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全てを忠実にダウンスケールした「70%モンキー」が凄すぎる【月刊モトチャンプ 2019年12月号】


今号の月刊4MINIでは、ほぼ全てのパーツを手作りして、モンキーを70%サイズに縮小した驚愕のマシンをご紹介!ご覧の通り超精巧なのはもちろん、なんとこれを市販化するというからまたビックリ。規格外のミニモンキーをご覧あれ!




PHOTO●平野 陽(HIRANO Akio)


REPORT●増田 満(MASUDA Mitsuru)

ホンダF1黄金期を支えた確かな技術でマシンを制作

 これまで何度もモンキーを縮小してしまった例を紹介してきた。それらの多くはフレームや外装を切り貼りして8インチホイールを履かせた個人レベルのもの。だから、この70%モンキーをご覧になっても、目新しいとは感じないかもしれない。ところがこのモンキー、実はフレームからサスペンション、外装パーツまで新たに作り出したものでできている。さらに個人レベルと決定的に違うのが、全パーツの強度計算をして安全を確保していること。強度計算を基に設計図面を描き、ジグを作る。だから何本でもフレームが作り出せて、同じ強度を保てる。つまりこれはメーカーがバイクを作り出す工程と全く同じなのだ。




 では、どうしてそんなことが可能になったのか。70%モンキーを製作したバロックという会社に、その秘密がある。バロックの代表である皆川栄司さんは今年で70歳になる技術者。今は現役バリバリの方ではないのだが、その経歴を聞いて腰を抜かした。なんと、1980年代に全盛を誇ったホンダF1のV6エンジンに関わっていた技術者なのだ。




 ホンダがF1に参戦した第2期は1983年にスタート。翌年にはウイリアムズチームへエンジンを供給して初勝利を挙げる。その強さは年々進化して、1986年と87年にはコンストラクターズチャンピオンを獲得。88年には16戦中15勝という圧倒的な強さを見せた。




 このホンダV6エンジンはホンダ社内で完結したわけではない。皆川さんは埼玉県朝霞市で仕事を始めるが「師匠」はいない。すべて試行錯誤で今の技能を習得した。周囲にホンダ関係者が多い土地柄ゆえ、コンロッドの研磨を仕事にした。その腕に白羽の矢が立ち、ホンダV6エンジンのカムシャフトを研磨することに。これを続けているうちにホンダの研究所に出入りするようになり、試作部品を任された。ホンダF1の第2期における圧倒的強さは、その影に皆川さんのような技術者がいたからこそなのだ。




 その後、ホンダ本家ではなく無限の仕事をメインとし、関係はさらに密接に。ついには二輪完成車のすべてを手がけるようになった。そのためある時期のホンダ製プロトタイプは、皆川さんが作っていたということになる。例えば初代クロスカブのメーカーカスタム車は皆川さんによるもの。なんとも仰天するようなエピソードだ。




 ホンダの仕事がひと段落すると、改めてバイク作りへの情熱がムクムクと湧いてきた。だが、大メーカーと同じことをしても意味はない。だったら床の間から公道まで楽しめるサイズにしては、どうだろう。こんな思いから70%モンキーの試作が始まった。ではなぜ70%か。それはエンジン。ホンダ製草刈機のGX35は排気量が35.8㏄。50㏄の70%に該当する。このエンジンがあったからこそ、70%のモンキーなのだ。




 もちろん、そのままでは使わない、というか使えない。キャブレター周りはインマニなどを新規設計したが問題は駆動系。本来草刈機はシャフト駆動。これをスプロケットによるチェーン駆動に改めるのだ。エンジンに被せるタイプのアルミカバー母型を制作し外部で鋳造。さらにギヤを加工した。そう、トランスミッションも装備しているのだ。




 自社製作ではないもう一つがタイヤ。8インチの70%だと5インチになるが、どこを探してもそんなサイズはない。そこで太いブロックタイヤで探し直してみると、ベトナム製の4インチが見つかった。さすがに皆川さんも何用であるかは知らない。おそらく荷車用だろう。




 フレームでわかるように、鉄やアルミを成形するのが得意な皆川さんだが、燃料タンクは型を起こして製作するだけではなく、蒔絵をあしらったカラーリングも手掛け、塗装ブース、集塵機から塗装乾燥機まで作ってしまった。だからできないことなどない。何か作るために必要な機材がなければ、それすら自分で作る。時代とともに薄れてしまった、モノ作りの原点かつ究極がここにあるのだ。

70%MONKEY DETAIL CHECK!!

皆川栄司さんが代表を務めるバロックによる設計。完成車が165万円(税別)、フレームと足周りのセットが25万円(税別)だ。 問:バロック ☎080-3135-8230(常識的な時間内で対応)

HANDLE etc.
FUEL TANK


SEAT
TAIL LAMP &TURN SIGNAL


ENGINE
STARTER


SWINGARM etc.
KEY


TIRE&WHEEL
REAR SHOCK


エンジンやゴム製品の一部以外そのほとんどを型から製作!

 モンキーの純正部品を切り詰めるのは決して簡単ではないが、このモンキーはフレームや前後サスペンション、灯火類などの外装パーツまで、純正の70%となるよう厳密に縮尺を計算して新設計したパーツを使用する。エンジンはホンダ製草刈機を使うが、カバーを製作して自社開発トランスミッションを組み合わせた。驚くことにブレーキドラムやシューも専用設計で、サスペンションのスプリングやダンパーもオリジナル製品。シートはベースを型から起こしたものに手製の表皮を被せている。タイヤだけ市販品だ。

部屋の中に整然と並ぶパーツたち

この70%モンキーは量産車。完成車としても入手可能だが、パーツ単位で購入してプラモデル感覚で組み立ても楽しめる。これだけのパーツを一人で量産しているのにも恐れ入る。

フレームのジグまで製作

フレームを作るには専用のジグが必要不可欠。パイプをベンダーで曲げるにもジグがなければ同じ寸法にならない。そこで鋼板を用いた専用ジグを作ってしまった。上下に同じ切り欠きがあるのは、2つ同時に作業できるから。

ホンダの汎用エンジンをモディファイ

エンジンはホンダ製草刈機に採用されている35.8cc。本来ミッションはなくクランクにシャフトが連結されているので、クランクにスプロケットを装着してカバーを被せることで自社開発ミッションとチェーンで連結している。

燃料タンクを作るための型を作り、左右と底をプレス成形。溶接して組み立てる。ライトケースやライトリムも同じ手法で作っている。

シートの型は上下2枚でできていて、内部に素材を入れてから凝固させる。型作りからパーツ製作まで、すべての工程をバロックで行なう。

キャブレターは草刈機純正を使うが、傾きに合わせてインマニを製作している。円筒のエアクリーナーも専用設計したものだ。

ミッションケースを製作して専用に加工したギヤを組み込んで駆動力を得ている。ギヤの設計は皆川さん自身によるものだ。

なんでも作れる設備がズラリ

広い工場ではないが、コンクリート建物の内部には大工場並みの工作機械や生産設備が整う。中央のテーブルもここで自作したもの。

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