同じ痩せ方でも、「ケトン食」が肝臓の健康を最も良くしたと判明
ダイエット中、朝いちばんに体重計に乗って、表示された数字に一喜一憂している人は多いでしょう。
けれども体重計が教えてくれるのは「何キロ減ったか」だけで、体の中で何が変わったかまでは映してくれません。
では、同じだけ痩せたのなら、どんな食事法で痩せても健康への効果は同じなのでしょうか。
米ワシントン大学医学部(セントルイス)の研究チームは、糖質の量がまったく違う3つの人気の食事法を比べる臨床試験で、この疑問を確かめました。
研究内容の詳細は2026年8月1日に『Cell Metabolism』にて発表されました。
目次
- 糖質の量がまるで違う3つの食事で痩せてもらう
- 肝臓で大きな差をつけた食事法はどれか
糖質の量がまるで違う3つの食事で痩せてもらう
試験に参加したのは、肥満があり、糖尿病予備群(糖尿病の手前の状態)と脂肪肝(肝臓に脂肪がたまりすぎた状態)もある大人55人です。
研究チームは参加者を無作為に3つのグループに分け、それぞれ違う食事法を続けてもらいました。
1つ目は、糖質(炭水化物)を極端に減らし、脂質を多くとる「ケトン食」です。
2つ目は、人気の食事法の1つである「地中海食」です。
3つ目は反対に、炭水化物を多くとって脂質を極端に減らした、植物中心の食事です。
以前ナゾロジーではこういう記事も紹介しています(高タンパクの食事が寿命を縮めることが判明!炭水化物は敵じゃなかった)
期間はおよそ5か月で、食事はすべて研究チームが用意しました。
さらに参加者は毎週、研究の栄養士と面談し、決められた食事をきちんと守れるように支えてもらいました。
その結果、中身がまるで違う食事なのに、3つのグループはいずれもはじめの体重のおよそ10%を落としました。
ここで研究チームが注目したのは、体重計には映らない血糖値(血液中の糖の量)や肝臓の状態です。
カギになるのは、血糖値の調整を助ける「インスリン」です。
インスリンは、肝臓に「血液へ出す糖を減らして」と合図を送る役目も持っています。
そして糖尿病予備群の大きな特徴は、このインスリンが効きにくくなっていることです。
そこで研究では、筋肉や肝臓がインスリンにどれだけきちんと反応するか(インスリンの効きやすさ)を測りました。
まず筋肉では、3つの食事のどれでも、インスリンの効きやすさがはじめより約50%高まっていました。
改善の幅がそろっていたことから、筋肉については食事の中身よりも、痩せたこと自体が大事だったと考えられます。
では、同じだけ痩せた人たちの肝臓でも、やはり差は出なかったのでしょうか。
肝臓で大きな差をつけた食事法はどれか
結論から言うと、肝臓で最も大きな改善を見せたのは、糖質を極端に減らしたケトン食でした。
肝臓はどの食事でもインスリンに反応しやすくなりましたが、その改善の幅はケトン食で2〜3倍も大きかったのです。
肝臓にたまった脂肪の減り方にも、はっきりした差が出ました。
5か月後、ケトン食のグループでは肝臓の脂肪が67%減ったのに対し、ほかの2つのグループではそれぞれ45%の減少でした。
肝臓が脂肪を新しく作り出す働きも、ケトン食で最も大きく下がっていました。
血糖値でも、同じような差が見られました。
24時間にわたって測った血糖値は、ケトン食でははじめより20%下がり、ほかの2つではそれぞれ8%の低下にとどまりました。
1日を通したインスリンの量は、ケトン食で74%、地中海食で44%、炭水化物の多い食事で27%減っていました。
ケトン食では糖質をほとんどとらないため、血糖値をおさえるのに必要なインスリンが少なくてすみ、すい臓(インスリンを作る臓器)が作る量も減るからです。
さらに、試験のあいだに糖尿病予備群から抜け出した人は、ケトン食で半数、地中海食で29%、炭水化物の多い食事で7%でした。
一方で、血液中のLDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)や、24時間にわたって測った血液中の中性脂肪などでは、3つのグループのあいだに差はありませんでした。
つまりケトン食の強みは、とくに肝臓の働きと血糖の調整に表れていたのです。
研究の筆頭著者であるピーターセン氏によると、脂肪肝は世界の肥満の大人のおよそ75%に見られ、慢性の肝臓病や肝硬変の原因として最も速く増えているといいます。
そのため今回の差は、脂肪肝が広く見られる肥満の人にとって、とくに大きな意味を持つ可能性があります。
ただし、ほかの2つの食事が効かなかったわけではありません。
3つの食事のどれでも、痩せたことによって体の状態は良くなっていました。
ピーターセン氏は「ほどほどの減量でも、代謝(体が糖や脂肪を処理する働き)に問題を抱えた人には一様に役立つ」と述べたうえで、「食事の選び方は、体重を減らすこと以上の健康の結果に影響するので、やはり大切だ」と話しています。
なお今回の結果は、肥満に加えて糖尿病予備群と脂肪肝をもつ55人を、食事をすべて用意し栄養士が支えるという条件で、約5か月調べたものです。
体重計の数字が同じでも、体の中で起きている変化まで同じとは限りません。
減量で大切なのは「何キロ痩せたか」だけでなく、「何を食べて痩せたか」でもあるのかもしれません。
とはいえ、目の前のラーメンに「きみは私の肝臓に何をするつもり?」と問いかけ始めたら、食事の楽しさまで減ってしまいそうです。
参考文献
Losing the Same Weight Didn’t Produce the Same Health Benefits (SciTechDaily)
https://scitechdaily.com/losing-the-same-weight-didnt-produce-the-same-health-benefits/
元論文
Effect of diet macronutrient content on the cardiometabolic response to weight loss: A randomized clinical trial
https://doi.org/10.1016/j.cmet.2026.07.020
ライター
山下 浩介: むずかしい研究を、なるべく分かりやすく伝えたい。専門の言葉はふだんの言葉に置きかえて、身近な例で例える。それで「わかった」「楽しかった」と言ってもらえたら嬉しいです。
好きなのは、通学路や台所や日常の中にある科学。眠っているあいだに記憶が整理される話や、虫の鳴き方に意味がある話のように、読み終わったあとに誰かへ話したくなる研究を探しています。
編集者
ナゾロジー 編集部