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新型KLX230試乗|ライバルはセローじゃなかった! 本格オフ車の要素が凝縮した秀逸エンジン&足周り|カワサキ


 品川で開催された発表会の翌日、我々取材班は朝霧高原へ向かった。試乗会場はオフロードライディングが楽しめる「イーハトーブの森」。そこには2色のKLX230とライムグリーンのKLX230Rが準備されていた。先ずはナンバー付きのKLX230に試乗。コース内を散策した後は周辺の公道走行へ繰り出し、じっくりとその新鮮な乗り味を堪能した。




REPORT⚫️近田 茂(CHIKATA Shigeru)


PHOTO⚫️山田俊輔(YAMADA Shunsuke)

車体色はエボニーとライムグリーン

◼️カワサキ・KLX230……495,000円 ◼️発売予定日:2019年10月15日

 試乗会場に到着するといかにもカワサキ車らしいライムグリーンと、エボニーの2色が待っていた。パッと見エボニーの方が少しコンパクトに見える。一方ライムグリーンはモトクロッサーのKX系デザインがそのまんまイメージされ、なかなか格好イイ。


 細くスマートなフォルム。シェイプされたロングシート等、いかにも走りそう。昨日の発表会で、初・中級者でも満足できるポテンシャルを追求したと説明されていたが、なるほどオフロードでスポーツするに相応しい資質が伝わって来る。


 


 早速跨がるとシート高は結構高め。諸元を確認すると885mmあり、ホンダのCRF1000L アフリカツイン アドベンチャースポーツに匹敵するレベルだ。流石に車体やシートがスマートな上、サスペンションの沈み込みもあってCRF1000L のようなバレリーナ(つま先立ち)状態にはならなかったので、一般的舗装路走行でバイクを支えるのに不安は感じられなかった。


 


 むしろ、昨日の説明通りKLX230の開発コンセプトは、例えばヤマハセロー225 の様に山のトレールをトコトコと足を着き着き進むトレッキングバイクでないことがハッキリと理解できたのだ。




 足(サスペンション)の性能追求がエスカレートして足つき性が悪化していった、かつてのデュアルパーパスモデルを彷彿とさせてくれる。良い意味でKLXの名に恥じない本格派の匂いがし、“ダートを駆けて見たい”!。久々にそんな思いに駆られてしまったのである。

ダートを駆ける楽しさを満喫

 先ずはイーハトーブの林間ダートを散策。エンジンを始動するとアイドリングが高い。今回KLX230にはタコメーターが無かったのでデジタル回転計を外付けして計測した。アイドリングは約1800rpm と少々高め。これはエンジンストール(エンスト)を避けるための設定だと言う。確かに極低速走行やタイトターン等で不意にエンストしてしまうと、シート高の高さもあって、失速からの転倒を招くリスクは少なくない。それだけに失敗の少ない優しい乗り味を求めた高めの(アイドリング)設定は賢明である。


 


 木立を縫うようなシーンでもステアリングは45度と大きく切れるから扱いやすい。狭い道でのUターンにも安心だ。ただ、路面のグリップを着実に掴もうとゆっくりと進むようなシーンでは少々速度が早過ぎて、半クラッチを多用することになる。ローギヤでエンジンを5000rpm 回した時のスピードは23km/hだった。つまりアイドリング程度の回転でも歩くより早い約8km/h の速度が出てしまう計算になる。やはりフラットダートやモトクロスコース的なステージである程度アクセルを大きく開けて元気の良い走りを楽しむのに向いている感じである。


 


 そんな時は俄然元気ハツラツ、実に気分良く走れてしまう。適度な大きさの車体とシート高の高さ、そして前後共に220mm 以上のストロークを発揮するサスペンションの優秀性も際立って来る。車重は134kg と特に軽いわけではないが、マスの集中設計とライディングポジションが奏功して扱いが軽快なのだ。


 


 そして際立っているのは、前輪の安定性が抜群。どんなシーンでも前が落ち着いているのでライダーは常に安心感を覚える。ちょっと前傾姿勢(前乗り)でアクセルを開けて行くと、中低速域のレスポンスも優れ、荒れた路面でも思い通りに扱いやすかった。まるで自分のテクニックが上達したかのような気分になれる。不安が少ないと路面状況にも詳細に先読(気配り)できる様になり、どんどん上達し(慣れ)ていく感じ。本音でコイツは楽しい。


 


 身近に走る場所(ダート)さえあれば、気軽にサンデースポーツをエンジョイして、イイ汗かけるツールとしてもってこいの逸材であることは間違いないのである。


 


 一方公道でもKLX230 の走りは元気が良い。スクエアに近いボア・ストローク故、回転の上昇はそれほどシャープでは無いが、実用域で発揮されるトルクフィーリングは図太く、かつ良く粘る。ミッションの繋がりも良い。


 レブリミットは9000rpm 。だいたい8000rpmまで引っ張れば十分過ぎる速さを発揮。そこまで回さなくても不足の無い加速力を披露してくれる。実用的には250ccに匹敵するパフォーマンスである。


 


 50km/hクルージング時のエンジン回転数は5速ギヤで3900rpm。オーバードライブ的に設定された6速トップギヤでは約3100rpm。つまり100km/hクルージングを6200~6300rpmでこなしてくれる。あえてハイギヤードにしてくれたのはとてもありがたい。高速クルージングを静かで快適な物にしてくれ、実用燃費上も有利に違いないからである。


 


 いずれにせよオフロード好きライダーにとっては、まさに待望のモデルである。入門用としてもお薦め。パフォーマンスの高さと誰にも扱いやすく、オフを楽しめる乗り味。そして親しみやすい価格設定は大いに魅力的である。 

⚫️足つき性チェック(ライダー身長170cm)



ご覧の通り、両足の踵は地面から大きく離れてしまう。車体が軽く乗車位置がスマートに絞られているので、バイクを支える上での不安は感じない。885mmもあるシート高は高性能な足(サスペンション)を誇ったひと昔前のオフ車を彷彿とさせる。


⚫️ディテール解説

少し異様に見える程大きなヘッドライト。街灯のない林道でも困らないよう十分な光量を確保するには、それなりの大型リフレクターが必要だそう。光源は12V、60/55Wのハロゲンランプが採用されている。

フロントフォークはφ37mmテレスコピックの正立式。220mmのストロークを持つ。ブレーキはシングルディスク式。リジッドマウントされたローターのサイズはφ265mm。油圧2ピストンのピンスライド式キャリパーを組み合わせる。

角パイプと丸パイプをミックスした高張力鋼ペリメターフレームはセミダブルクレードル式。搭載エンジンはスクエアに近い(僅かにショートストロークタイプの)空冷232ccOHC2バルブ単気筒だ。

かなりエンジン寄り(前方)にセットされたニューユニトラックサスペンションは、ボトムリンク式。ホイールトラベルは223mmを稼ぎ出す。

長いスイングアームは角断面のスチール製。シングルディスクブレーキのローター径はφ220mm。油圧キャリパーはシングルピストンのピンスライド式だ。

左右にフラットに広がるブリッジ付きパイプバーハンドルを装備。バックミラーはグリップエンドよりも内側に位置し、転倒時のダメージが少なそうだ。

ハンドル左側のスイッチ。ごく一般的なレイアウト、ホーンボタンは咄嗟の時に押しやすいベストポジションにある。上のウインカースイッチは親指が触れる角度に配慮したデザインが施されていた。上はヘッドランプ光軸の上下を切り替えるディマースイッチだ。
ごく一般的なハンドル右側のスイッチ。赤いのがエンジンキルスイッチ。下の黒いのがエンジン始動用のスタータースイッチだ。


シンプルなメーターデザイン。モノクロ液晶ディスプレーの両脇には各種インジケーターランプをセット。液晶の表示は切り替え式のデュアルトリップやオド、時計もある。大きくデジタル表示される速度計はとても見やすい。ちなみにタコメーターは無い。

密度の濃いウレタンクッションを採用した細身のロングシート。前後左右への体重移動がスムーズにできる。
キーロック付きのサイドカバーを外すとバッテリーやヒューズが整然と納められていた。バッテリー下部には車載工具も搭載。


マフラーは右側アップ式。テール周りのライトも全て普通のバルブ式。オフ系のバイクとしては、ウインカーも含めてどれも立派な大きさに仕上げられている。

細身の車体と長いシートデザインはモトクロッサーの血統を感じさせてくれる。

ツーリングには不可欠なリヤキャリア。かなり堅牢な作りが印象的。価格は17,380円。(オプションの純正アクセサリー)
中央ケースの蓋を開けると、中にはETC2.0の車載器が綺麗に収納されていた。オプションの純正キットで価格は45,980円。専用ではなく汎用品も販売して欲しいと思えた。


◼️主要諸元◼️

型式:2BK-LX230A


全長×全幅×全高:2,105mm×835mm×1,165mm


軸間距離 :1,380mm


最低地上高:265mm


シート高:885mm


キャスター/トレール:27.5°/ 116mm


エンジン種類/弁方式:空冷4ストローク単気筒/SOHC 2バルブ


総排気量 :232cm³


内径×行程/圧縮比:67.0mm×66.0mm/ 9.4:1


最高出力 :14kW(19PS)/7,600rpm


最大トルク:19N・m(1.9kgf・m)/6,100rpm


始動方式 :セルフスターター


点火方式 :バッテリ&コイル(トランジスタ点火)


潤滑方式 :ウェットサンプ


エンジンオイル容量:1.3 L


燃料供給方式:フューエルインジェクション


トランスミッション形式:常噛6段リターン


クラッチ形式:湿式多板


ギヤ・レシオ :


 1速 3.000 (39/13)


 2速 2.066 (31/15)


 3速 1.555 (28/18)


 4速 1.260 (29/23)


 5速 1.040 (26/25)


 6速 0.851 (23/27)


一次減速比/二次減速比:2.870(89/31) / 3.214(45/14)


フレーム形式:セミダブルクレードル


懸架方式 :


 前 テレスコピック(インナーチューブ径 37mm)


 後 スイングアーム(ニューユニトラック)


ホイールトラベル :


 前 220mm


 後 223mm


タイヤサイズ:


 前 2.75-21 45P


 後 4.10-18 59P


ホイールサイズ:


 前 21×1.60


 後 18×1.85


ブレーキ形式 :


 前 シングルディスク 265mm (外径)


 後 シングルディスク 220mm (外径)


ステアリングアングル:45°/ 45° (左/右)


車両重量:134kg


使用燃料:無鉛レギュラーガソリン


燃料タンク容量:7.4 L


乗車定員:2名


燃料消費率:(km/L)※1


 38.0km/L(国土交通省届出値:60km/h・定地燃費値、2名乗車時)※2


 33.4㎞/L(WMTCモード値 クラス2-1、1名乗車時)※3


最小回転半径:2.2m


カラー・メーカー希望小売価格:


ライムグリーン、エボニー


495,000円(本体価格450,000円、消費税45,000円)


生産国:インドネシア

◼️ライダープロフィール

元モト・ライダー誌の創刊スタッフ編集部員を経てフリーランスに。現在はモーターファンJPのライターを担当。ツーリングも含め、常にオーナー気分でじっくりと乗り込んだ上での記事作成に努めている。

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