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ガソリンターボで熱効率40%超を実現できた秘密とは? 完全新設計のボクサーエンジン「CB18」に迫る【スバル新型レヴォーグ詳密解説】


スバルが10月15日に発表を予定している新型レヴォーグの心臓は、1.8L直噴ターボエンジンが搭載される。型式は「CB18」。従来型が搭載していたFB系のボクサーエンジンとはまったく異なる、ブランニューの新エンジンだ。その詳細に迫ってみたい。




TEXT●安藤 眞(ANDO Makoto) PHOTO●山上博也(YAMAGAMI Hiroya)/SUBARU

2.0Lを廃止して、低速トルク増強のため1.6Lの排気量を1.8Lへ拡大

新型レヴォーグはエンジンのラインアップも一新。従来型で販売の中心だった1.6Lの排気量を1.8Lに拡大し、ハイエンドの2.0Lを廃止して、1機種へと統一を図った。




1.6Lの排気量をアップした最大の理由は、低速トルクをしっかり出したかったから。FB16型もスペック上は1800回転で最大トルクに達するが、ターボエンジンである以上、過給圧が高まらなければこのトルクは出ない。そこで排気量を200cc増大し、無過給域のトルクを高めた。さらにターボチャージャーも小径化を図り、最大トルク発生回転数を200rpm下げている。

オフセットシリンダー採用によりロングストローク化を実現

新エンジンの型式はCB18型。ボア×ストロークはFB16型のφ78.8mm×82.0mmからφ80.6mm×88.0mmへと変更されており、ストローク/ボア比は1.04から1.09とロングストローク傾向が強まった。これによって吸気流速が高まったため、TGV(Tumble Generation Valve=縦渦発生バルブ)は廃止されている。




ロングストローク化による急速燃焼は最近のガソリンエンジンのトレンドだが、水平対向エンジンの場合、それを阻むのが全幅の制約。直列エンジンなら最低地上高やボンネット高で吸収する余地があるが、水平対向の場合、サスペンションのレイアウトや最小回転半径が障壁となり、そう簡単にはロングストローク化できない。




となれば、コンロッド長を短縮して吸収するしかないのだが、クランク半径が大きくなってコンロッドが短くなれば、クランク角90度のときのコンロッド偏角が大きくなり、ピストンの横方向(スラスト)荷重が増大してフリクションが大きくなってしまう。




そこで採用されたのが、オフセットシリンダーだ。クランクセンターに対してボアセンターを回転方向にオフセットすれば、パワーストローク時にコンロッドの偏角を小さくすることができ、フリクションを低減できるのだ。

CB18型は、クランクセンターに対してボアセンターを8mmオフセット。水平対向エンジンなので、クランクセンターに対して左バンクが低く、右バンクが高い。これで偶力によるローリング振動は発生しないのか? ピストンの組み付けはどうやっているのか? など、より突っ込んだ話は、今後刊行予定のモーターファン別冊『新型レヴォーグのすべて』でお届けするので、ご期待いただきたい。

直噴式の噴射ノズルが、サイド噴射からバーチカル噴射方式に変更されたのは既報の通り。これは噴射ノズルとスパークプラグを近づけることで、リーン燃焼時に着火しやすい混合気をプラグ近傍に形成しやすくするため。サイド噴射でもピストンの形状で噴霧を誘導することはできるが、ピストン形状を複雑にすると表面積が広くなり、冷却損失が増えるから、バーチカル噴射のほうが有利なのだ。

リーン燃焼は負荷率約40%かつ2400rpm以下の領域で使用しているとのことなので、市街地ならほぼリーンバーンで賄えてしまいそう。JC08モード燃費は従来型より0.6km/L良好な16.6km/Lとなっているから、実力で12km/L越えは狙えるのではないか。




しかしリーン燃焼しているとなると、三元触媒ではNOxの処理ができないため、排気系の最後段にはNOx吸蔵触媒を装着。リーンバーン時にはここにNOxを吸蔵しておき、いっぱいになったら過濃混合気を送ってNOxを還元処理する。

クランクウェブの厚さを3分の1にしてエンジン全長を44mm短縮

エンジン全長が44mm短くなったのは既報の通りだが、その最大要因はクランクシャフトの短縮化。クランクウェブを3分の1の厚さにすることで、クランクシャフト長を34.6mm短縮している。

CB18
FB16

自動車用水平対向エンジンを量産しているのは、世界的にもポルシェとスバルのみ。効率やコストの面では直列式より不利な要素も少なくなく、「いずれやめることになるのでは」との観測をする者がいるのも確かだ。




しかし、考え続ければ知恵は出る。自動車用の量産水平対向エンジンでオフセットシリンダーを採用するのは恐らく世界初。ガソリンターボエンジンで熱効率40%超は、現在のところ世界最高水準。CB18型エンジンは、スバルの意地の結晶だ。

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