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【日本ならいごとの旅 第1回】大和茶の産地で“世界一”に輝いた紅茶作りを学ぶ




はじめに


“地方消滅”が叫ばれて久しい昨今。しかし、だからこそ今、その土地ならではの手しごとや食文化、知恵を受け継ぎつつ、新たな取り組みに挑戦する人々の姿を、地方に見ることができます。「日本ならいごとの旅」では、その土地に行かなければ味わえない、人との出会いや学びをご紹介していきます。第1回のテーマは「紅茶」。紅茶と言えば、インドの「ダージリン」やスリランカの「セイロン」が有名ですが、実は“世界一”に輝いた和紅茶が、奈良にあることを知っていましたか? 国産紅茶の歴史は明治初期に遡り、輸出品として盛んに生産されていました。昭和33年にロンドンで開催された全世界紅茶品評会では、山添村の紅茶が最優秀賞を獲得。そんな世界一の紅茶作りを、大和高原で体験してみませんか?

text・photo:前田知里
大和高原に広がる世界一の茶畑

大和高原に広がる世界一の茶畑


奈良市内から田原、柳生を越え、山添村へ走ること約40分。奈良県大和高原には昔ながらの里山の風景が今に残り、田畑や茶畑が広がっています。第60回カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞した、河瀬直美監督の映画『殯(もがり)の森』のロケ地にもなりました。標高約120〜600mの高原地帯の気候は、夏は爽やかで、春は日差しをたっぷり浴びて暖かく、お茶の生産には最適の場所なのだそうです。

そんな大和高原で明治時代初期から盛んに生産されていた和紅茶は、昭和33年にロンドンで開催された全世界紅茶品評会で最優秀賞を獲得。世界一に輝きましたが、1970年代の貿易自由化で紅茶の生産は衰え、やがて、人々の記憶から消えて行きました。しかし「また、あの紅茶の味を復活させたい!」と声を上げた地元の人たちの努力によって、山添村の紅茶が復活しつつあります。 幻の紅茶「べにほまれ」とは?

幻の紅茶「べにほまれ」とは?


実は、和紅茶も烏龍茶も、緑茶と同じ木の茶葉を発酵させて作られるものです。高原いっぱいに広がる風景から、緑茶、烏龍茶、紅茶、番茶、三年番茶と、多種多様な茶が生産されています。国内で生産される茶の品種はほとんどが「やぶきた」と呼ばれる「中国種」ですが、セイロンやダージリンのような紅茶は「アッサム種」で、種が違います。そして、かつて世界の名だたる紅茶の名産地に並び、世界一に輝いた幻の紅茶品種が「べにほまれ」。紅茶に向いていると言われており、新芽が赤いのが特徴的です。

明治9年に、インドのヒマラヤ、アッサム、ダージリンから技師たちが持ち帰った茶の種から改良を重ね、やがて日本の風土に合う「国茶8号」が選抜されます。そして時を越え昭和22年、台湾で紅茶を生産していた川戸勉氏が帰国後、「国茶8号」に可能性を見い出し、10年かけて製茶技術を確立、「べにほまれ」を世に送り出しました。山添村で挿し穂されているのは、その川戸さんが残した品種だと言われています。山添村では、このべにほまれの挿し木を増やし、産地を復活させるのが今後の目標だといいます。

品種、それは、遺伝子に刻まれる記憶。先人たちが残した歴史のバトンは、時代を超えて受け継がれる味なのでした。 旧保育園「かすががーでん」で取り組まれる世代を超えた交流

旧保育園「かすががーでん」で取り組まれる世代を超えた交流


廃園となった旧保育園跡地を活用した山添村の「かすががーでん」では、かつて世界一に輝いた幻の紅茶品種「べにほまれ」の復活をめざし、2015年から、農薬や肥料を使わない紅茶栽培を始めました。村で自然農法のお茶を栽培する「健一自然農園」の伊川健一さんをアドバイザーとして、様々な食と農の体験教育に取り組まれています。茶摘みから発酵、製茶まで、季節の移ろいを通じて、多様な茶の製法を学ぶことができます。私が訪ねた日も、子どもからお年寄りまで、世代を超えた交流の場になっていました。 紅茶作りの一日体験レポート

紅茶作りの一日体験レポート


体験は、「かすががーでん」の目の前に広がる茶畑での、茶摘みから始まります。茶農家さんの指導のもと、チームに分かれ、競争しながら茶葉を摘んで行きます。
一芯二葉(枝先にある芽とその下の2枚の葉)で摘むのがポイント。機械摘みに比べ、手摘み、手揉みのお茶は明らかに味が違うそうです。
時間が経つにつれ、どんどん発酵が進んでフルーティーな香りがしてきます。
最後に、鉄窯で茶葉をローストしていきます。だんだん褐色になり、紅茶の香りが部屋中に立ちこめてきます。
各チームに分かれて作った自慢の紅茶を飲み比べ。発酵の時間や手揉みの揉み具合、ローストの程度でも味が随分変わって来ます。どのチームも、自分で作ったお茶が一番おいしいようです。

大和高原に受け継がれる製茶を学ぶ


茶の樹が生育するまでには、約5年かかると言われています。その年の気候や、その土地の土壌成分、品種、肥料、摘むタイミング、火入れの程度、あらゆる環境と管理がお茶の風味に影響を与えます。味を安定的に確立するのは並大抵のことではありません。明治から昭和初期にかけて一世を風靡した和紅茶は今、再び復活しつつあります。日本の風土に根ざす品種を一生かけて育種して来た技師たち、そして、その味を再現するために立ち上がった村の人たちの思いは、時代を超えて受け継がれていきます。

製茶体験イベントは、春は緑茶、夏は紅茶、秋は烏龍茶と年数回行われており、スケジュールは「かすががーでん」のホームページで確認できます。ぜひ、自分好みのお茶を作ってみませんか?


◆「かすががーでん」(山添村波多野地区活性化協議会)
住所: 奈良県山辺郡山添村大字大西151番地 (山添村観光協会内)
電話番号:0743-85-0081





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