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レクサスLFAのV10エンジンはいかにして生み出されたか


世界に誇るスポーツカーの心臓部には、レーシングエンジンの思想で設計したエンジンでなければならない。 鋼を叩いて日本刀を鍛えるように、量産エンジンに慣れた頭に喝を入れてエンジンを鍛えていった。 最高出力や発進加速の数値は結果論。車両と一体となって大脳を刺激するフィーリングを追い求めた10年だった。


TEXT:世良耕太(SERA Kota)PHOTO:瀬谷正弘(SEYA Masahiro)/TOYOTA


*記事内容は2010年2月取材当時のもの

 2009年の東京モーターショーで発表されたレクサスLFAが搭載するエンジンは、排気量4800ccのV型10気筒DOHC。最高出力は412kW/8700rpm、最大トルクは480Nm/6800rpm。レッドゾーンは9000rpmに設定されている。思いっきりレーシングスペックだが、レースとの関連性を感じさせるのは数字だけではなく、ドライサンプや各気筒独立スロットル、チタン合金製吸排気バルブにコンロッド、DLCコーティングされたロッカーアームなど、構造や材料からもうかがえる。

「アクセルを踏んだときの回転の上がり方はレーシングエンジンと普通のエンジンでは全然違う」(岡本氏)。1LR-GUE型の開発にあたって、各気筒独立スロットルは外せないアイテムだった。

スポーツカーとは何か──

「日本が世界に誇るトップレベルのスポーツカーを作りたい」




 その情熱で2000年から本格的に開発が始まったレクサスLFAのエンジンはしかし、最初からレーシングエンジンの思想で開発がスタートしたわけではなかった。「スポーツカーとは何か」を語り合うざっくばらんな会合が、本当の意味での出発点だったと、商品開発本部の市原直氏は振り返る。



市原 直氏(トヨタ自動車 商品開発本部 レクサスセンター製品企画 主幹:当時)

「(LFAチーフエンジニアの)棚橋(晴彦氏)も含めて、スポーツカーをやりたいと思っていました。どんどんスポーツカーがなくなっていく状況でしたが、(移動手段は)バスでいいのかと。個人で楽しめるワクワクするようなクルマを提供していかなければならないと議論していました」




 スポーツエンジンの開発でかねてから強い結びつきにあるヤマハ発動機の意見を聞いてみようということになる。トヨタ側からヤマハ側に打診をした。




 当時から現在に至るまで、ヤマハ側で開発に携わるのがAM事業部の丸山平二氏だ。




「トヨタ側のプレゼンターが市原さんで、ヤマハ側は私でした。我々がプレゼンした内容はこうです。スポーツカーは考えて乗るものではないと。人間は大脳が発達した動物。大脳の情報処理能力を極限まで引き出すことは楽しいことで、クイズや勉強、あるいは体を動かすスポーツがそれに当てはまります。クルマの運転も同じです。大脳で楽しむためには、情報のフィードバックがいかに人間に返ってくるかが大事。そのフィードバックをもとに人間が操作したら、操作したとおりの動きをしてくれること。そのサイクルが大事だという話をしました」

丸山平二氏(ヤマハ発動機 AM事業部 AM第1技術部長 主査:当時)

 スポーツカーにとって大事なのは実は、最高出力やレッドゾーン、0‐100km/h加速の数値ではない。それはあくまでも結果であって、大切なのはドライバーとクルマの関係である。




「ちょうど我々も閉塞感を感じていた時期だったんです」と、丸山氏は続ける。「280馬力自主規制いっぱいのクルマが増えている状況で、ミニバンでさえ280馬力あった。じゃあスポーツとは一体何なのだと社内でも議論していた時期でした」




 パワー至上主義への疑問と反省があった。




「ヤマハさんから教えていただいたのは、『わからないヤツは放っておけ』ということ。棚橋も同じことを言いましたが、それはこういう意味です。ゴルフをやらない人にいくらゴルフの面白さを論じてもわかってもらえない。(スポーツカーも)それと同じことだと」と、市原氏は言う。




 万人受けは必要はない。その代わり、わかる人に底の浅さを見透かされる中途半端も許されない。

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