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そこで研究チームは今回、メガロドンの骨格の一部として発見されている脊椎骨の化石に着目しました。
特に、ベルギーで発見された11メートルにおよぶ胴体部分の脊椎の骨格化石と、デンマークで見つかった直径23センチメートルの脊椎骨が重要な手がかりとなりました。
チームはこれらの脊椎のサイズをもとに、現存する145種の現生ザメと20種の絶滅ザメの体長比率を分析することに。
その結果、メガロドンの頭部は全長の約16.6%、尾部は約32.6%を占めていた可能性があると推定されました。
そして、これらの比率から計算すると、ベルギー標本のメガロドン個体は全長16.4メートルに達し、デンマーク標本のメガロドン個体はなんと驚異の全長24.3メートルに達することが示されたのです。
これは従来の見積もりより4メートル以上も大きな推定値となります。
想像してみてください。
もしこのデンマークのメガロドンがこの世にいたら、学校の25mプールにすっぽり入るほどのデカさだったわけです。
加えて、メガロドンの新生児も生まれたときにはすでに全長3.6~3.9メートルに達していたことがわかりました。
これはホオジロザメの成体に匹敵するサイズです。
もう一つ、今回の研究で判明した興味深い事実は、メガロドンの体型についてです。
従来はホオジロザメのように、胴体から頭部にかけて丸々とがっしりした「ずんぐり体型」であると考えられていました。
ところが最新の流体力学モデルを用いた分析によると、メガロドンの体型はむしろ、現生の「ニシレモンザメ(学名:Negaprion brevirostris)」に近く、より細長く流線型であった可能性が高いと結論づけられたのです。
これは巨大な水生動物(ジンベエザメやクジラ類)が細長い体を持つことで流体力学的に効率よく泳ぐことができるという法則に基づいています。
今回の研究により、メガロドンの最大サイズや体型に関する新たな知見がもたらされました。
これにより、メガロドンの生態・成長パターン、さらには絶滅の理由についても新たな手がかりが得られる可能性があります。
特に、
・なぜメガロドンはここまで巨大になれたのか?
・どのような環境で生きていたのか?
・どのように絶滅へと向かったのか?
といった疑問の解明が期待されるでしょう。
また、メガロドンの生存戦略を理解することは、現存するホオジロザメや他の海洋捕食者の進化や生態系の変化を探る上でも重要な手がかりとなります。
太古の海を支配した巨大ザメの謎は、まだ完全に解き明かされていません。
今後も新たな研究や発見が続くことで、メガロドンの実像にさらに迫ることができるでしょう。
参考文献
Megalodon’s body size and form uncover why certain aquatic vertebrates can achieve gigantism
https://phys.org/news/2025-03-megalodon-body-size-uncover-aquatic.html
Megalodon may have grown up to 80 feet long — far larger than previous estimates
https://www.livescience.com/animals/extinct-species/megalodon-may-have-grown-up-to-80-feet-long-far-larger-than-previous-estimates
元論文
Reassessment of the possible size, form, weight, cruising speed, and growth parameters of the extinct megatooth shark, Otodus megalodon (Lamniformes: Otodontidae), and new evolutionary insights into its gigantism, life history strategies, ecology, and extinction
https://doi.org/10.26879/1502
ライター
千野 真吾: 生物学出身のWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部