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新型グロム試乗|欲しかった「5速」、やっぱり最高です!


1967年にモンキーZ50Mを発売して以来、時代ごとに小排気量のエントリーモデルを投入してきたホンダが、2013年にデビューさせたのが125ccのグロムだ。タイで生産される前後12インチホイールのグローバルモデルであり、2016年にはスタイリングを一新して2代目へと進化。そして今年は、エンジンと外観に大掛かりな手を加えるなどビッグマイナーチェンジを実施した。その進化した走りをじっくりとチェックする。




REPORT●大屋雄一(OYA Yuichi)


PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)

ホンダ・グロム……385,000円

車体色は写真のフォースシルバーメタリックのほかにマットガンパウダーブラックメタリックを用意。ABSを追加しながら車重は104kgから102kgへと軽くなっている。

タイヤサイズはフロント120/70-12、リヤ130/70-12で、標準装着タイヤのメーカーと銘柄、そして指定空気圧まで先代と共通だ。

2013年6月に発売された初代グロム。「ジャストサイズ&魅せるスペック」をコンセプトとし、当時の税込本体価格は309,750円だった。
スタイリングを一新した2代目は2016年6月に発売された。ヘッドライトがLEDとなり、マフラーはダウンショートタイプに。税込本体価格は345,600円。

実用域での扱いやすさと速さではCB125Rをはるかに凌駕する

ツインリンクもてぎで開催されている4ストミニバイクの耐久レース「DE耐!」に、仲間のホンダ・エイプ100で参戦していた私にとって、初代グロムに試乗したときの衝撃は今も鮮明に記憶に刻まれている。驚きの筆頭はエンジンだ。エイプと違ってセル付きなので始動はイージーだし、キャブではなくPGM-FIなのでラフなスロットル操作も許容してくれる。そして、何より愕然としたのは低回転域でのトルクの厚さだ。形式が異なるとはいえ同じ空冷SOHC2バルブの単気筒なのに、たかが25cc増えただけでここまで出足が良くなるとは。




ハンドリングは、前後12インチというホイールサイズが共通で軸距もほぼ同じなので、ニュートラルに向きを変えるという傾向はエイプとかなり近しかった。その上で、エイプの方が車重が15kgも軽く、リヤにリンク式サスを採用しているというアドバンテージはあったものの、グロムの前後ディスクブレーキ(エイプは前後ドラム)がそれを補って余りあるほどのパフォーマンスを発揮。この試乗経験により、ホンダのレジャーバイクにおける世代交代を痛感させられたのだ。




さて、今回試乗したグロムは、初代から数えて3代目となる2021年モデルだ。マフラーを含む外観が刷新されたのは、よりカスタマイズしやすいようにとの配慮からで、特にタンクカバーとサイドカバーは「ここのボルトを緩めれば外せますよ」ということを視覚的にアピールしたデザインとなっている。カスタマイズもバイク趣味における重要なカテゴリーの一つであり、これはユーザーフレンドリーな進歩と言えるだろう。




空冷SOHC2バルブ単気筒のエンジンはボア×ストローク値が見直され、初代&2代目よりもロングストローク比となり、圧縮比も高められている。最高出力は9.8psから10psへと微増、最大トルクは11Nmのままだが、その発生回転数が5,250rpmから5,500rpmへとわずかに変化している。そして、何よりの朗報はミッションが4段から5段になったことだ。初代や2代目のエイプに乗ったことのある人のほとんどが、幻の5速に入れようとしたことがあるはず。メーターにギヤポジションインジケーターがなかったことも理由の一つではあるが、それだけ実用域のトルクが厚いことの表れとも言える。




新型のエンジンは、発進加速が非常に力強い。先代と直接比較していないので断言はできないが、ほぼ同等か、わずかに上回る加速力を見せてくれる。気になったので総減速比を計算したところ、1速でレッドゾーンの始まる8,000rpmまで引っ張った場合、先代のエンジンは38.7km/hまで出るのに対し、新型は33.5km/hと約13%低い。つまり、新型の1速は加速に有利なローギアードとなっており、これも体感的な速さにつながっている可能性は大きい。




とはいえ、エンジン自体の扱いやすさは歴代通じて共通であり、ミッションの段数が増えたからといってせわしなくギヤチェンジを求められる特性にはなっていない。勾配の急な上りコーナーの進入で仮にシフトダウンをサボっても、2,000rpm以上であればストトトッと事も無げに立ち上がってくれるのだ。ちなみに、ホンダのCB125Rを同日に試乗したのだが、エンジン特性は正反対であり、同じ状況においてはCBはモッサリとしか加速しない。CBがそのパワーを発揮するのは7,000rpm以上であり、それをキープできない状況、つまり街中などの一般的な使用状況においては、グロムの方が明らかに扱いやすい上に現実的にも速いのだ。




なお、60km/h巡航時のエンジン回転数は、新型がトップ5速で4,250rpm、先代がトップ4速で4,600rpmとなっている。わずかな差ではあるが、新型の方が回転数を低く保てる分だけツーリングでの燃費向上につながる可能性は大きい。

ハンドリングも実にいい。ワイドタイヤゆえの軽薄すぎないロール方向の動き、微速でも切れ込みすぎない舵角の付き方、スロットルのオンオフで発生する分かりやすい車体のピッチング。車重の違いこそあれ、そのどれもが軽二輪以上のスポーツバイクの動きに近似しており、扱いやすいだけでなく、操縦の基礎を学ぶには格好の素材と言えるのだ。




舵角が穏やかに付くので、基本的にはバンク角主体で旋回するタイプだ。寝かし込んだ分だけ旋回力が高まるという分かりやすさがあり、それを支えてくれるのが十分以上のグリップ力を発揮する標準装着タイヤだ。φ31mm倒立式フロントフォークは、強めのブレーキングでスコンッと縮まる傾向にあり、そこから先ではステアリングヘッドが左右へ逃げるような挙動を見せる。だが、そうした無理な突っ込みをしても旋回力が高まらないばかりか、単に恐怖心が増すだけなので、自然とスムーズなブレーキングからの倒し込みを心がけるようになる。言い換えれば、ビギナーに適切なライディング技術を教えてくれる稀有なモデルなのだ。




前後ともニッシン製のキャリパーを採用するブレーキは、入力初期の利きを穏やかにすることで扱いやすさを高めるという狙いは歴代共通だ。新型はフロントのみが作動する1チャンネルABSを標準装備しており、これの介入レベルは適切だ。実際にドライ路面で試してみると、二輪教習の急制動と同じかそれ以上にブレーキレバーを強く握り込まないと介入しない。それだけ標準装着タイヤのグリップ力が高いという証拠であり、オーナーになられた方は一度は安全な場所で試しておくといいだろう。




CB125Rを筆頭に、CT125・ハンターカブやモンキー125など、原付二種クラスに魅力的なマニュアルミッション車を多数ラインナップするホンダ。中でもグロムは軽量コンパクトゆえの親しみやすさで選ぶ人はもちろん、純正アクセサリーのリヤキャリアに社外品のトップボックスを装着し、通勤通学やツーリングに使用している人も少なくない。レジャーバイクを半世紀以上も作り続けてきたホンダの集大成のような存在であり、新型はまさにその正常進化版と言えるだろう。

ライディングポジション&足着き性(175cm/64kg)

761mmというシート高は原付二種スクーターのPCXより3mm低く、足着き性は抜群にいい。シートが初代と同様のフラットな形状に戻ったことで腰が引けるようになり、着座位置の自由度が飛躍的に向上したことも見逃せない。
前後17インチホイールを履くフルサイズ原付二種、CB125Rと比べるとライポジからしてコンセプトの違いが一目瞭然だ。

ディテール解説

PGM-FIをはじめオフセットシリンダーやローラーロッカーアーム、セルフスターターなどを採用する、タイホンダのウェイブ125iをベースとした123cc空冷SOHC2バルブ単気筒。新型はボア×ストローク値をφ52.4×57.9mmからφ50.0×63.1mmへと、さらにロングストローク比に変更。合わせて圧縮比を9.3→10.0:1へと高めて最高出力を9.8→10.0psへ。マニュアルクラッチを組み合わせるミッションは4段から5段へ。
2016年のモデルチェンジでアップタイプだったマフラーはダウンショートタイプに。さらにこの新型では排気系の中間にあった大型チャンバーを省略し、サイレンサーを大容量かつカスタマイズしやすいように分割式に。これにより最低地上高は155→180mmへ。
角断面鋼管をメインとするモノバックボーンフレームに組み合わされるのは、インナーチューブ径φ31mmの本格的な倒立式フロントフォーク。前後ホイールは細身のY字スポークからシンプルかつ力強い5本スポークへ。ブレーキは前後ともディスク(フロントφ220mm、リヤ190mm)で、新たにフロントのみが作動する1チャンネルABSを標準装備。
シンプルなH型のスイングアームは角断面鋼管で構成される。リヤサスはリンクレスのモノショックで、ショックユニットのスプリングはブラックからイエローへ。
従来と同様にアップハンドルを採用する。燃料タンク容量は5.7→6.0ℓへと微増。メインスイッチのキーは従来のフォールディング機能付きからごくシンプルなタイプへと戻されている。
メーターはCB125RやCRF250シリーズとほぼ共通デザインに。右側に待望のギヤポジションインジケーターが追加されたほか、レブインジケーターも新設。左右にあった操作ボタンは左側に集約された。
2016年モデルでプロジェクターからLEDとなったヘッドライトは、新型でさらにデザインを進化させた。シュラウド&サイドカバー、分割式シートレールは、カスタマイズのしやすさを狙ってボルトオン式とされる。
シンプルなデザインのLEDテールランプ。前後ウインカーおよびナンバープレート灯はフィラメント球を継続する。
前後一体型でタンデム部分の座面が一段高かったシートは、ほぼフラットな形状へと一新。それでいてシート高は従来の760mmから761mmへと1mmアップに抑えられる。
シートはキーロックにて取り外し可能。ヘルメットホルダーはチンストラップのDリングを直接引っ掛けるタイプだ。

グロム 主要諸元

車名・型式 ホンダ・2BJ-JC92


全長(mm) 1,760


全幅(mm) 720


全高(mm) 1,015


軸距(mm) 1,200


最低地上高(mm) 180


シート高(mm) 761


車両重量(kg) 102


乗車定員(人) 2


燃料消費率(km/L)


 国土交通省届出値:定地燃費値(km/h) 63.5(60)〈2名乗車時〉


 WMTCモード値(クラス) 68.5(クラス 1)〈1名乗車時〉


最小回転半径(m) 1.9


エンジン型式 JC92E


エンジン種類 空冷4ストロークOHC単気筒


総排気量(cm³) 123


内径×行程(mm) 50.0 × 63.1


圧縮比 10.0:1


最高出力(kW[PS]/rpm) 7.4[10]/7,250


最大トルク(N・m[kgf・m]/rpm) 11[1.1]/5,500


燃料供給装置形式 電子式〈電子制御燃料噴射装置(PGM-FI)〉


始動方式 セルフ式


点火装置形式 フルトランジスタ式バッテリー点火


潤滑方式 圧送飛沫併用式


燃料タンク容量(L) 6.0


クラッチ形式 湿式多板コイルスプリング式


変速機形式 常時噛合式5段リターン


変速比


 1速 2.846


 2速 1.777


 3速 1.315


 4速 1.034


 5速 0.843


減速比(1次/2次) 3.040/2.533


キャスター角(度) 25°00′


トレール量(mm) 81


タイヤ


 前 120/70-12 51L


 後 130/70-12 56L


ブレーキ形式


 前 油圧式ディスク


 後 油圧式ディスク


懸架方式


 前 テレスコピック式


 後 スイングアーム式


フレーム形式 バックボーン




製造国 タイ
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