筆者も先日、所用で終日外出をしましたが、仕事とはいえ炎天下の中で過ごす行為は、著しい体力の消耗を招きました。こまめな水分補給など、万全に万全を期した対策は必須です。
しかしそれは、「イベント」だから行えること。代用可能な「外食」に関しては、自然と足が遠のくのも無理がない話かもしれません。
「そして『緊急事態宣言が出ていない』ですが、緊急事態宣言による自粛要請はしっかり守れば国から協力金をいただけました、不正受給する店があったりいただく額が普段の利益以上の額になる店もあったりで批判の槍玉にあがることも多かった協力金ですがこれでなんとか持ちこたえた店も多かったはずです」
「ウィズコロナ」を念頭においた施策についても、経営に大きな影響を与えると言います。先述の通り、緊急事態宣言下では、様々な「要請」がなされてきましたが、それは「協力金」という存在があってのものでした。
条件を満たさない飲食店は、それすら支給されずに混迷を極めましたが、現在のレストランはまさに今その状況に陥っていると言えます。庇護がなくなってもコロナ禍は継続していることもあり、アライさんが今回、「飲食業界特にレストラン業態」と記したのには、そういったあたりが要因と考えられます。
「『レストラン』はどこも営業が厳しい状態に感じていたので、少しでも関心を持ってもらえたらの投稿でした。ただ、かなり言葉を選んでの発信でしたが、やはり『協力金』に関してのイメージから否定的な意見も散見されましたね」
この「協力金」というのは、「新型コロナウイルス感染症拡大防止協力金」の略称ですが、条件を満たした店舗には1日6万円支給されるというものでした。これにより、多くの飲食店が危機を脱したのですが、一方で普段の営業の売上がそれ(6万)に満たない店では、“実力以上”のものを労せずして獲得できるということでもありました。そのため、一部では「協力金バブル」と揶揄される存在がいたことも事実です。
こうした事情もあり、今回のアライさんの投稿にも「協力金乞食」「協力金目当てなのだろう」「店の評価を『1』とつけてやる」などといった声が寄せられています。
アライさんのケースですと、オープンを決めたのはコロナ禍前。オープン予定時期がコロナ渦初期と重なり、やっとオープンできたときには外食自粛が求められる世の中に。また、オープンしたてで「休むとお客様が来なくなってしまう」と思い、なるだけ営業していたお店には、お客さんが来る来ないにかかわらず固定費をはじめ材料の仕入れ代など日々様々な費用が発生します。
「僕は協力金のおかげで、何とか閉店せずに済みましたので本当に感謝しています。ただ、店を開け、払うべきものを払っている人たちにとって、『1日6万円』というのは、決して多すぎる金額ではありません。実態を見ずに、『協力金をもらったお店』という言葉から、『その金で旅行した』『外車を買った』などと反射的に言われますが、そんなこと出来る余裕なんてないんです」
アライさんが語るように、多くの店にとって、「協力金」は一時しのぎでしかありませんでした。そもそも「不正受給」をしたのも、一部の話に過ぎません。そして、協力金を得ても、耐え切れずに廃業した飲食店も数知れずあります。筆者もこの頃繁華街に出向く機会が増えてきましたが、そこには「シャッター」となった建物が数知れずありました。店を畳むことになった知人も存在します。
とはいえ、昨今の原料高騰なども合わさり、そう簡単に出向けないのが客側の苦しいところでもあります。しかし今は、感染防止が十分に行き届くようになっています。
誰しもが持つ「推し」を消さないため、たまに顔を出すのもひとつの「コロナ対策」といえるかもしれません。
<記事化協力>
イタリアワインのアライさん(@vinvino_arai)
(向山純平)