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内燃機関超基礎講座 | F1:エンジンパーツの精度が勝敗を分ける


レシプロ系は超高速で回転、あるいは往復運動を長時間行なうため、ほんのわずかな精度の狂いが重大なトラブルを招く。F1エンジンの製造プロセスを追ってみる。


TEXT:世良耕太(SERA Kota)


*本記事は2007年2月に執筆したものです

必要のない肉を削って可能な限り軽量化したい。ミクロンオーダーの寸法精度を一桁上げれば、余分な重量を払わなくて済む。1万9000rpmを超える(2007年はここが上限)高回転域では、ほんのわずかな誤差が大きなトラブルのもとになるだけに、部品の公差はできるだけ小さくしたい。だがそれには精度の高い工作機械が必要だ。また、クランクシャフトのような複雑な形状の部品について、さまざまな方向の寸法精度をきちんと測るには、古い機械で測ったり人手に頼ったりでは効率が悪い。そこで精度の高い自動寸法計測マシンも必要となる。




エンジンコンストラクターが自前の製造施設を整える流れが加速しているのは、部品の精度向上と品質管理のためだ。ホンダは開発の流れに支障を来さないよう2002-2003年のシーズンオフと2003-2004年のシーズンオフの2回に分けて、栃木にある製造設備を刷新した。これにより、クランクシャフトやヘッド、ブロックの加工が従来より一段高いレベルでできるようになったという。トヨタも本社工場生技部などとの連携を強め、部品の内製率を徐々に引き上げている。




シーズン中に何度もアップデートをしないと競争力を保てないF1では、部品の設計変更から完成までのリードタイムが短いことも戦略上重要。近年、この領域にも多くのエネルギーが注ぎ込まれている。

機械加工:鋳型から取り出した状態のシリンダーヘッド(下)と、機械加工を施した状態。BMWは専用機械加工工場でクランクシャフトやカムシャフト、ギヤの加工に加え、熱処理や研磨を行なっている。(PHOTO:BMW)

鋳造:砂型を使いながらも精密鋳造に匹敵する精度や薄肉化を実現する。シリンダーブロックだけでもおよそ20個の型、10個の中子が必要。高度な技量を備えた腕自慢が組み付けを行なう。(PHOTO:BMW)

X線断層写真:鋳型から取り出した部品は、X線断層写真で異物の有無や肉厚不良を計測するほか、ファイバースコープを使った目視で検査。合格した部品だけが機械加工を行なうセクションに送り出される。(PHOTO:BMW)

組み立て:エンジンはチェックリストに従い、ステージごとに複数のスタッフによるダブルチェック検査を行ないながら組み立てる。ホンダは栃木で組み立てを行ない、イギリスに空輸。(PHOTO:HONDA)

熱処理:クランクシャフトなど、金属同士が接触する備品は熱処理を行ない、硬度を上げる。作業の手順を見直すなどしてリードタイムを短縮するのも、強くなるために必要な作業。(PHOTO:HONDA)

研磨:すべてが機械に置き換えられるわけではない。研磨も熟練の手仕事が求められる工程。ラップタイム短縮に果たすエンジンの寄与度は少なくなる一方だが、「たかがエンジン、されどエンジン」である。(PHOTO:HONDA)

CNC:シリンダーブロックがCNC(Computer Numerical Controlの略。工具の移動量や速度をコンピュータで制御する工作機械)で工作されようとしている。手前に専用の工具。工作精度の高い機械が必須。(PHOTO:TMG)

ファブリケーション:スリム化が加速するエキゾーストマニフォールドだが、意図したとおりの形状を実現するには、担当スタッフの技術が伴わなければならない。作りたいものを作れる環境作りが必要となる。(PHOTO:TMG)

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