2020年を振り返ると、東京オリンピックの延期をはじめ、日本だけでなく世界中でネガティブな年になってしまったが、クルマに限れば、これからのモータリゼーションを予感させるモデルのデビューが目立った。
TEXT●今 総一郎(KON Soichiro)
自動車史においてヴィンテージイヤーとして挙げられるのが1989年だ。
この年は、いまも世界中で愛されるスポーツカーである「ロードスター」が誕生しただけでなく、トヨタがレクサスを旗揚げし「LS(日本名:セルシオ)」を発表した。
こうして振り返ると、いずれも日本のクルマづくりの実力を世界に知らしめるモデルが一挙に登場したのが1989年だと分かる。そして2020年にも、再び日本のクルマづくりを世界にアピールすることとなるモデルたちがデビューした。ただし、1989年がパフォーマンスを知らしめたのに対して、2020年に打ち出したのは脱ガソリンを目指す未来を見据えた新しいクルマ像だ。
現在、パリ協定に基づいて「世界の平均的気温上昇を産業革命以前に比べて+2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする」ことが目標となっている。そこで化石燃料の消費を減らすために各メーカーでハイブリッド車の開発・販売が進んでいたが、2030年にはエンジン車の販売を禁ずる国や地域も出ており、EVなどの開発に拍車が掛かっている。
しかし、そうは言っても、いきなりEVやFCVに手を出すのは難しいのも事実。
そういったこともあってか、従来はガソリンエンジンを駆動に用いるのではなく、発電にのみに注力させて効率化を図ったモデルの登場も2020年のトピックだ。
こうして振り返ると、脱ガソリンに向けてこれまではメーカーが準備を進めていたが、いよいよユーザー側も脱ガソリンへ踏み出すタイミングが迫っているのではないだろうか? その一歩目が2020年であり、未来を見据えたクルマがひしめいた2020年は、いずれ自動車史におけるヴィンテージイヤーとして挙げられるはずだ。