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JAMSTEC最前線: こ、これはなんだ? ポール・G・アレン財団だけじゃない。世界の海洋研究組織


近代海洋学はイギリス軍艦「チャレンジャー」が 1872 ~ 1876 年に行った学術調査探検航海が出発点だ。この太平洋、大西洋、インド洋、南極海での海洋誌的・生物学的調査は50巻ものチャレンジャー報告として出版された そして現在、海洋研究は公的・私的研究機関から軍事組織まで、ますます広がりを見せている。世界の海洋研究の最前線の一端を紹介する。


TEXT◎貝方士 英樹(KAIHOSHI Hideki)

ポール・G・アレン財団 戦艦「武蔵」空母「加賀」を発見!

アレンが個人所有していた世界最大級のヨット「オクトパス」。全長 126mは海上自衛隊のはつゆき型護衛艦とほぼ同じ。2003年の建造以来、海洋探査プロジェクトの他、科学研究計画や救援任務などにも定期的に貸し出されてきた実績を持つ。「船尾に2機分のヘリ発着場と格納庫、船首に1機分の発着場を備え、船尾にはテンダーボート(連絡船)と揚陸艇が格納される。海底調査用に有人潜水艇 Pagoo、Argus 3000 遠隔操作車両(ROV)、Bluen 12D自律型水中車両(AUV)が装備されていた。

 マイクロソフト社共同創業者のポール・ガードナー・アレンは、ビジネス界の巨人でもあり同時に投資家、研究者、人道主義者、慈善家でもあった。とくにマイクロソフト退社後は約2兆円を超えるとされる巨額資産を財団で運用し様々な慈善事業に出資や寄付してきた。そのうちのひとつが兵器遺産収集への出資で、海底調査の専門家チームを率いて、沈没した軍艦の深海探査を続けてきた。


 ポール・アレンの調査チームが日本で最初に注目を集めたのは、なんといっても戦艦「武蔵」の発見だろう。2015 年3月3日、8年の歳月をかけて捜索を続けてきた武蔵をフィリピンレイテ島のシブヤン海で発見したと発表。その後も発見成果は続々と続き、直近10月18日ミッドウェーの水深5400mの海底で空母「加賀」を、20日には空母「赤城」を発見する快挙を成し遂げている。ポール・アレンは2018年10月15日に亡くなり、現在は財団がその志を継いでいる。

スクリップス海洋研究所 世界最古の地球科学と海洋の研究組織

写真はRPフリップの通常(牽引)航行状態。計測機器との干渉を避けるため、本船には推進装置がない。移動するときは他の船に牽引してもらう必要がある。目的の場所に到着すると写真のチューブ構造部のバラストタンクに海水を注入し船体の一部を海面下に沈める。船内は90回転させての使用に合わせて、トイレの便座などの一部の備品も同じく回転可能だ。

起立状態のRPフリップ。これは転覆しているのではなく、「茶柱」のように海中に起立している正常な状態だ。 本船はこの状態で波高、音響信号、水温、密度 などのデータを収集する。

 創設が1903年という世界最古の地球科学と海洋の研究組織「スクリップス海洋研究所(SIO)」。また、合計1300人のスタッフには、約235人の教授陣 、約180人の他の科学者、約300人の大学院生が含まれ、年間予算は1億9500万ドル(約212億円)を超える世界最大級の海洋研究所でもある。研究対象は海洋学から生物学、物理学、化学、地質学など多岐にわたっている。


 現在は3隻の海洋調査船と海洋調査のための研究プラットフォーム RP FLIP(浮揚計器プラットフォーム)を運用している。

アメリカ海軍

世界初の原子力潜水艦「ノーチラス」。北極海の氷の下を密かに潜り抜け、ソ連の喉元に刃を突きつけるため、アイゼンハワー大統領の命令で開発がスタートした。写真は1955年ノーチラスが最初の海上試験を行っているときの模様。

 実際に製造されたことが確認される世界最古の潜水艦は、1620年、オランダ人がイギリス海軍向けに発明した人力推進潜水艇だが、潜水艦を実戦で初めて使ったのはアメリカだった。1776年、コネチカット州のデヴィッド・ブッシュネルが開発した一人乗りタートル潜水艇がアメリカ独立戦争時で使われた。タートルは敵艦艇撃沈には至らなかったものの、これ以降、アメリカは潜水艦技術と海底探査への飽くなき挑戦を続け、世界をリードしていくことになる。


 1954年、世界初の原子力潜水艦「ノーチラス」を就役させたのもアメリカだ。翌1955年には 史上初めて原子力を使ってテムズ川を渡り「本艦、原子力にて航行中」という有名な打電を残している。潜航状態で北極点を最初に通過することに成功したのもノーチラスだ。1958年のことで、このときの「ノーチラス、北90度」の打電も有名だ。


 1960年、地球上で最も深い海底、マリアナ 海溝南部の最深域チャレンジャー海淵の海底に世界で初めて到達したのもアメリカだ。困難に挑み、勝ち取る開拓者魂。フロンティアスピリットはここにも息づいている。

中華人民共和国自然資源部

日本のEEZ(排他的経済水域)内で頻繁に海洋調査を行っている調査船の1隻 がこの「海洋地質九号」だ。中国自然資源部地質調査局の青島海洋地質研究所に所属し、活動範囲は東シナ海、 南シナ海、黄海、西太平洋にも及ぶ。排水量は 5178t、 最大速度は15ノット以上、航続距離は10000海里、60日間稼働可能で、海洋の地質調査、石油、ガス資源の探査、深海探査などを行っている。

 これまで中国の海洋調査、観測などを担ってきたのは国家海洋局だったが、2018年、全国人民代表大会で国土資源部・国家海洋局・国家測量地理情報局と統合され「自然資源部」に組織改編。土地利用政策、資源政策を担うことと なった。それに伴い、これまで「海洋権益の維護(維持と擁護)」を担当してきた海上法執行機関「中国海監総隊(=中国海警局)」の任務は人民武装警察部隊に移管されている。

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