パイナップルは捨てがちな部分に果肉の約5.5倍もの食物繊維が詰まっていた
カボチャの硬い皮と種、スイカの分厚い皮、ブロッコリーの太い茎。
料理をするとき、こうした部分は切り落とされ、そのままゴミ箱へ向かうことが少なくありません。
一方で、「皮や茎にも栄養がある」という話を聞いたことがある人もいるでしょう。
ところが、捨てられがちな部分にどれほどの食物繊維が含まれているのかは、多くがまだ分かっていませんでした。
そこで研究チームは、12種類の果物と野菜で、捨てがちな部分の食物繊維を測り、ふだん食べる部分と比べました。
あわせて、皮や茎を食べることを人々がどう感じているのかも、イギリスで聞き取っています。
私たちがゴミ箱に入れていた部分は、本当に「もったいない」ものだったのでしょうか?
研究の詳細は、2026年10月29日付で学術誌『International Journal of Food Sciences and Nutrition』に掲載されました。
皮も茎も「根から先っぽまで」食べるという考え方
野菜や果物の皮や種、茎まで料理に使う食べ方は、英語で「ルート・トゥ・ティップ(root-to-tip)」と呼ばれます。
「根から先っぽまで」という意味で、ふだん捨てがちな食べられる部分を生かそうという考え方です。
この食べ方には、2つの良い点が期待されています。
1つは食品のゴミを減らせること、もう1つは食物繊維を多くとれることです。
実際、果物や野菜を加工したときに出る皮などを使って、食品の食物繊維を増やす研究は行われてきました。
しかし、台所で切り落とされる部分そのものに食物繊維がどれだけあるのかは、多くが分かっていなかったのです。
そこで研究チームは、生の新鮮な果物と野菜を12種類用意しました。
それぞれを、ふだん食べる部分と捨てられがちな部分に分け、捨てられがちな部分の食物繊維の総量を測ったのです。
ふだん食べる部分の値には、食品のデータベースに載っている数字を使って比べています。
調べたのは、バターナッツカボチャやスイカ、パイナップル、ブロッコリー、キウイなどです。
パプリカやケール、フェンネル(ウイキョウ)、西洋ネギのリーキも含まれます。
研究チームは、人の気持ちも調べました。
イギリスの大学で食堂などを利用する教職員と学生、あわせて40人が参加しています。
6つのグループに分かれ、食物繊維や、皮・茎を食べることについて話し合ってもらったのです(フォーカスグループ)。
これは、この食べ方を広める取り組みを今後考えるための下調べです。
そして、まず分かったのは、捨てがちな部分が量の上でも小さくないことでした。
重さの割合で見ると、フェンネルで約25%、リーキでは約48%にのぼったのです。
果物と野菜12種類、捨てる側が食物繊維で上回ったのはいくつ?
結論から言うと、12種類のうち10種類で、捨てがちな部分の食物繊維がふだん食べる部分を上回りました。
つまり、調べたほとんどの果物と野菜で、私たちは食物繊維の多い側を捨てていたことになります。
いちばん多かったのは、バターナッツカボチャの皮と種です。
100gあたり9.25gの食物繊維を含んでいました。
重さのほぼ1割が食物繊維、という計算です。
いちばん少なかったのはスイカの皮で、100gあたり2.10gでした。
スイカの皮は、乾かして残る成分がわずか5.16%で、9割以上が水分です。
ふだん食べる部分との差がいちばん大きかったのは、パイナップルでした。
捨てがちな部分の食物繊維が、ふだん食べる果肉より453.7%多く、約5.5倍にあたったのです。
切り落としていた側に、果肉の5倍を超える食物繊維が入っていたわけです。
研究チームは、食物繊維の中身にも目を向けました。
食物繊維には、水に溶けるタイプ(水溶性食物繊維)と、溶けないタイプ(不溶性食物繊維)があります。
分析した捨てがちな部分では、どの果物と野菜でも、溶けないタイプの方が多くなっていました。
いちばん偏っていたのはスイカの皮で、食物繊維のおよそ9割が溶けないタイプでした。
いちばん偏りが小さかった縮れ葉のケールでも、溶けないタイプは約55%を占めています。
研究チームによると、ふだん食べる部分では、食物繊維のうち溶けないタイプが占める割合はおおむね3分の2から4分の3ほどです。
捨てがちな部分では、この割合がさらに高くなる傾向が見られたのです。
では、なぜ皮や種には溶けない繊維が多いのでしょうか?
研究チームは、植物の中でその部分が担う役目が関係しているとみています。
こうした部分は、茎のように植物の体を支えたり、皮のように中身を守ったりする役目を持っています。
スイカの分厚い皮や、カボチャの硬い外側、パプリカの種の硬い外側は、いわば植物の「よろい」です。
丈夫さが求められる部分ほど、水に溶けない繊維がしっかり詰まっている可能性があるのです。
少なかったブロッコリーの茎と、皮を食べたくなるきっかけ
ただし、捨てがちな部分がいつも多いわけではありませんでした。
ブロッコリーの茎と、フェンネルの芯や外側の層は、ふだん食べる部分より食物繊維が少なかったのです。
ブロッコリーでは、茎の食物繊維がつぼみの部分(花蕾〈からい〉)より28.4%少なくなっていました。
これは少し意外な結果です。
過去の研究では、乾かして粉にしたブロッコリーで比べると、茎の方が花蕾より繊維(粗繊維)が多いとされていたからです。
研究チームは、生のブロッコリーの茎はつぼみより水分が多いという過去の報告を挙げ、これが生の茎で食物繊維が少なく出た理由かもしれないとみています。
また、過去の研究で使われた粗繊維という測り方は、主にセルロース(植物の細胞の壁をつくるおもな成分)の量をとらえるものです。
そのため、今回の研究で使った測り方より、値がかなり低く出ることにも注意が必要だといいます。
同じ野菜でも、どんな状態で、どう測るかによって、数字の見え方が変わりうるということです。
生の茎で少なくなった理由は、まだはっきり確かめられたわけではありません。
次は、人の気持ちの側です。
話し合いに参加した40人のうち85%が、買う物を選ぶとき「よく」か「いつも」味を気にすると答えました。
値段を気にする人は75%、健康を気にする人は70%でした。
一方で環境や持続可能性については、55%が「ときどき」か「ほとんど、またはまったく」しか気にしないと答えています。
そして話し合いでも、皮や茎を食べる動機として強く響いたのは、環境より栄養、特に食物繊維でした。
ある参加者は「去年はみんなタンパク質に夢中だったけど、今年はみんな食物繊維に夢中な気がする」と話しています。
急にインスタグラムで、誰もが食物繊維の話をしているというのです。
一方で、皮に栄養が多いと知っていても、食べる気になれない人もいました。
ある参加者は「皮に食物繊維や栄養がたくさんあるのは分かっているんです。でも、皮を食べることには、何かしっくりこないところがあって」と話しています。
消化に悪いのではと心配する声もありました。
捨てることで、お金を払って買った栄養の「ほとんどを失っている」と気づけば、行動が変わるかもしれないという声も出ました。
そこで、栄養の良さを伝えて、消費者に「学び直し」てもらうことが提案されています。
ただし、SNSで広がる栄養の誤った情報を心配する声も上がりました。
「いかにも信頼できそうに話すけれど、実は主張を裏づける専門知識を持っていない」人がいるというのです。
そのため、こうした情報は信頼できる発信元から届けるべきだという条件も添えられました。
今回の研究が測ったのは、生の果物と野菜に含まれる食物繊維の量です。
皮や種を食べた人の体がどう変わるかまで確かめたわけではなく、話を聞いた相手もイギリスの大学に関わる40人です。
それでも研究チームは、皮や茎まで食べることが、食品のゴミを減らしながら食物繊維を多くとる助けになりうるとまとめています。
この結果をもとに、大学の食堂で皮や茎まで使ったメニューを出し、受け入れられるか、食物繊維をとる量が増えるか、捨てる食べ物が減るかを調べる研究も組まれました。
調べた中でいちばん食物繊維が多かったのは、まな板の端によけられがちなカボチャの皮と種だったのです。
写真で見る、研究で調べた果物と野菜
参考文献
The dietary fibre content of fruit and vegetable kitchen preparation waste and UK consumers’ dietary fibre-related attitudes regarding its consumption (International Journal of Food Sciences and Nutrition)
https://doi.org/10.1080/09637486.2026.2734852
元論文
The dietary fibre content of fruit and vegetable kitchen preparation waste and UK consumers’ dietary fibre-related attitudes regarding its consumption
https://doi.org/10.1080/09637486.2026.2734852
ライター
山下 浩介: むずかしい研究を、なるべく分かりやすく伝えたい。専門の言葉はふだんの言葉に置きかえて、身近な例で例える。それで「わかった」「楽しかった」と言ってもらえたら嬉しいです。
好きなのは、通学路や台所や日常の中にある科学。眠っているあいだに記憶が整理される話や、虫の鳴き方に意味がある話のように、読み終わったあとに誰かへ話したくなる研究を探しています。
編集者
ナゾロジー 編集部