ドーベルマンの立ち耳って何?

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ピンと立った耳で遠くを見ているドーベルマンはとても凛々しいですね。カッコイイ犬種のひとつとして人気があるのがドーベルマンです。ところが、最近では耳が垂れているドーベルマンを見かけることがあります。

「あれ?ドーベルマンって耳が立っている犬種じゃなかったっけ?」と思う人もいるかもしれませんね。ドーベルマンといえば立ち耳のはずですが、垂れ耳のドーベルマンもいるということでしょうか。

実はドーベルマンの立ち耳は「断耳」といって手術によるものなんです。つまり、断耳をしなければそのまま大きな垂れ耳のドーベルマンが誕生するというわけです。どうしてわざわざ手術をしてドーベルマンの耳を立たせるようにしたのでしょうか?今回はドーベルマンの断耳について調べてみましょう。

ドーベルマンの耳はもともと大きな垂れ耳だった!

「ドーベルマンの耳は立ち耳である」というのが一般的な考え方です。いわゆる犬種スタンダードでもドーベルマンの耳は立ち耳であるとされているくらいです。ところが生まれてきたドーベルマンの子犬は垂れ耳なんです。しかも結構大きめの耳なので、見た目の雰囲気はよく知られているドーベルマンと少し違ってくるかもしれません。

立ち耳のドーベルマンは威厳があってちょっと怖いイメージがありますが、きれいな垂れ耳のドーベルマンは穏やかでかわいい雰囲気です。大きな垂れ耳がきれいに決まるといのですが、そうならないこともあるようです。というのは遊び好きの子犬の時期によく動き回るので、大きな耳がひっくり返ることがあるからです。

ひっくり返った耳をそのままにしていると半立ちになってしまうことがあります。そのため、矯正テープを張ってきれいな垂れ耳になるようにする飼い主もいるようです。自然のままに耳の形が決まるようにするか、矯正を加えてきれいな垂れ耳にするかは飼い主さん次第ということになりそうですね。

では、もともと垂れ耳のドーベルマンの耳を立ち耳にするようになったのはなぜなんでしょうか?

ドーベルマンの耳が立ち耳になった理由

ピンと立った耳が特徴のドーベルマンですが、これは断耳を行なっているからです。ドーベルマンの断耳はその作出目的と関係しています。

ドーベルマンが誕生したのは19世紀のドイツでのことです。ブリーダーであり税金徴収官でもあったカール・フリードリッヒ・ルイス・ドーベルマン氏が、ジャーマンシェパード、ジャーマンピンシャー、ロットワイラーなどを交配して生み出したとされています。

ドーベルマン氏はその仕事柄から大金を持ち歩くことが多く、そのために優秀な警備犬を必要としてドーベルマンを作出しました。警備犬は人間を守るために、時には危険を冒したり闘ったりする必要がありました。その際に弱点を作らないように断耳をするようになりました。オオカミや犬たちに耳を噛みつかれると痛みに負けてしまうからです。

断耳をして耳がピンと立つようになると聴こえが良くなるとも言われています。物音を鋭く聞き取ることは仕事柄大切なポイントでもあります。こうして噛まれたり捕まれたりしないように、そして鋭い聴力を得るために断耳が行われるようになりました。

耳だけでなく尻尾も弱点になることから、断耳に加えて断尾も行われるようになりました。これは生まれてすぐに尻尾を切り取ってしまう手術のことをいいます。こうして耳がピンと立って尻尾のないドーベルマンが誕生したのです。その後も警備犬や警察犬、軍用犬として危険と隣り合わせで活躍するようになったドーベルマンは断耳と断尾を行うのがスタンダードとなりました。

ドーベルマンの断耳について

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ドーベルマンの断耳はいつ頃どのように行うのでしょうか?断耳という言葉を聞いただけで痛そうですね。それに、断耳を行うのはドーベルマンだけではありません。断耳を行う犬種について、その目的についてもまとめますね。

断耳はいつ頃行うのか

ドーベルマンの耳は生まれた時からピンと立っていると思っていた人も多いのではないでしょうか。というのもドーベルマンの断耳は生後2か月から3か月までに行われるため、子犬が家にやってきたときにはすでに耳が立っていることが多いからです。ブリーダーや犬の専門家でない限り、このことを知っている人は少ないかもしれません。

断尾は生まれてから3日以内に行われると言われています。早めに行うことによって尻尾の切断部分がきれいに治るからです。ドーベルマンの子犬を迎えるころにはきれいな断耳、断尾がすでに行われていることが多いというわけです。詳しい説明がないと、ドーベルマンは立ち耳で尻尾がない犬種だと思ってしまいますね。

断耳は痛くないの?

子犬の時に手術で耳を切られるわけですが、痛くはないのでしょうか?断耳とか手術と聞いただけで痛そうなイメージがわいてきますよね。ドーベルマンのブリーダーである「葵ケンネル」さんによると、技術がしっかりとしている獣医さんが施術すれば子犬は痛みを感じることがないとのことです。その後のケアも指導に従ってしっかりと行えば、子犬が苦痛を感じることなく断耳が完了するそうです。

もちろん断耳の手術は麻酔をかけて行うのでその時は痛みを感じませんが、麻酔が切れた時が心配ですよね。当ブリーダーの説明によると、手術が終わって麻酔が切れた時も子犬は耳を切られたことすら気づかないほどだということです。断耳はきちんとした環境で行えば子犬に精神的、肉体的な苦痛を与えるものではないという考え方だとわかりますね。

断耳を行うその他の犬種

断耳を行う習慣があるのはドーベルマンだけではありません。犬種を挙げてみると、シュナウザー、ピンシャー、グレートデン、ボクサー、マンチェスターテリア、ボストンテリア、ナポリタンマスティフ、ブービエデフランダース、ブリュッセルグリフォンなどがいます。それぞれの犬種の写真を見てみると、なるほど耳がピンと立っていることがわかるでしょう。

断耳を行う理由

そもそもどうして断耳を行うようになったのでしょうか?ドーベルマンは優秀な警備犬として飼い主を敵から守るために弱点の耳を断耳するようになったことがわかりましたが、その他の犬種にはそれぞれの別の理由があります。

例えば、上記の犬種には狩猟犬または牧畜犬として活躍してきたものがいます。これらの犬種はオオカミやアナグマなどのどう猛な動物と闘う必要がありました。その際に、反撃にあって噛みつかれて致命傷を負わないように断耳が行われるようになったと言われています。

その後も犬同士を闘わせる闘犬、犬と牛を闘わせるブルベイティング、犬と熊を闘わせるベアベイティングといった見世物が盛んに行われるようになると、やはり致命傷を負わないように弱点となる耳を断耳するようになりました。闘犬といえばブルドッグ、ピットブルなどを思い浮かべますが、なるほど耳がピンと立っていますね。

現在では見世物として犬を闘わせることが禁止されるようになりましたし、狩猟犬や牧畜犬の需要もだんだんと減るようになったので、実用的な意味での断耳をする必要はありません。とはいえ、犬種スタンダードによって断耳される犬種だと定められている場合は、必要あるなしを問わずに断耳を行う習慣がそのまま残っています。

犬種スタンダードに従って見た目の美しさを追求する目的で断耳を行なっているため、現在では断耳に対して賛否両論があります。動物愛護の観点から断耳を禁止すべきだという意見があれば、耳の感染症を防いだり聴力を高めたりするという意見もあります。

断耳はどこでどのように行うの?

断耳について記述されている1678年の文献が存在すると言われているので、その歴史は古いということがわかりますね。当時は刃物をよく研いでから尖った形、または丸い形に耳を切り取ったようです。または、生まれたばかりの子犬の耳を手でねじりとるという方法がとられることもあったようです。かなり荒っぽい方法ですね。

現在では動物病院で獣医師によって手術が行われますが、すべての獣医師が断耳手術の技術を持っているわけではありません。というのは、断耳は病気に関わる手術ではなく美容整形の分野なので、獣医科で習うことはないからです。それぞれの獣医師が個々に身に着ける技術なので、断耳を行うことができるかどうかを確かめる必要があります。

また、断耳が行えるとはいっても獣医師によって技術の差があるので、きれいに断耳ができるかどうか、アフターケアはしっかりと行ってくれるのかを確かめてからお願いするようにしましょう。それぞれの犬種のブリーダーであれば、信頼のおける獣医師さんを紹介してくれるでしょう。

断耳は子犬に全身麻酔をかけて、耳介の2/3以上を切り取ります。それから切断した箇所を縫うなどして塞ぎ、イヤーパットや副木を使って固定します。最低でも1日は入院することになり、3週間から8週間で包帯が取れるとされています。アフターケアをきちんと行って、ピンと立ったきれいな立ち耳になります。

断耳の費用は?

断耳の費用は動物病院によって違いますが、相場は3万円~5万円くらいだとされています。しかし受診料や通院、アフターケアなどをすべて含めると15万円くらいになることも予想されます。断耳を行うと決めた場合はアフターケアを含めた総額を確認するようにしましょう。


情報提供元: mofmo
記事名:「 ドーベルマンの立ち耳って何のこと?断耳の手術は本当に必要か解説します!