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乗降性と荷室の使い勝手、「ホンダセンシング」の充実度にも要注目


ホンダの乗用車ラインアップで最もベーシックな背高軽ワゴン「N-WGN」(エヌワゴン)が2019年7月、二代目へとスイッチ。一足先に世代交代したN-BOXと同様にパワートレインとプラットフォームを大幅に進化させた。その標準仕様における最上級グレード「L・ターボホンダセンシング」FF車に乗り、東京都内および神奈川県内の市街地を中心としつつ、首都高速道路も交えて3日間試乗した。




REPORT●遠藤正賢(ENDO Masakatsu)


PHOTO●遠藤正賢/本田技研工業

二代目ホンダN-BOX

 二代目N-BOXに初めて試乗した時の衝撃は、今でも忘れられない。




 ホンダが軽自動車市場において地に墜ちた存在感を回復するため2011年12月に発売した初代N-BOXは、すべてのコンポーネンツを刷新。軽自動車では今なおトップの2520mmという長大なホイールベースを確保しつつ、センタータンクレイアウトを採用するなど、スペース効率を極限まで追求したホンダお得意のパッケージングを武器にして、たちまち軽自動車のベストセラーとなった。




 にも関わらず、ホンダは2017年9月に発売した二代目N-BOXより、大半のメカニズムを見直し。その結果として、燃費、加速性能、静粛性、予防安全性能は劇的に進化するとともに、並の高級車を遥かにしのぐほどフラットな乗り心地を手に入れていた。これによって軽乗用車のベンチマークが大幅に引き上げられ、他の軽自動車メーカーも追従して主要メカニズムを刷新せざるを得なくなったのは記憶に新しい。

【ホンダN-WGN L・ターボホンダセンシング】全長×全幅×全高:3395×1475×1675mm ホイールベース:2520mm

 そんな二代目N-BOXをベースとして、全高が115mm低く、車重も約50kg軽量(「L・ターボホンダセンシング」グレード同士での比較)に仕上げられている新型二代目N-WGNに、期待しない方が無理というもの。喜び勇んでテスト車両に対面すると、その第一印象は「良くも悪くもシンプルになっている」というものだった。

初代ホンダN-WGN

 ホンダ車のエクステリアデザインは、2013年9月デビューの三代目フィット以降、要素が多く煩雑なものが大勢を占めていたが、新型N-WGNでは一転して、分割線やプレスラインの少ないスッキリしたものに。その傾向はサイドビューが特に顕著で、ウェッジシェイプに台形状の黒いガーニッシュを施していた2013年11月発売の初代N-WGNとは文字通り隔世の感がある。極力要素が少なく美しいデザインを至上とする筆者としては、これはもちろん好ましい変化だ。

新型ホンダN-WGNの運転席まわり

 だがインテリアは、単純に質感がグレードダウンしている。二代目N-BOXと見比べても、メーターがN-VANに準じたものになった以外は、加飾パネルの面積やインパネ下部およびドアトリムの色使い程度にしか違いは見られない。だが、そのわずかな違いが確実に「N-BOXより安いクルマ」なのだという印象を、ショールームへ足を運んだユーザーに与えることだろう。

新型ホンダN-WGNのリヤシート。ほぼスクエアな後端上部の開口部形状にも注目
新型ホンダN-WGNのフロントシート。運転席ハイトアジャスターの調整しろは50mm


 その一方で乗降性は、劇的に進化した。特に後席は、初代N-WGNが後端上部を斜めに切り、わざわざ頭を入れにくくしていたのに対し、新型では最大限後ろまで伸ばしたスクエアな開口形状に。サイドシルとフロアの段差も限りなくゼロに近くなった。その結果、二代目N-BOXと比較しても、115mm低い全高の不利を補って余りあるほど乗り降りしやすいものに仕上がっている。なお、この印象は前席でも変わらず、腰痛持ちの筆者でも労なく座ることができた。

ドライビング環境の改善イメージ図。アクセルペダルとブレーキペダルの段差も初代より5mm詰められている

ブレーキペダルの新旧比較図。新型にはリンク式が採用され、足の動きとのズレが解消されている

 また、ステアリングにチルト(上下)のみならずテレスコピック(前後)調節機能も備わり、かつペダルのレイアウトや機構が改善された。コスト削減と居住空間拡大のためドライビング環境が犠牲にされやすい軽自動車にあって、不自然な姿勢や身体の動きを強要されずに済むのは、地味ながら大きな美点だろう。




 ただしシートサイズそのものは、二代目N-BOXと全く変わらず、身長176cm・座高90cmの筆者にはやや小ぶり。クッションは表面が柔らかく奥はコシがあるためフィット感には優れるものの、ファーストカーとして使うにはもう一回りサイズアップしてほしい所だ。

後席を最後端の位置で使用しフロアボードを格納した状態のラゲッジルーム。フロアの奥行きは筆者実測で32cm
後席を最前端の位置で格納しフロアボードを展開した状態のラゲッジルーム。フロアの奥行きは筆者実測で138cm


右上の写真からさらにフロアボードを外した状態。後席による段差=フロアの段差は筆者実測で20cm、開口部高さは同105cm

 ラゲッジルームはフロア高が初代N-WGNより180mm下げられるとともに、後席の前後スライドに追従するボードが用意されたことが最大の変更点。ボードで仕切った際のフロア地上高は一般的なショッピングカートの上段に合わせて730mmに設定されるなど、具体的な使用条件を想定しているだけに、種類を問わず荷物の積み下ろしが極めて容易になっている。

新型N-WGNに採用された横力キャンセルスプリングのイメージ図

 では、最も肝心な走りはどうか。端的に言えば、二代目N-BOXより良くなったのはハンドリングと加速性能、変わらないのは乗り心地、悪くなったのは静粛性だ。




 全高が115mm低く車重も約50kg軽いという基本的スペックの違いに加え、N-WGNのフロントサスペンションには新たに横力キャンセルスプリングが採用されている。これがタイヤが上下動した際にダンパーへ加わる曲げモーメントを打ち消すため、ダンパーロッドに生じるフリクションが減り、小さな入力でもサスペンションがスムーズに動く。その結果として、乗り心地が良くなり旋回時の姿勢変化もリニアになる効果が期待できる。

テスト車両は155/65R14 75Sのブリヂストン・エコピアEP150を装着

 その効果を最も強く体感できるのはやはりワインディングだろう。テスト車両の装着タイヤは155/65R14 75Sのブリヂストン・エコピアEP150で、明らかに燃費と乗り心地を重視したものだったが、実際のハンドリングはそうしたタイヤの性格を感じさせないほどレスポンス良く軽快で、しかもロールはリニアかつじんわりと粘るように深まっていくため安心感は絶大だった。この点では、安定性一辺倒の二代目N-BOXよりも大きく優れており、これをもってN-BOXではなくN-WGNを選ぶ決定打になり得るだろう。

「ブレーキ操作ステップダウンシフト」の制御概念図

排ガス浄化性能が強化されたS07B型ターボエンジン

 パワートレインは、エンジンはWLTCモード対応のため排ガス浄化性能が強化され、CVTには下り坂やワインディングでエンジンブレーキを積極的に活用する「ブレーキ操作ステップダウンシフト」が新たに実装されているが、基本的には二代目N-BOXとほぼ共通。そのためN-BOXでも必要充分だった加速性能は、上り坂をECONモードで走っても余裕を感じるほど力強いものとなり、ノーマルモードでは「速い!」と思わず叫んでしまうほどだった。

新型N-WGNの防音材・遮音材配置図

 一方で粗粒路を走った際のロードノイズは二代目N-BOXよりも大きく、良路から移行した際の変化も大きく感じられたのは気になる所。エアロモデルの「カスタム」にはルーフおよびボディ側面にインシュレーターが追加されるため、この点は大きく改善されている可能性が高いのだが、そもそもこうした差別化戦略は迷惑なことこの上ない。

新型ホンダN-WGNカスタム

 クルマはあくまで日常の足、クルマで目立とうとは思っていない、(マイルド)ヤンキーに見られたくない、これらのいずれかに当てはまるユーザーはまず、「カスタム」を購入の選択肢に入れることはない。標準仕様と「カスタム」とで機能面の差を付けるのは、早急にやめてほしいと切に願う。

「ホンダセンシング」に用いられるフロントガラス上部の単眼カメラ
ミリ波レーダーはフロントバンパーロアグリル右側に内蔵されている


 全グレードに標準装備(廉価グレードにはレスオプション設定あり)されるADAS(先進運転支援システム)「ホンダセンシング」は、二代目N-BOXよりもさらに進化。CMBS(衝突軽減ブレーキ)が横断自転車のほか街灯のない夜間での歩行者検知に対応し、ACC(アダプティブクルーズコントロール)は渋滞追従機能付きにグレードアップした。そして、車線中央の走行を維持するよう支援するLKASも、N-BOXと同様にNA・ターボ車問わず標準装備されている。




 特にACCとLKASに関しては、スズキ、ダイハツはもちろん日産・三菱連合でさえ今なおターボ車やエアロモデル中心の展開(しかもオプションまたはグレード別設定)となっており、かつ車速・車間制御もラフさが目立つのに対し、新型N-WGNのものはその両面で大きなアドバンテージを持っている。それをホンダの宣伝・広報部門はもっと積極的に、分かりやすくユーザーにアピールすべきだ。こうしたイメージ戦略に関しては世界一巧みな日産の爪の垢を煎じて飲むべきであろう。




 そんな新型N-WGN L・ターボホンダセンシングの車両本体価格は、税別139万円。N-BOX G・Lターボホンダセンシングの税別158万円と比較すると19万円安いのだが、もっと価格差が少なくてもおかしくないほど、両車の走りと機能、質感の差は少ないように感じられた。一言で言えば「これで充分」、コストパフォーマンスの高さでは現行モデル随一だ。もし筆者が実用的なクルマの購入を迫られたとしたら、その第一候補となるのがこの新型N-WGN L・ターボホンダセンシングである。

新型N-WGN全車に標準装備されるEPB(電子制御パーキングブレーキ)(右)

 それだけに、デビュー間もない2019年9月より、EPB(電子制御パーキングブレーキ)の不具合によって生産停止に追い込まれ、12月にはリコールに発展。この1月にようやく生産が再開される見込みというのは、実際のセールスへの影響以上に、N-WGNの良さに深い影を落としたという意味でも、残念でならない。そしてこの問題は、同じ部品を使う予定だった新型四代目フィットにも、発売を当初の2019年11月から2020年2月へと延期させるという悪影響を及ぼしている。年度末商戦と重なり販売が本格化する2月以降、実際に購入するユーザーがどのような判断を下すのか、注意して見守りたい。

【Specifications】


<ホンダN-WGN L・ターボホンダセンシング(FF・CVT)>


全長×全幅×全高:3395×1475×1675mm ホイールベース:2520mm 車両重量:860kg エンジン形式:直列3気筒DOHCターボ 排気量:658cc ボア×ストローク:60.0×77.6mm 圧縮比:9.8 最高出力:47kW(64ps)/6000rpm 最大トルク:104Nm(10.6kgm)/2600rpm WLTC総合モード燃費:22.0km/L 車両価格:152万9000円
ホンダN-WGN L・ターボホンダセンシング

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