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停車時&乗降時、自動で車高ダウン! 足つき性を改善するショーワの斬新サスペンション機構|CRF1100Lアフリカツイン


去る9月29日に「SHOWA Technology Experience」が開催された。ショーワの技術が体験取材できる催しは初の事。試乗も含めて次世代技術が体験できるとあって、我々取材班は栃木県にあるショーワ塩谷プルービンググラウンドへ飛んだ。




REPORT●近田 茂(CHIKATA Shigeru)


PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)


取材協力●株式会社ショーワ

SHOWA EERA HEIGHTFLEX(ショーワ・イーラ・ハイトフレックス)

ノーマル状態での足つき性はこんな感じ。両足の踵は大きく浮いている。(作動OFFにして撮影)シート高は870mm。
停車寸前に車高が30mm下がってくれる。踵の浮きは少なく足つき性が良い。つま先も指の付け根が接地するのでしっかりと踏ん張れる。

 今回、もっとも興味深い新製品を披露してくれたのがコレ。アドベンチャー系モデルは足(ストローク)の長いサスペンションが装備されているので、シート高が高く、足つき性がスポイルされているのは当たり前。足つき性を重視する人にはローダウン・サスペンションが用意されていたりする事もあるのだが、高性能が追求された、せっかくの長いストロークや本来の設計を犠牲にしたくないと考えるのも本音。


 


 そこで開発された画期的新製品が、「SHOWA EERA HEIGHTFLEX」(ショーワ・イーラ・ハイトフレックス)。ちなみにEERAとはElectronically Equipped Ride Adjustment(電子制御を備えた乗車調整装置)の事である。今回ハイトフレックスはホンダCRF1100Lアフリカツインに搭載されて試乗した。


 停車直前に自動的に車高を下げ、足つき性を改善する。フロントフォークとリヤショックの頂点位置にセットされた車高調節用油圧バルブをECUが制御。前後サスペンションの上部に組み込まれた油圧ジャッキの働きで、車高がダウンする。


 この装置のユニークなのは、車高を上げる(元に戻す)時のジャッキアップに必要な油圧を、路面の凹凸から受ける衝撃エネルギーを活用する点。


 リヤサスペンションの上下動でセルフポンピングされて、ジャッキアップ用の油圧が賄われる仕組みだ。つまり油圧の発生に電動モーター等の別動力を使用していない。電力使用はECUと油圧バルブの制御のみ。仕組みが小型軽量な点も見逃せないのである。


 平常時状態に車高が伸びきるには舗装路で約30秒、不整地なら約10秒かかると公表されているが、意地悪く“そ~っと”走り出すと直線試験路を800m程走っても伸びきらなかった。もちろんこれはイレギュラーな話。


 逆に停車状態で前ブレーキを握って車体を前後に大きく揺する(サスペンションをクッションさせる)と3~4回のピッチング動作で直ぐに伸びきってくれた。




 思い出されたのは、約30年前にスズキから登場したDR250SHである。SHC (スズキ・ハイト・コントロール)と呼ばれた斬新な油圧式車高調節機構を備えて大きな反響を呼んだ。


 ハンドル左側に装備されたダイヤル・スイッチ(機械式)を回すと車高を45mm下げることができ、上げる時は後輪が上下動するエネルギーを活用した油圧ポンプを利用するという方式。


 このSHCはスズキの提案に応えて、サプライヤーであるショーワが開発納入した物だったのである。とは言え、今回の開発とはほぼ無関係。企画開発がスタートしてから、「そう言えば昔こんなの(DR250SH )があったな~」とベテランスタッフが思い出した程度だそう。


 いずれにせよ今回は、セルフポンピングメカと、電子制御式油圧バルブを組み合わせた所が斬新なポインントで、世界初の電子制御式車高調節技術が初お披露目されたのである。


 


 現時点での話では、残念ながらこの新製品がアフターパーツへ流通する予定はない。つまりメーカーへ導入(採用)を働きかけるためのプレゼン用。


 世界的に人気が盛り上がり傾向にあるアドベンチャー系のモデルだが、商品力向上策のひとつとして、どのメーカーが初投入に踏み切ってくれるのか、実に楽しみな存在であることは間違いない。コンペモデルへの投入等も興味は尽きない。


 より高性能なロングサスペンションと足つき性確保の両立が可能なら、また一段とレベルの高い進化系モデルの登場につながる可能性も否定出来ないのである。今後の展開に期待したい。

ハイトフレックス機構が導入されたショーワの新開発フロントフォーク
リヤショック。上部に見える黒い部分とその内側から下方向にスプリングを押さえる赤い部分が油圧ジャッキだ。
1990年登場のスズキDR250SH(セル付)。当時の価格は484,000円・税別

最先端電子制御技術を活用すると、こんな事もできてしまう。

IMU(慣性計測装置)等、各種センサーと統合電子制御の働きでバイクは自らジャンプしている事を察知することができる。
そのおかげで、次に訪れる着地ショックの大きさを緩和すべくダンピング特性が自動可変される。

 大ジャンプに耐えるサスペンション・セッティングと、しなやかに動くソフトな設定との両立。昔ならまるで叶わない欲張ったニーズが、今の電子制御技術はいとも簡単に叶えてくれると言うお話。


 ホンダCRF1100Lアフリカツインの技術説明会でも披露された話題だが、その効果を実体験するのは初めて。EERA Damping Force制御機能のひとつであるジャンプ着地制御をONとOFF両方で乗り味り比べてみた。


 ダートコースを60km/h程の速度で宙に浮くジャンプと、凹凸が連続する波状路で乗り比べる事ができたのである。


 波状路をフワッフワッとなめるように快適に走れる通常セッティグ。そのままジャンプすると案の定予期した通り “グワッシャーン” と着地の衝撃は凄まじいものがある。


 ところが制御ONで走るとIMU等からの情報を集約してジャンプしている事(自由落下状態)を検知して、瞬時にダンピング(減衰力)を高めて激しい着地ショックに備えてくれる。


 


 その違いは驚くほど明白だった。前後サスペンションは写真の様にボトム領域まで沈み込むが、底に突き当たる衝撃は極めて少ない。制御OFFだと着地ショックはライダーの脊髄まで突き上げ、その激しさに思わず声を上げてしまう程だったが、制御ONではショックが巧みに緩和(減衰)されて、サスペンションの優秀さが全面に出る印象である。


 もちろん衝撃は小さく無いが、“ストン”と言う感じ。ボトムしても車体やライダーへのダメージはとても少ないものだった。


 普通はジャンプする事なんて無いとは思うが、こんな両立を可能とするなんて、改めて最新電子制御技術の凄さを思い知らされたのである。

車体姿勢を一定に保つ自動車高調節制御

しっかり重いパニアを脱着してワインディング路で試乗。車体の姿勢は常に安定している。

特設されたタブレットはあくまで今回の試乗用。多彩な情報が表示され、あんな事こんな事もタッチパネルで簡単にコントロールできる。将来的にはメーターディスプレイへの組み込みも可能。サプライヤーとしてメーカーへの提案素材に考えられた、制御画面のひとつだ。

 ワインディング路ではパニア(両方でトータル25kg)の装備と非装備の両方で比較試乗した。試乗車はCRF1100Lでスカイフック制御と自動車高調節制御、その他車速に応じて制動時のノーズダイブを防ぐ制御も試した。


 スカイフックについては2021年型のカワサキ・VERSYS 1000 SEで報告済みなので、ここでは車高調節制御(自動積載補正)についてご報告したい。




 前後サスペンションには、EERA Ride Height(イーラ・ライドハイト)を装備。これは油圧ジャッキを備え、電動化されたプリロード調節機能により、前後共30mmほどの車高調節を可能としたもの。ちなみにこちらは電動(DC)モーターによる油圧ポンプで油圧ジャッキをコントロールする仕組みである。


 シンプルに一人乗車でワインディング路を走行した後、パニアを装備して同じコースを試走。例えばタンデムでも同様だが、荷重負担が変われば、当然それに応じてバイクの姿勢は変わってしまうのが普通だが、この車高調節を自動モードで機能させると、バイクの姿勢は一定に保たれる。つまり二人乗りしても、バイクの姿勢自体は一人乗りと同様の感覚で走れるというわけ。                


 ハンドリングやヘッドランプの光軸が乱れることが少ないというメリットは大きい。


 ちなみに車高調節はマミュアル操作も可能で前後それぞれに4mm毎上下する5段階から設定できる。便宜上今回は特別に設置されたタブレット画面のタッチパネルを使用して自由自在に選択でき、バイクの姿勢変化も簡略化されたイラスト表示でとてもわかり易い物だった。


 もちろんメーカーの商品として実用化される時には、メーターディスプレイや走行モードに組み込まれる等、簡略化されると思われる。


 操作方法や車高調節の範囲等も、それぞれバイクのキャラクターにマッチさせるべく、メーカーの考え方次第になるだろう。


 いずれにせよ、商品力を高めるチャームポイントのひとつとして、アピールしやすい物になるであろう事に期待は高まるのである。

⚫️試乗後の一言!

電子制御技術は日進月歩。昔は夢の様だったアイデアも実用化されて、どんどん身近な存在になりますね。

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