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打毬は馬の上でスティックを持ってボールをゴールに投げ入れるというスポーツであり、現在のポロにかなり近いです。
当然庶民の多くは馬を持っていなかったということもあり、打毬は武士の間で行われていました。
庶民は打毬を真似てスティックでボールを打ち合う毬杖(ぎっちょう)というスポーツを行っていたものの、それは子どもの遊びとして捉えられており、大人がすることはあまりありませんでした。
また子どもたちの間では石を投げあう石合戦というスポーツが行われていました。石合戦は二陣営に分かれて川を挟んで石を投げあうというものであり、ルールは非常にシンプルです。
ただこの石合戦は5月5日の端午の節句に行われていたものの、怪我人が出ることは普通であり、死者が出ることさえ決して珍しくはなかったと言われます。
江戸時代にもスポーツ観戦は行われており、相撲観戦は庶民の娯楽として親しまれていました。
人気力士の浮世絵なども販売されており、現在のようなスポーツビジネスも行われていたのです。
また庶民たちは相撲を見るだけでは飽き足らず、辻相撲として自分たちも相撲を行っていました。
この辻相撲では激しい投げ技が行われて死者が出たり、観客同士の喧嘩が相次いで風紀を乱したこともあり、17世紀後半から18世紀前半の間に13回も禁止令が出されたのです。
それでも辻相撲は続いており、いかに人気を博していたかが窺えます。
また本来は武士の教養であった剣術も、平和な世の中になったことで実践的な剣術を使う機会が大幅に減ったこともあって、江戸時代を通してスポーツと化していきました。
当初は防具があまり発展しておらず、一流の剣士が実戦方式で稽古や試合を行ったら相手を殺しかねないということもあり、稽古は型稽古が中心であり、実力を披露する場合は演武というスタイルで行っていたのです。
しかし剣客の大石進が竹刀を現在の剣道に使われている竹刀に近い四つ割り竹刀を考案したことや耐久性に優れた防具が考案されたことにより、実戦形式の稽古や試合が可能になったのです。
幕末に入ると庶民の中でも剣術道場に通うものが出現し、北辰一刀流の玄武館や鏡新明智流の士学館、神道無念流の練兵館をはじめとする名門道場も生まれました。
こうした道場で剣術修業をした庶民の中には、尊王志士やそれを取り締まる新選組隊士になったものも多くいたのです。
さらに射るスポーツも行われており、楊弓(ようきゅう)という小型の弓を使った射的も行われていました。
この楊弓では的に矢を当てた場合に商品が貰えるという仕組みになっており、この商品は時代が下るにつれて徐々に豪華になっていきました。
また楊弓の競技場の矢場では矢を拾ったり客への応対をしたりする女性スタッフがいましたが、こちらは時代が下るにつれて客に対する売春行為をするようになりました。
そのため矢場は賭博場と売春宿を合わせたようなものすごく不健全な施設になり、幕府から幾度となく取り締まりを受けることとなったのです。
しかし幕府の取り締まりもむなしく何度もよみがえり、幕末には全盛期を迎えることとなりました。
一方で力比べをはじめとする原初的なスポーツも、江戸時代を通して行われていました。
具体的には重たい石を持ち上げて自分が持っている力を競い合う力石という行事が行われており、農村部だけではなく江戸の町でも何度も行われていたのです。
なお当時はしっかりとした規格がなかったこともあり、持ち上げる石の重さに関しては一概には言えないものの、江戸のある地域で行われていた力石では157.5kg~236.3kgの石で行われていたとのことであり、持ち上げるハードルはかなり高かったことが窺えます。
また綱引きも全国各地で行われており、江戸では毎年6月9日に隅田川に架けられている川の北側に住んでいる人と川の南側に住んでいる人で千住大橋にて綱引きが行われていました。
しかし綱引きの前に北組と南組の両チームが興奮状態になって闘争を始めるというが何度も続いたことにより、1830年代頃に綱引き大会が中止されたとのことです。
他にもどちらが速く走ることができるかを競い合う「かけくらべ」というスポーツもありました。
なお当時は現在のような計測器具がなかったということもあり、同時にスタートして先に到着した方を勝者とするルールで行われていました。
江戸時代のスポーツは現代と全く異なっているものや現代ではとてもできないようなものもあるものの、現代まで続いているスポーツや系譜を受け継いでいるスポーツもあり、こうしたところに歴史の面白さを感じます。
参考文献
近世における江戸庶民のスポーツに関する一考察
https://researchmap.jp/g0000208033/published_papers/19156983
ライター
華盛頓: 華盛頓(はなもりとみ)です。大学では経済史や経済地理学、政治経済学などについて学んできました。本サイトでは歴史系を中心に執筆していきます。趣味は旅行全般で、神社仏閣から景勝地、博物館などを中心に観光するのが好きです。
編集者
ナゾロジー 編集部